2021.05.14.FRI

レギュレーション

ドマさんの徒然なるままに【第28話】

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執筆者:古田 ドマ

ドマさんの徒然なるままに【第27話】


第28話:GMPの質・後編

後編のはじめに
本話は前27話の続きで、『勝手にGMP論』シリーズ*1の第6弾(カミングアウト版を除く)である。本話においては、品質に関わるGood Practices全体、具体的にはGMP省令・GQP省令・GCTP省令・GDPガイドラインの総称として「GMP」と記しているので、その点をご容赦願いたい。
また、今回は補足説明を注釈に書いているので、注釈込みとしてお読みいただければと思う。
なお、章番号は前話からの連番としている。

第6章:外部に頼って済む話か?~講師の問題点
自社内の教育訓練では限界がある and/or それなりの講師が不在ということで、じゃ外部講師を招聘する? それとも外部セミナーを受講する? でも前章のような状態ならば、外部講師の選定や外部セミナーの選定さえもままならないんじゃないのかなー? 

筆者の師匠にあたる古田土真一先生が数多くのセミナー講師を務めていることから、先生から戴いた情報を参考に、成り代わって述べる。

さて、同業者から総スカンを喰らうかもしれないと思いつつ、この際だから本音を言おう。コンサルタントと称する“先生諸氏”、筆者が過去に受講した経験も踏まえて言えば、当たりはずれが多すぎるのである。自分が未熟な時代にはそれが気づかなかったが、講師および受講者としての数を重ねて行くことでわかってきた。

まず講師の立場として言えば、自分が知っている知識・経験をセミナー等で伝えようとしても十分には伝わらない。たった1回のセミナーであれば、30%行けば上出来、通常は10%程度とみている。講師の説明能力や受講者の理解力云々の問題ではない。他人の話なんて、所詮そんなもんだと言いたいだけである。

とりわけ、受講者が初心者であればあるほど勝手な解釈をし出す。個人授業、せめてインハウスセミナーならともかくとして、外部セミナーといった集合教育であれば、受講者のレベルや業種・業態もバラバラであり、限界がある*2。大事なことは、それを承知した上で話すべきである(と言ってもかなり無理があるけど)。もし自分のセミナーは受講者の評判が良く、理解度が高い(必ずしも受講者数や受講後アンケート結果といった人気度には比例しない)と思い込んでいるならば、それは傲り(おごり)と言わざるを得ない。そうは言っても、受講者サイドにも問題があるのも事実である。では、次章でそれを述べよう。

第7章:外部に頼って済む話か?~受講者の問題点
受講者としては、個人のコンサルタントを雇ったりすると費用がかさむし、誰に頼んだら良いのかもわからないので、取りあえずは某社主催の集合セミナーを受講といった具合であろう。勉強する意欲は認めるし、主催者側の貢献も尊重する。が、お互いに限界があるってことを踏まえ、自社と一般論との差異を承知した上で現実の対応に向けるべきなんじゃないの? 

中にはまったく事前勉強せずに、これを受ければすべてが理解できると思って来る者が少なからずいる*3。あのねー、世の中そんな簡単に事が済むわけないでしょうが。講師だって長年苦労してやっとその立場にいるんだぞ。確かにセミナー開催案内を読むと、「初心者でもすべてが理解できる」と言わんばかりのタイトルだったり、心惹かれる、キャッチーなワーズがコンテンツやサマリーに書かれていたりする。でも、そんなことを鵜呑みにしちゃダメよ。それって、予備校や塾の謳い文句と同じで“呼び込み”だからね。

恐ろしいことに、受講者によっては、自分に都合の良い所取りの繋ぎ合わせの解釈をしたりする。それを勝手な解釈って言って、最も危険な部類の対応だからね*4。マジに分からないことや受講して知りたいことがあるんだったら、質問コーナーや(講師が許せば)終了後に率直に質問しなさいよ*5。受講後アンケートで多いのは、「自分の業務に当てはまるような具体的なやり方の話が少なかった。」といったこと。ちょっと待て。だったら質問しなさいよ。講師の立場で複数者を相手していて、お前が何に困っているかなんてわかるわけないでしょうが。あんた、どこの会社で何の仕事してるの*6? そもそも、こっちからすれば、あんたがどこに座っていた奴なのかも知らないんだぞ(ウェビナーなら尚更だぞ)*7

せめて、受講後には必ず復習するんだぞ。出来たら、自身がトレーナーとなって出張報告を兼ね社内教育訓練を行え。それで自身の理解度の確認と復習が行えると共に共有化が図れる。そうでないと、受講そのものが意味なくなるぞ。

