2021.05.07.FRI

品質システム(PQS)

医薬品品質保証こぼれ話【第36回】

この記事を印刷する

執筆者:浅井 俊一

医薬品品質保証こぼれ話【第35回】

改善と改心

医薬品の製造や品質管理業務を適正に推進するに際し、日々“改善”を心がけることが大切であることは、これらの業務に携わる者であれば誰もが理解しているところですが、医薬品に限らず、モノづくりにおいて“改善”が重視されることは、ISO(国際標準化機構:International Organization for Standardization)の品質マネジメントシステムにおいて“継続的な改善”が重要な概念と位置付けられていることからも窺えます。改善活動は本来、日頃の小さな努力の積み重ねがその先で実を結ぶという地道な活動であり、継続することが容易ではありません。しかし、多くの製薬工場においてはこうした認識の下に、改善を推進するための様々な活動が行われています。5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)活動、QCサークル、小集団活動、改善提案、改善成果発表会、などなど、その活動は多岐にわたります。こういった活動の結果、チームリーダーやメンバー、また、マネジメントサイドが一定の効果を認め、“継続的な改善”が行えていると判断し、毎年、その内容を微修正しながら活動が継続されているのが現状ではないでしょうか? 

しかしながら、その一方において、先般の違法製造のような重大な事案が絶えることなく発生しているのが現状です。このことは、その企業・工場の体質、特性といったことにも関係すると思われますが、上記のような、現場の日々の改善活動とは裏腹に、マネジメントサイドの品質や遵法性に対する姿勢に問題が生じていることが一因である可能性が考えられます。つまり、現場が日々、汗を流して取り組んでいる活動と、マネジメントサイドが考えていることの間に、いつの間にか乖離が生じてしまったという状況です。本来、現場の活動は、マネジメントサイドが示す“Quality、First”や“Customer Satisfaction”などの考えや方針を受けて、それを具現化するためのものであるはずですが、それがいつの間にか、何らかの要因(生産数量の増加、コスト削減など)によりマネジメントサイドの考えが変化し、現場職員のそれまでの思いとの間に齟齬が生じ、以前のような改善活動や生産活動が落ち着いてできなくなっていく、そんな状況が推測されます。そういった状況が長く続く中で、ちょっとしたGMPに反する行為も見逃されるようになり、それが習慣となり、ついには重大な違法行為にまで至ってしまう、といった流れでしょうか?

1 / 2ページ

浅井 俊一

浅井 俊一

1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。