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2018.04.06.FRI

原薬

中国等海外原薬の品質確保と調達リスク回避の考え方【第4回】

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執筆者:浅井 俊一

中国等海外原薬の品質確保と調達リスク回避の考え方【第3回】

中国等海外原薬の品質確保と調達リスク回避の考え方

【第4回】ジェネリック医薬品の代替原薬の品質確保

4.1 ジェネリック医薬品の使用促進策とオーソライズドジェネリックの投入
政府のジェネリック医薬品(以下「ジェネリック」)使用促進策の下、ジェネリックの使用率は増加の一途を辿り、平成23年9月の40%から平成29年9月には66%と順調な伸びを示し、平成32年9月の目標である80%達成も視野に入ってきました。この状況下、ジェネリックには中国やインドの原薬が多用されている現状から、その品質確保の重要性は、特に生物学的同等性の確保の観点から、今後さらに高まると考えられます。一方、ご承知のように、ジェネリック市場に、「オーソライズドジェネリック; Authorized Generic」(以下「AG」)の投入という新しい動きが出て来ています。抗アレルギー剤の「ベポタスチンベシル酸塩口腔内崩壊錠10mg」(一般名)などはその代表的なものですが、先発医薬品の販売名「タリオンOD錠10mg」(田辺三菱)に対し、AGでは「ベポタスチンベシル酸塩OD錠10mg「タナベ」(ニプロ)の販売名で今年3月より市場に供給されています。
 
AGはご承知のように、先発医薬品と同じ原薬、添加剤、製法により製造され、製剤の形状など外観も同等、いわば、“完全コピー“とするにすることにより、薬剤の溶出プロファイルの経時変化を含めた品質の安定性や生物学的同等性、すなわち、有効性、安全性に関し先発医薬品との同等性保証のレベルが、通常のジェネリックに比べ高いと考えられることが売りであり、今後、ジェネリック市場において重要な存在になると考えられます。ジェネリック市場が伸長する一方、新薬メーカーは新薬開発に多額の費用と長期間を要する現状に鑑み、先発ならではの強みを生かし、このような差別化を基礎に中堅製薬企業と連携し、ジェネリック市場でのシェア獲得を狙おうとの意図が窺えます。薬価は二分の一程度になるものの、確たる競争力の下、伸長するジェネリック市場で一定の存在感を示すことが期待されます。今後、大きな市場シェアを獲得した優れた新薬はAGとして生まれ変わり、ジェネリック市場に投入されるというのが一つの流れになるでしょう。
 
4.2 ジェネリック医薬品の代替原薬と品質確保
こういう状況の中、既存のジェネリックメーカーは、錠剤を小さくする、口腔内で溶け易くするなど、超高齢化社会を視野に入れ、服用のし易さなどをアピールするための製剤学的修飾による差別化にさらに拍車をかけると同時に、中国やインドの低コストの原薬を品質確保して使用することのメリットをさらに追及することも重要な課題になると思われます。このときに最も重要になるのが、先発医薬品との経時安定性を含めた生物学的同等性の確保ではないでしょうか? 先般、PIC/S-GMPへの調和により、「安定性モニタリング」がGMPの実施事項として要件化されましたが、その後、安定性モニタリングに際する溶出試験の規格不適合を理由に医薬品の回収が行われている事例が散見されます。
 
先発医薬品との生物学的同等性の根拠となる溶出試験への適合性確保は、ジェネリックメーカーにとって当該医薬品の有効性・安全性の保証に直結する最も重要な品質課題であり、万一、これに問題があると懸念された場合、市場競争力に大きな影響を及ぼすことになります。
 
原薬は日本薬局方など所定の規格に適合しても、製造方法の違い(合成方法、晶析条件、純度など)により溶解性など物性が微妙に異なる場合がありますが、こういった微妙な物性の差異が薬剤の溶出性にバラツキを生じ生物学的同等性に影響を与える可能性が考えられます。また、この僅かな差異が製剤の経時変化により少しずつ拡大し、最悪の場合、医薬品の有効期限に達する前に溶出試験が承認規格を外れるという事態を招くこともあり得ます。勿論、溶出性は原薬のみならず、添加剤や製造方法を含む製剤全体の特性に依存しますが、先ずは原薬自体の物性の評価・確認が重要であることに変わりありません。特に、ジェネリック医薬品の剤形の多くが錠剤であることから、原薬の溶解性に加え、錠剤の崩壊牲など、薬剤の溶出性に関係する様々な要素、製剤特性に関し慎重に検討を行い、製剤トータルとして、経時安定性を含めた溶出試験の規格適合性の確保が重要となります。

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浅井 俊一

浅井 俊一

奈良県出身。1974年、ロート製薬入社。
退職後も継続して医薬品の品質保証をテーマとして活動。
製薬工場のヒューマンエラー低減策、中国等海外原薬の品質確保、医薬品異物混入防止対策、GMP記録の信頼性確保、行政査察対応などのほか、製薬工場のコミュニケーションの活性化、モチベーションの維持向上など人財育成にも注力。
中国での活動として、原薬工場の改善指導のほか、「新薬事法下の品質保証体制」(2009年/上海)、「日本に輸出するための原薬工場の要件」(2017年/杭州)などの講演や、CFDA主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。元日本OTC医薬品協会品質委員会委員長、元日薬連品質委員会常任委員。QAビジネスコンサルティング代表。薬剤師。趣味はチェロ演奏。