ちょっと皮肉を言おう。自分では理解したつもりだったのに、第三者にはまったく伝えられないという事態に遭遇するはず。教わったことを教えられないんだったら、それは「理解した」とは言わないからね、普通。それって、監査で「SOPを提示しながらでしか説明できないのと同じこと(要は、SOPの文字面を読み上げているだけ)」だからね。

第8章:教育訓練の金と時間を無駄にするんじゃない!
GMPは「設備・人・文書」から成る。基本は「SOPに基づいての作業とその記録」である。「大事なことは教育訓練と文書管理」である等々、すべてが正しい。少なくともそう見える。が、それはその裏に隠れている本質や目的を理解しているからわかるのである。講師として、まったくの初心者にそれらの基本事項を伝えたつもりでも、真意は必ずしも伝わらない。少なくとも全部は伝わっていない。受講者として、良くわかったつもりでも、それを基に実行に移せない。受講者としての問題は、「それを自分の会社に戻って適用・応用できるか否か」にかかっているんだからね。

始末が悪いことには、外部セミナー等の受講者の多くは、会社で言えば一般職であること。管理職クラスであったとしてもせいぜい課長レベルか。せっかく勉強し報告書を書いて改善提言しても、社内上のリソースや組織権限を有する部長クラス以上の上司(本人はGMPを理解しているつもりでいるが上っ面の言葉だけで中身はわかっていない)に一蹴される。大体がこのパターンで終わる。うーん、もったいない。

ハッキリ言おう。問題のある会社、要は“質(たち and/or しつ)”の悪い会社の上級管理職が、(シンポジウムや講習会のようなものを除いて)セミナー業者による単発の専門セミナーを受講することは滅多にない。「現場のことは現場の方々にお任せしている」って? 違うでしょ。あんたが無責任なだけでしょ。細かな技術的なこと、専門的なことはともかくとして、現場がどんな状況にあるのか、適切かつ適正に稼働しているか否かの確認は必要で、品質システムの一環としてあんたの責任に他ならないんだよ。経営陣の責任(Management Responsibilities)ってどういうことかを考えろよ。それって、あんたの会社の“質”の悪さ、もっと露骨に言えば、あんたの“質”の悪さを露呈しているだけだからね! 

ときに、先の第6章および第7章に述べたことをわかっていない先生や受講者を見かけることもある。「それは、お前だよ?」と言われればそうかもしれない。いや、多分そうだろう。でも、「あんたもだよ!」という可能性があることを自覚して貰いたい。これでも、講師を務めた際はアンケート回答を読んで反省し次回に改善を図っているし、受講に際しては既に知っていることだって初心に戻って真剣に耳を傾けているんだぞ。

第9章:そもそも教育訓練は知識量や机上の理解度を評価するものではなく、あくまでやれるかどうかだぞ!
GMP自体にレベルの差があるとは思っていない。ましてや知識量で優劣が決まる訳ではない。が、運用としてはレベルの差が生じてしまう。何故か??? 要は、求められることの本質の認識度合いの差なんじゃないのか? 認識できていないことは、当然やれない。目の前の行為・行動は、どれだけ認識し理解しているかの結果でしかない。単にそれだけのこと。

だが、大方の会社さんにあっては、運営が形式的で記録を残すことが目的と化し(それさえできない会社は論外)、現実の作業にマッチしておらず、まして目の前の作業の本当の目的に沿っていなかったりする。皮肉った言い方をすれば、例えば、GMPの教育訓練と称して「逸脱に関するSOP」を説明するものの、その内容がどこかの事例集や研究会に記されたままの表現や内容だったり、講習会や研修会で紹介されていたどっかの会社の内容にそっくりだったり。自社・自工場での自分の作業にはまったく当てはまらず、本来の目的さえ見失っているなんてことあるんじゃないのか? ハッキリ言おう。それを“教育訓練の逸脱”って言うんですよ!? もう一度原点に戻って、「何のために、それをやっているのか?」を考えて貰いたい。

ちょっと意地の悪い事例研究をしてみよう。
委託先への監査で、製造現場で唐突に「これがひっくり返ったら、どのように処理・対応するのですか?」と質問する*8。大方は「逸脱に関するSOPに則り対応します。」と回答する。そこがおかしいんですよ。そうじゃないでしょ。具体的に「倒れた物を起こして、傷の有無を確認し、もし液物であれば破ビンによるこぼれや漏れがないことを確認します。」といったことが聞きたいんですよ。SOPに則り逸脱連絡や報告を文書で云々は後のことでしょ。その場をほったらかし、誰が逸脱報告書を書くって言うんですか!? 前編の第3章で述べたように、順番が違うんだよ。もっと悪い場合は、「会議室に戻ってから、SOPで説明します。」なんて回答されたらキレるぞ。お前なー、SOPを見ながらでないと説明できないんかー。第7章でも皮肉ったけど、それって紙の上で決めただけで実際には運用していなってことを暴露してることに他ならないんだよ! 「そこに実態はあるんか?」って叱っちゃうぞ!

