2018.12.21.FRI

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ラボにおけるERESとCSV【第47回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第46回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(17)

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■Y社 2017/7/14 483
施設::OTC工場


★解説:
製造工程における予期せぬ不一致に関する指摘が散見される。データインテグリティとは言えないかもしれないが、予期せぬ不一致の指摘事例を紹介する。また、製造装置が発するアラームやエラーの処理に関するデータインテグリティ指摘が目立ちはじめている。アラームやエラーの処理に関するデータインテグリティ指摘の解説には、逸脱、アラーム、エラーなどに関する定義あるいは基本的考え方を固めておく必要がある。本稿では、逸脱、アラーム、エラーなどに関する筆者の基本的考え方を紹介するので、皆様からご意見をいただきたい。皆様のご意見をお聞きしたうえで、アラームやエラーの処理に関するデータインテグリティ指摘を解説したいと考えている。

Observation 3
バッチが出荷されたか否かにかかわらず、予期せぬ不一致のレビューが不完全である。特に;
印刷異常の根本原因を調査しておらず、他のバッチへの影響があるかどうかを調査していない。

★解説:
本指摘は、cGMP §211.192(図17)を根拠としていると考えられる。 §211.192はいわゆるOOSを対象としていると考えられるが、本件の印刷異常のようなシステムトラブルも§211.192の対象となり得ることに注意が必要である。
また、cGMP §211.22 (a)は
▷ エラーが十分に調査されたことを品質管理部門が保証する
よう求めている。
製造におけるエラーを考えると、品質管理部門をQAと読みかえるのが良いと
思われる。

OOSのみならずシステムエラーが発生した場合、以下の様に対応することをお薦めする。
① エラーの根本原因を調査すること
② エラーがおよぼす影響を調査すること
③ 影響調査は関連する品目やバッチ/ロットにまで拡張すること
④ 以上の調査を記録すること
⑤ QAは調査記録を承認すること

★以下、逸脱、アラーム、エラーについて解説する。

■逸脱の定義
逸脱が発生した場合の管理はGMP省令第15条(図18)に規定されている。逸脱の定義はGMP省令にはないが、「原薬GMPガイドライン」(医薬発第1200号、2001/11/2)の用語集において次のように定義されている。
「逸脱とは、承認された指示または設定された基準からの乖離」
WHO GMPには、軽微な乖離(Incident)、逸脱(Deviation)重大な逸脱(Critical Deviation)が図19のとおり規定されている。

これらより、筆者は逸脱を以下のように定義している。
・逸脱とは、承認された指示または設定された基準からの乖離であって
・製品品質に影響を与えるもの

■システムメッセージについて
システムメッセージとは機器、装置、システムなどが自動的に発するメッセージであり、図20に示すように様々なレベルのメッセージが発せられる。海外からの査察官やオーディターは日本語メッセージを読めないので、システムメッセージをすべて逸脱のアラームであると解釈してしまうかもしれない。従って、図20に示した様なシステムメッセージのレベルを簡潔に説明できる必要がある。関連して、工程パラメータのアラーム閾値であるアクションリミットとアラートリミットの説明を図21に記載した。

■逸脱による製品品質への影響評価
GMP省令第15条に「重大な逸脱に対し、製品品質への影響を評価すること」と規定されている(図18参照)。この影響評価方法は以下の様に規定されている。
 
① 重大な逸脱と判断しなかった後、製造又は試験を行った最初の複数ロットについては、原則、その後の当該逸脱に係る影響の程度を評価すべきである。
出典:GMP施行通知 薬食監麻発0830第1号、2013/8/30
 
② 予期せぬ不一致の全ての調査は、同じ品目の他バッチ、あるいはこの不一致や規格外に関連する品目にまで拡張すること。
出典:FDA cGMP §211.192 製造記録のレビュー(図17)
 
③ エラーが発生しなかったこと、あるいはエラーが完全に調査されたことを保証すべく、品質部門は製造記録をレビューする権限を有する。
出典:FDA cGMP §211.22(a) 品質管理部門の責任

■逸脱の影響評価事例
上記①②③の逸脱評価要件をもとに行った事例研究を以下に紹介するので、皆様のご意見をいただきたい。

事例1:    
システムに付属するレポートプリンターの通信エラーが発生したとのメッセージが発生したが、その通信エラーは自然復旧した
 ・この通信エラーは製品品質には影響をおよぼさないので逸脱とは考えない
 ・以下を製造記録に記載する
  ◇ この通信エラーは製品品質に影響しないので逸脱とはしない
  ◇ エラーは自然復旧したので一過性の問題と判断し、様子見とする
 ・品質部門は処置の妥当性を製造記録により確認する

事例2:
システムに付属するレポートプリンターにおいて紙詰まりのメッセージが発生した
 ・この紙詰まりは製品品質には影響をおよぼさないので逸脱とは考えない
 ・以下を製造記録に記載する
  ◇ この紙詰まりは製品品質に影響しないので逸脱とはしない
  ◇ 紙詰まりを取り除き、メッセージが解消したのを確認した
  ◇ 紙詰まり発生前のプリントアウトに異常がないことを確認した
  ◇ 紙詰まり対処後のプリントアウトに異常がないことを確認した
 ・もしくは、上記の紙詰まりメッセージ対処方法をSOPに規定しておき、
  SOPどおり処置したことを製造記録に記載する
 ・品質部門は処置の妥当性を製造記録により確認する

事例3:
システムに付属するレポートプリンターにおいてインク切れのメッセージが発生した
 ・このインク切れは製品品質には影響をおよぼさないので逸脱とは考えない
 ・以下を製造記録に記載する
  ◇ このインク切れは製品品質に影響しないので逸脱とはしない
  ◇ インクを補充し、メッセージが解消したのを確認した
  ◇ インク切れ発生前のプリントアウトに異常がないことを確認した
  ◇ インク切れ対処後のプリントアウトに異常がないことを確認した
 ・もしくは、上記のインク切れメッセージ対処方法をSOPに規定しておき、
  SOPどおり処置したことを製造記録に記載する
 ・品質部門は処置の妥当性を製造記録により確認する

事例4:
包装機において、包装材詰まりメッセージが発生した
 ・この包装材詰まりは製品品質には影響をおよぼさないので逸脱とは考えない
 ・以下を製造記録に記載する
  ◇ この包装材詰まりは製品品質に影響しないので逸脱とはしない
  ◇ 包装材詰まりを取り除きメッセージが解消したのを確認した
  ◇ 包装材詰まり発生前の包装に異常がないことを確認した
  ◇ 包装材詰まり対処後の包装に異常がないことを確認した
 ・もしくは、上記の包装材詰まりメッセージ対処方法をSOPに規定しておき、
  SOPどおり処置したことを製造記録に記載する
 ・品質部門は処置の妥当性を製造記録により確認する

事例5:
注射剤充填口の近辺において空中微粒子数がアクションリミットを超えたとのアラームが発生した
 ・アクションリミットを超えたので、製品品質に影響をおよぼす重大な逸脱である
 ・GMP省令第15条に従った処理をおこなう

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。