2018.09.07.FRI

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知的創造性を革新する組織と空間実現のメソッドプログラミング【第4回】

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執筆者:糀谷 利雄

知的創造性を革新する組織と空間実現のメソッドプログラミング【第3回】

知的創造性を革新する組織と空間実現のメソッドプログラミング

【第4回】組織文化・構造の研究開発への影響


第4回は、空間構造と組織構造との関係ついて述べたいと思います。研究開発のプロセスでは空間構造と組織構造は、互いに切り離せない関係にあります。
 
研究開発だけでなく、全ての組織は業務を行なうために情報と場が必要であります。特に研究開発のような知識の生産にとって、多くの情報をコミュニケーションする場所が重要なのであります。ダイレクト・コミュニケーションをするためには同じ時間と空間に存在しなければなりません。その空間構造がどのようであるかによって、コミュニケーションに障害で出たり、有利に働いたりします。
 
1つの例を紹介いたしたいと思います。これはあるヨーロッパの本社ビルの役員室のレイアウトの変更です。
この会社は典型的な固定化階層組織の役員室で写真のような階層組織を象徴するような一本の廊下に沿って役員室が並んでいる密閉された空間構造でありました。
各役員は孤立し、役員同士のコミュニケーションは自らのか、他の役員の部屋で行うしかない環境でした。​


そこでまず空間構造を変えることで、行動パターンを変え、結果としてコミュニケーション活性化図ろうとしました。組織構造や指揮系統は変えていませんが、この絵のような閉じられた空間をオープンで一体感のある空間することで、コミュニケーションの状況が一変しました。


空間構造が変わったことで役員同士の孤立感が緩和され、気軽にコミュニケーションが可能になった、おかげでこれまであまり交渉を持たなかった役員同士の触れ合いも増え役員間のコミュニケーションも改善されました。結果としてネットワーク型の組織構造と同じ変化を組織に齎したのです。
この2つの空間のスケールは全く同じであります。先ほど、組織構造が変わっただけもコミュニケーションは改善されと思いますが、空間構造がこのように変わるだけでもコミュニケーションの状況は劇的に変化いたします。組織構造と空間構造のあり方がコミュニケーションに大きな影響を与えることが理解されたと思います。
 
空間構造の理論
組織や文化の変更には物理的行動は伴いませんが、空間の変更には物理的行動が伴います。創造の生産性の上がる空間構造について述べます。
 
距離とコミュニケーション
コミュニケーションに大きな影響を与える空間要素の一つが、人と人との距離であります。距離とコミュニケーションの関係はトーマス・アレンの20数年間の調査研究の大きな成果の一つであります。縦軸は1つの空間内のコミュケーションの頻度を表し、横軸は人と人との距離を表しています。


2つラインは距離とコミュニケーションの関係を表しています。青のラインは部門間に壁のない組織を表し、赤のラインは部門間に壁のある組織を表しています。
壁とは心理的な壁でいわゆるセクショナリズムのことを云っています。青いラインの壁ない組織は、赤いラインの壁のある組織と較べて、距離と関係なく倍のコミュニケーション量の差があります。これは組織構造にかかわる問題であります。組織の壁のあるなしに関係なく、一つの空間で人と人の距離が近づけば近づくほど組織の中のコミュニケーションの頻度は増えます。特に30メートルを越えるとその頻度は急速に増えてきます。距離30メートルの距離に中にいる人たちは、それ以上に距離ある人たちに比較すると、組織コミュニケーションの回数が非常に多いことをこの表は表しています。これは見える範囲の限界です。この30メートルを限界とする、距離とコミュニケーション量の関係を一般的に「30メートル理論」と呼んでいます。研究所の空間構造を決定するときでこの「30メートル理論」は重要な原則であります。

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糀谷 利雄

糀谷 利雄

1967年明治大学理工学部建築学科を卒業。
1982年大手エンジニアリング会社入社。
医薬を中心に、生産施設、研究所など多数のプロジェクトに参画し、高生産性を実現する施設のコンセプトを計画・設計する。
現在、株式会社シーエムプラス フェロー