2015.07.13.MON

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その数字って本当?(ニュースを透かして見てみる)【第3回】

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執筆者:山内 英作

その数字って本当?(ニュースを透かして見てみる)【第2回】

その数字って本当?(ニュースを透かして見てみる)

【第3回】化粧は人の為ならず

ちょっと前になりますが、ネットのニュースを見ていると、次のタイトルが目につきました。

「Why lipstick could save your life: How a spot of lippy helps to improve your balance」 
(いかに口紅は貴女の命を救うか:ちょっとした口紅は、どのようにあなたのバランスを改善するか) というもの。

その書き出しが面白く、興味をもったのですが、「外出前にあなたが口紅を塗っている間、待たされているあなたの夫の機嫌が悪くなろうとも、この研究によってあなた自身が自らを災難から救っていることがわかります」というもの。
化粧があなた自身を救う! なんて刺激的ですばらしいことでしょうか。

「フランス聖エチエンヌ大学による調査」
出典:フランス聖エチエンヌ大学による調査(Science & Tech)
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高齢者、特に女性はちょっとした転倒によって大きな怪我や場合によって命に関わる可能性もあります(骨粗しょう症が女性に多い病気であることは確かで、男性は成長期に形成される最大骨量が女性にくらべて多く、女性のように閉経にともなう急激なホルモンの変化もないため)。実際に、英国では70万人以上の高齢者は転倒後、病院に運び込まれます。
また、75歳以上では、腰の怪我の後、それが原因で1年以内に死亡に至るものが20%にも上ります。

論文の科学者達は、口紅やほほ紅を使った化粧が、体のバランスを改善する一種のストレッチ運動であることを報告しました。
フランスの聖エチエンヌ大学で、65歳から85歳までの女性100人に対し、その姿勢をモニターするために特殊なインソールを用いて彼女たちの重心の中心等を調査しました。
その結果、毎日化粧をする女性は、しない女性よりも転倒に耐え、より良い姿勢とバランスを有していることがわかりました。

さて、いかがでしょうか?ここまでの説明ですと、化粧する女性が、しない女性より転倒しにくいという結果はわかるものの、なぜ化粧が身体のバランス機能向上につながるのか?がわかりません。

しかしながら、実際のネットのレポートはここまでなのです。このレポートの続きとして、パトリシア・ピノ医師による補足があります。

彼女の弁によると、この調査の1年前に行われた「ヨガ・エクササイズが、転倒のリスクを下げる」という結果に基づいたものであり、この2ヶ月間のヨガ・エクササイズは、転倒と骨折を減少させたと言うものでした。
結論の導き方として、ヨガのようなエクササイズ(運動)が、高齢者の運動機能を向上、もしくは維持することによって転倒の予防、そして骨折を減らす。化粧する群としない群では、化粧群の方が、姿勢やバランスが良く、転倒しにくい。従って、化粧はエクササイズと同様の効果があるというものでしょう。 

このピノ医師が、ロレアルという世界的な化粧品会社の所属ということもあるのでしょうが、化粧という行為が、本当にエクササイズに相当するのか?ということを考えてみましょう。

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山内 英作

山内 英作

株式会社メッドチャム代表。
1986年日本オルガノン株式会社入社後、向精神薬、麻酔科用薬剤の臨床開発を担当。1992年よりアラガン株式会社にて、オーファンドラッグの開発および申請を行うとともに、生物統計・DM、CSVのマネジメントを行う。2007年より大学発製薬ベンチャーで眼科用薬剤の開発部長職を従事後、2009年から医薬品と医療機器の開発コンサルタントとして独立。現在、北海道の製薬ベンチャー開発担当役員を兼任。