第10章:目には見えない部分の品質だってあるぞ!
ハッキリ言って、品質保証としてのGMPには目に見えない部分が存在する。いや、むしろ目には見えない部分、「人間性」「道徳観」「倫理観」といった良識・常識の世界に通じる部分が担保されていなければならない。その上で目標を定め、目的を達成するための作業を如何に動かすかが本来のプラクティスに繋がる。その一番良い例が『5S(清掃・清潔・整理・整頓・躾)』なんじゃないのか。GMP自体に優劣はないが、コンプライアンスがしっかりしている会社ほど、見えない部分を固めて実践しているんじゃないかと思う。GMPの教育訓練だけが従業員に対する教育訓練じゃないからね。人事部によるコンプライアンス研修だって同じだよ。ご時勢がらセクハラやパワハラが強調されるけど、ベースにあるのは「人間性」「道徳観」「倫理観」といったものでしょ。GMPコンプライアンスはその延長線上の専門技術的なスペシフィックな位置づけにあるだけじゃないの? 

第11章:GMPは性悪説であっても、あんたの性格の悪さとは無関係だぞ!
GMPは性悪説に基づくと言われるが、では、作業員や関係者の人格さえも疑ってかかれとでも言うのか? そうじゃないでしょ。あくまで、ヒトとして本来求められている部分、「普通はそうするよねー」といったことは当然そうするという前提なんじゃないのか。そうでなきゃ、どんなにGMPを改正したところで、運用としては成立しないよ。もう一度、ヒトとしての原点に戻れや!

今風に言う「Pharmaceutical Quality System(PQS)」や「Quality Culture」なんて所詮はこれら込みでの話なんじゃないのか。“普通は”とか、“当たり前”とか言ってることを度外視しては、どんなご立派な体制やSOPを用意してもすべてが“見せかけ”で終わってしまう。現実の世界では、SOPとして書き表せないことも多々ある。行間を読むじゃないが、文字に書き表せない部分をどうやって適切な行動に移し替えていくかで決まる。それが“しつ”も“たち”も良い、レベルの高い工場・会社って言うんですよ。そういう工場・会社は、目には見えない部分を土台にしてGMPの本質を叩き込み、その上で手順化した部分をしっかりと教えているからこそ現実対応が可能で柔軟に運用できるんですよ。

第12章:言い訳はもう止めて、“たち”の悪い会社になるんじゃないぞ!
こんなことを言うと、「うちはグローバル会社と違ってリソースがないから・・・。」と言い訳が入る。それって、グローバル会社だからということとは無関係だからね。そもそもPQSをよく読め! ICH Q10の1.7 (c)項には、「新規の医薬品品質システムを開発し、又は既存のシステムを変更する場合は、当該企業の活動の規模及び複雑さが考慮に入れられなければならない。」*9とハッキリ書いてあるだろうが。この意味って、中小企業だから端折って良いとか、まして手抜きして良いなんてことじゃないぞ。自社・自工場の規模(製品数や従業員数など)や複雑さ(工程・作業の難易度や品質への影響度など)に応じての柔軟性を規制当局も考慮しているってことだよ。自社・自工場に最もマッチした品質システムを構築して動かせってことだぞ。自己都合の勝手な解釈はするなよ! そういう考え方が問題なんだってことに気づけよ! それを“たち”の悪い会社って言うんだよ。

終章
不祥事や不始末をしでかす会社さんは、SNSでの炎上を招く輩と同じでほんの一握りだと思っているものの、“たち”の悪い会社が“しつ”まで下げているということが悲しい。大方の会社さんは、有効性と安全性の担保としての品質を、そして患者さんを不安に陥れないための安定供給を、上っ面のGMPコンプライアンスではなく、「我々は、ヒトの生命を預かっている、患者さんを救済する」という信念、まさに『製薬会社の正義』の下で実践してくれていると信じている。読者の皆さんにあっては実態・実質としての “質(しつ&たち)” が問われていると胸に刻んで欲しい。

本話では、今まで以上に “嫌われ者” になる覚悟*10での本音トークで「GMPの質(しつ&たち)」として筆者がGMP運用の中で違和感を覚える点について述べた。

最後に、勝手なことばかりを、しかもあくどい表現を修正することなく、そのまま掲載してくださった(株) CM Plus/GMP Platformに感謝いたします。


では、また。See you next time on the WEB.


