医薬品のモノづくりの歩み【第9回】

変化に対応するマネジメント(1)

 これまで、医薬品製造における「モノづくりカルチャー」について、菱田さんが8回にわたって話を進められてきましたが、ここで、医薬品製造を取り巻く環境変化が著しい中、「モノづくりカルチャー」を醸成しつつ、変化に対応するマネジメントについて吉村が2回に分けてお話しします。

 近年、少子高齢化、デジタル技術の進展による産業構造の変化、またワークライフバランス、働き方改革等の考え方の浸透を背景に、とりわけ製造業のビジネス環境は大きく変化しました。具体的には、システム導入に伴うデジタル情報の増加、業務密度が高くなったことにより時間的・精神的に余裕がない、フラットな組織、非正規社員の増加、仕事に対する価値観の多様化などです。その結果、現場では人材が確保できない、技術伝承が出来ていない、目指すロールモデルがいないなどの声が聞かれるようになっています。このように複雑化したビジネス環境で、従来の「人・モノ・金」を中心としたマネジメントは、通用しなくなっているのではないでしょうか。ここで、マネジメントの原点を見つめ直し、変化に対応するマネジメントとは何かを考えたいと思います。
 マネジメントの目的は、個人が、それぞれのレベルに応じた技術・技能を有し、主体性を持ち、自主的に業務に取り組むことで組織目標を、確実に達成することであり、それができる組織運営をすることです。言い換えると、マネジメントの原点は、人材育成であり、同時にチームをまとめ、個人をいかす組織運営をすることが、マネジメントの本質といえるのではないでしょうか。それでは、この変化の時代にどのように、マネジメントを展開するかです。

先ず、人材育成を三つのマネジメント要素に分けて考えたいと思います。以下の通りです。
1.「仕事に対する意識」=意識づけのマネジメント
2.「業務に対する取組姿勢」=現場力強化のマネジメント
3.「チームの一員としての行動」=チーム力発揮のマネジメント

 まず、意識づけのマネジメントです。これは、会社を通して社会に貢献するという職業人としての自覚、目標は必ず達成するという責任感、日々の業務の中での報連相の徹底などです。ほとんどのマネージャーの皆さんは、これらについて、普段から指導されていることと思います。しかし、結果はどうでしょうか?部下の皆さんに、必ずしもその意識は浸透しているとは言い切れないのではないでしょうか。意識づけは、一朝一夕にはできません。理解するまで繰り返し伝え続ける必要があります。意識づけは、部下との根競べです。この根競べにマネージャーが負けてはいけません。

 二つ目は「業務に対する取組姿勢」です。製造現場では、工程管理が必須の業務ですが、ここで、問題が発生した時に、どう対応できるか、あるいは、トラブルの兆候が見えた時に、いち早くそれに気が付き未然に防げるかどうかが、極めて重要なこととなります。これは課題形成能力・解決能力であり、いわゆる現場力です。この現場力のベースにあるのは、安定品質(Q)、原価低減(C)、安定供給(D)また、安全衛生(S)環境保全(E)に対する基礎知識と各自のレベルに応じた技術・技能・知恵です。現場力を強化するには、どのように教育・訓練していくのか、ここに現在の情報過多になっている組織運営の難しさがあります。問題解決の基本は、現場です。情報の中から答えを探そうとしていませんか、すべてが机上で解決できるものではありません。三現主義(現場・現物・現実)に立ち、現場をつぶさに見ること、また、原因追及には4M(Man,Machine,Material,Method)の視点で考え抜くこと。ファクトとデータに基づく論理的思考、これを日々、実践していくことが、技術力アップになり「現場力強化」につながるのです。
 

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