2015.08.27.THU

建設プロジェクトマネジメント

医薬品工場建設のノウハウ【第1章】

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執筆者:藤岡 徹夫

医薬品工場建設のノウハウ
-プロジェクトの成功に向けて-


第1章 序

監修:中尾 明夫河須崎 勝美田中 信夫
執筆:藤岡 徹夫

第1章 目次
1.1 連載の目的と構成
1.2 プロジェクトとは
1.3 プロジェクト失敗の原因
1.4 プロジェクト計画とコントロール(PDCA)の重要性
1.5 WBS、コントロールの基本単位
1.6 プロジェクト・マネジメントの体系
1.7 基本計画・基本設計の重要性
1.8 エンジニアリングとクオリフィケーションの連続性、一貫性
 
 

1.1 連載の目的と構成

 国立競技場の建設は既に59億円の税金をつぎ込んだが、予算、工期、契約方法に問題が生じ、現設計が白紙撤回された。三菱製ジェット旅客機(MRJ)は、部品調達や検証試験の遅れにより初飛行計画スケジュールが4回ほど変更となっている。また、関西国際空港の建設が十分にマネジメントされなかった結果、地盤沈下の問題を解決出来ていないと英国のプロジェクト・マネジメント解説書籍1)の冒頭に紹介がされている。更に、Webを閲覧すると、システム開発系のプロジェクトでの納期遅れ、予算超過の失敗例が枚挙にいとまが無いほど掲載されている。

 

 プロジェクトは、上手くマネジメントを遂行しなければ失敗する属性を持った、複雑で不安定なビジネス(業務)であり、プロジェクト・マネジメント(以下、PM)は近年、注目されている管理手法である。

 

 その歴史は比較的新しく、1960年代の冷戦時代にNASAのアポロ計画を始めとする米国の超大型国家プロジェクトを手掛けた国防総省で科学的、論理的な技術として発展し、1970年以降にプロジェクトが大型化、複雑化した石油精製等のエネルギー関連プロジェクトのEPC*1を請け負うエンジニアリング会社に普及していった。2)

 

 然しながら、古代に遡ってピラミッド建設、都市建設、そして大航海などのプロジェクトから、現代の我々を取り巻く種々のプロジェクトに至るまで、その実施目的であるQCD*2の達成のために、PMの概念は意識されずとも脈々と引き継がれて来たものと云えよう。正にPM無くしてプロジェクトの成功は無いと云っても過言では無い。

 

 本連載では、「医薬品工場建設のノウハウ」と題して、プロジェクトを成功に導くための手順について、ユーザー(製薬会社)の視点で7章に分けて紹介する。

 

 第1章ではPMを核とした重要管理事項について概説し、第2章以降はプロジェクトの業務毎に記述して行く。第2章はプロジェクト計画(仕組みの構築)、第3章は基本計画、第4章は基本設計、第5章は調達・契約、第6章は詳細設計及び建設、第7章は試運転およびプロジェクト終結を予定している。なお、クオリフィケーションについては必要最小限の記述とする。詳細については本年9月に(株)じほう より発刊の「リーン クオリフィケーション アプローチ」を参照して頂きたい。
 

*1 EPC; Engineering(設計), Procurement(調達), Construction(施工)
*2 QCD; Quality(品質), Cost(実行予算), Delivery(工期)、QCDの達成とは、高品質、予算内、工期内でのプロジェクトの実現を云う。

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藤岡 徹夫

藤岡 徹夫

株式会社シーエムプラス 代表取締役社長。技術士(総合技術監理、サービス・マネジメント)、認定コンストラクション・マネージャー。
1980年食品会社に入社。粉粒体ハンドリング機器開発ならびにプラント設計・施工管理に従事。1991年、大手エンジニアリング会社に転じ、18年間にわたり国内ならびにメガファーマを含む海外の大型医薬品工場建設プロジェクトにおいて、エンジニアリング・マネージャー、プロジェクト・マネージャーを歴任した。現場で阪神大震災を被災し、以降4ヶ月間、復旧工事の陣頭指揮を執り、不測の事態を乗り越えプロジェクトを成功に導いた実績を持つ。 2009年に株式会社シーエムプラスに入社、コントラクターのプロジェクト・マネージャーとしての豊富な経験を基に、顧客側に立場で基本計画/設計、見積引合/評価、工事契約、機器調達、詳細設計、施工管理、C&Qの全てのフェーズに亘り、プロジェクト・マネジメントをサポートしている。また、建築設備、生産設備の担当エンジニアとしての実績も多く、守備範囲が広い。