【徒然後記】
妻への誕生日プレゼント
あれは何回目の妻の誕生日だっただろう。「そうだ、お花をプレゼントしよう!」、そう思い立った。たまたま日曜日だったということもあって、娘に相談してみたら、「それいいね、お母さん喜ぶよ。」と言ってくれた。ということで、妻には内緒で、娘と二人で駅前の花屋に行った。妻が好きそうな花を選んで、ちょっとした花束にしてもらった。
家に戻り、玄関のインターフォンを鳴らす。「はーい」と言って妻が玄関のドアを開ける。そのタイミングで、「お誕生日おめでとう!」と言って、サッと花束を差し出した。
「なに、これっ!?」
私の想定とは違った妻の言葉。娘も雰囲気を察したのだろう。
たった一言、「お父さん、可哀そう!」
以降、妻の誕生日に花束をプレゼントしたことはない。


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*1:『勝手にGMP論』シリーズ、第1弾から第5弾までは、以下の通りである。
   第1弾:第5話「X+Yの悲劇
   第2弾:第6話「Psの悲劇
   第3弾:第9話「Sustainable GMP
   第4弾:第10話「世界に一つだけの GMP
   カミングアウト版:第14話「Into The Unknown
   第5弾:第18話「ミッション:ポッシブル
   第6弾:第27話「GMPの質・前編

*2:古田土先生によると、特に「治験薬GMP関係」のセミナーにおいては、医
   品製造業許可が不要なことから医薬品事業参入の取っ掛かりとする(した
   い)会社が多く、そのためベースとなる知識・経験がまったく別次元の
   方々が受講することが多いそうである。さらにGCPの信頼性確保の観点も
   あって治験施設となる医療機関から受講される方(GMPの略語さえ知らな
   い)も居られるとのことである。

*3:よくあるパターンとしての一例を挙げると、「PIC/Sのホームページにア
   クセスしたことがある方、ガイドラインを読むとかではなく、単にアクセ
   スしたと言うだけで結構なのですが、居られますか? 挙手をお願いしま
   す。」と問いかけるのだが、数名しかいないなんてことはザラ。
   そのくせ、「PIC/S GMPの対応はどのようにしたら良いのか?」なんて
   ことを聞きたがったりする。

*4:ハッキリ言って、“たち”の悪い会社ほど自分に都合の良い所取りするき
   らいがある。“しつ”の問題は、たまたまではなく必然的
であるように思われる。
   
*5:“たち”の悪い会社に多い質問として、「●●は必要ですか?」とか「▲▲
   までやる必要がありますか?」が挙げられる。「そこまで必要ないでしょ
   う。」の答えを期待しており、顧客監査や行政査察で何か言われたら、
   「■■先生が不要だと言っていましたのでやっていません。」と言いたい
   のだろう(また聞きではあるが、その先生とされたていたらしい)。
   要は、はなから「やりたくない」が見えており、どうやってしないで済む
   かを考えている
としか思えない。

*6:赤の他人である講師からすれば、個別質問に対しては、ある程度の仕事内
   容や状況がわからないと的確な答えをしようがなく、一般論として答えざ
   るを得ないんですよ。そのくらい普通に考えてわかりません?

*7:そんなこともあって、個別セミナーでは事務局に頼んで受講申し込み者か
   らの事前質問を受け付けることもある。当日の説明に回答をぶち込んだり、
   余談的に説明したりしている。が、アンケートで不満を言う者は、たいが
   い事前質問も当日の質問もしない。セミナーのエンドでは必ず「事前質問
   に対する回答、本日この場での質問や確認、大丈夫ですか?」と親切に尋
   ねているのにも拘らずである。

*8:ここに示した意表を突く唐突な質問は、委託先監査で実態をチェックする
   際に使える方法である。ただ、お世辞にも健全なやり方とは言えず相手か
   ら嫌われる方法なので、本音と建て前とが見え隠れしていたり、実態に疑
   問を感じたりといった場合に限定することをお勧めする。ヘタをすると、
   こいつは当社を疑っているとして信頼関係を崩すことにもなりかねず、両
   刃の剣と言える。

*9:英語原文はこちら、“The size and complexity of the company’s
    activities should be taken into consideration when developing a new
   pharmaceutical quality system or Pharmaceutical Quality System
   modifying an existing one.”

*10:お世辞にも人に好かれるタイプの人間ではないことくらいは自覚しており
   ます。
 

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古田 ドマ

古田 ドマ

GMDPエッセイスト

2018年に薬業関係の某有名誌のオンライン版にコラムニストとして忽然と登場。製薬業界の内部事情に詳しく、特に監査業務に造詣が深いことから、医薬品の品質保証業務に従事していたものと推測されるが、その正体は不明。毒舌的な内容が多いものの、ヒューマニズムを掻き立てる心温まる物語的な内容のものもあり、歯に衣着せぬ物言いは実務担当者にとっての心の声を反映した本音トークとも言える。

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