基礎からのGVP【第15回】

2022/04/15 その他

業務手順書について。

業務手順書

1.    手順書の意義
GVP省令の第5条にて、製造販売業者が製造販売後安全管理を適正かつ円滑に行うため、必要な項目に関する手順を記載した製造販売後安全管理業務手順書を作成することを規定している。企業の業務活動の手順を文書化、共有化することにより、誰が行っても判断に迷うことなく同じように作業ができ、業務の「均質化」、「効率化」ができることを目的としている。その結果として、安全確保体制の信頼性と適宜性を推進・強化できることとなる。

2.    手順書の社内的位置づけ
手順書とは、製造販売後の安全管理業務につきGVP省令を含め関連法規を遵守して実施していくうえで、その実務が担当者等の個人的な判断により相違が出ないよう、実施者が一定の基準で業務が遂行できるよう普遍的なフレーム(手順)を定め、文書化したものである。Standard Operation  Practice (SOP)や、マニュアル、業務標準書等、様々な言い方がなされ、また、形式も様々であるが、基本的事項を規定する手順(フレーム)と運用における詳細部分を規定する細則(マニュアル)の二階層構造にして作成している場合が多い。そしてその承認者は、GVPであれば手順の部分は製造販売業者等や総括製造販売責任者であり、細則については安全管理責任者が承認している。このようにしておくと、手順書は大きな薬機関連法規の改正や会社組織等が大きく変化した場合のみ改訂する、いわば憲法のような位置付けで、改訂・承認の手続きがたとえ煩雑で時間がかかったとしてもその頻度は限られたものになるので業務遂行上の支障は生じない。そして、細則は実務上様々な変更等が生じたとき管理部門内で調整し改訂できるようになり、速やかな対応が可能となる。(ここで、煩雑で時間がかかるとは、企業内で例えば取締役会とかの審議・決定等が必要となる重要な規則である位置付けであるため、痛しかゆしのところではあります。)

(1)    手順書の共有・公示
GVP業務手順書は細則を含め安全管理部門の者だけでなく、関連する実施部門にも的確に設置され、業務遂行時に何時でも参照できる態勢になければならない。関連実施部門として一番重要なMRへの参照態勢として、MRマニュアルと題し、医薬情報担当者にとって日常必要な、情報の収集・提供、回収時の対応、市販直後調査のGVPの一部と、使用成績調査等の実施に関する業務手順等のGPSPの部分を併合し、冊子体として作成し個々に携帯する、あるいは社内ネット上におき、パソコン等で常時確認できるようにしている企業が多数ある。

(2)    手順書間の連携
本手順書は、安全管理業務を遂行するうえで、必要事項について取決めしているだけでなく、薬機法に基づく総括製造販売責任者の役割、GQP(品質管理業務の基準)に基づく規定等とも整合性を図り、会社全体の業務基準にきちんと組み込まれていなければならない。
例えば、ある企業においては、「我社は、取扱う医薬品を製造販売するにあたり、薬機法及び関連法規等にのっとり、安全管理及び品質管理については別途基準を定め、これを遵守する。」と会社のコンプライアンスプログラムに宣言し、企業憲章の一つに取入れている。また、製造販売後の各基準との関連を明確にすることも重要である。製造三役(三責)の業務を明確に連携付け、他の品質業務手順書、製造販売後調査等業務手順書に定める業務並びに情報が的確に遂行、共有されなければならない。このためには関連業務手順書の図に示すような構成で、総括製造販売後責任者の業務手順も明確にした総括業務手順書を作成している場合が多い。この場合、各手順書に共通して規定しておかなければならないこと、たとえば製造三役の任命方法、各掌握社内組織等を総括業務手順書に一括して規定したりすることもできるなど、活用範囲が広く利便性が高い一つの方法である。

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執筆者について

草間 承吉

経歴 医薬品、医療機器、医薬部外品等の開発から製造販売後までの安全確保業務を黎明期から30年以上にわたり幅広く経験・管理・監督してきた。この間、業界活動においては製薬協PMS部会や東薬工医薬品安全性研究会、日薬連安全性委員会等でDSUやPMS担当者研修講座の設立等にも関与した。これらの経験を生かし15年前にPMSフォーラムを設立し、製薬企業等からの業務相談に対応しながら、指導・教育に努めている。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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