2017.08.04.FRI

品質システム(PQS)

製薬工場におけるヒューマンエラー対策の考え方【第5回】

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執筆者:浅井 俊一

製薬工場におけるヒューマンエラー対策の考え方【第4回】

製薬工場におけるヒューマンエラー対策の考え方

【第5回】 モチベーションと集中力

「モチベーション」という言葉は、昨今、よく聞かれるようになり、書籍もたくさん出回っています。
先般、女子プロゴルファーの宮里藍さんが引退会見で、引退の理由として、「モチベーションの維持が難しくなった」と話されていましたが、ゴルフに限らず、「気力が充実」していないと持てる技術や能力が十分に発揮できず、期待された結果が得られません。このことは、前回、4Mの管理の項でも、「モチベーション」の重要性に言及し、少し述べさせて戴きました。
「モチベーション」の維持は、この「気力の充実」と同義、或いはこれを支持するものであり、交通、医療、福祉などあらゆる分野で、業務を期待どおり安全・的確に遂行するために非常に重要と考えられています。
 
医薬品製造においては、調製・充填・包装といった一連の製造工程への人の関与が時代とともに減少し、現在、多くの工程が機械化されていますが、中間製品の工程間の移動や包装工程、検査工程、機器の洗浄などでは人の介在が必要となるケースが少なくありません。また、機械化されている工程に関しても、これらの機器を製作し、維持管理し、操作するのは人間であり、そこにミスが発生する可能性は否めません。コンピュータ化されたシステムであれば、そのプログラム等もまた、不完全な存在である人間が作成したものであり、設計やプログラムの段階でエラーが潜在しているかも知れません。
 
このように、製造工程が人と機器が複雑に関係して構成されているということを念頭において、総合視点でヒューマンエラー対策を考える必要があるわけですが、このような様々なプロセスを間違いなく実行するために極めて重要となるのが「集中力」の維持ではないでしょうか?「モチベーション」はこの「集中力」を維持するために非常に重要となる要素であり、ヒーマンエラー対策を考えるとき、先述の「コミュニケーション」と合わせ、常に留意して取り組む必要があると考えます。
 
さて、冒頭、触れたように、モチベーションの維持向上は工場におけるヒューマンエラー防止に有効であるだけでなく、企業活動の様々な局面で重要となります。企業の業績は職員のパフォーマンスの総和であると考えると、職員一人ひとり(メンバー)が達成する仕事の質と量を如何に最大化するかということがマネッジメントの重要課題であることは明らかです。そして、メンバーの皆さんのパフォーマンスを向上させるには、先ず、個人の質を向上させることが必要となりますが、そのための最大のキーワードもまた、「モチベーション」ではないでしょうか?モチベーションが低いと学習効果や経験の蓄積・応用力といったもののレベルも期待できず、質の向上につなげられないからです。
 

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浅井 俊一

浅井 俊一

1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。