バイオ医薬品分野における品質保証責任者の独り言【第9回】

第9回:QAはマネジメントに何を求め、どう伝えるべきか


はじめに:
 これまでQAが「社内の敵」と見なされてしまう組織に共通する構造的な問題を整理し、その多くがQA個人の資質ではなく、マネジメントとの関係設計に起因していることを示した。また、QAを敵にしない組織に共通するマネジメントの振る舞いとして、「最後は経営が引き取る」という覚悟の有無が決定的な違いを生むことを述べた。
 では、そのような環境が整っていない組織では、QAは何もできないのだろうか。マネジメントが品質を数字や結果だけで語り、判断を曖昧にし、責任をQAに押し付けてくる状況では、QAは黙るしかないのだろうか。答えは否である。QAにも、マネジメントとの関係を変えるためにできることがある。今回、その視点を反転させる。
 マネジメントがQAをどう扱うべきか、ではない。QAはマネジメントに対して何を求め、どのように伝えるべきなのかを今回、主題とする。
 経営判断の場において、QAが語る内容は往々にして「重い」「難しい」「グレー」である。そのため、話し方を誤ると疎まれ、避けられ、最終的には形だけの承認部門に追いやられる。しかし一方で、マネジメントの思考を整理し、意思決定を助ける言葉を持つQAは、組織にとって欠かせない存在になる。
 「リスクはゼロかイチではない」「条件付き判断をどう翻訳するか」「QAは経営の何を支える存在なのか」という点を軸に、QAがマネジメントの思考のパートナーになるための視点と実践的な伝え方を掘り下げていく。
 QAが黙れば、マネジメントは都合のよい物語で決断する。だからこそ、QAは沈黙してはならない。

1. QAが黙ると、経営は“都合のよい物語”で意思決定する場合がある
 QAはときに遠慮する。「難しいことを言うと嫌われる」「ビジネスを分かっていないと思われる」。だが、QAが黙った瞬間に起きるのは、マネジメントが“都合のよい物語”で意思決定することである。
  •「今回は小さい逸脱だから大丈夫だろう」
  •「顧客が待っているから進めよう」
  •「これまで問題がなかった」
 これらは意思決定の理由ではなく、願望である。願望で進む組織は、いつか必ず刺さる。刺さった時、QAは言われる。「なぜ言わなかったのか」。だからQAは黙ってはいけない。

2. QAがマネジメントに伝えるべきメッセージは4つである
 QAがマネジメントに向けて言語化すべきメッセージは明確である。
  1) 判断には条件が必要である
  2) リスクはゼロかイチではない
  3) 説明責任には記録と時間が必要である
  4) 最後に判断を引き取るのは経営である
 この4点を、感情ではなく構造として提示できるQAは、マネジメントにとって邪魔者ではなく、思考のパートナーになる。

 

 

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