2021.03.19.FRI

新技術

がんの機能解明から新薬開発を目指す人へ【第2回】

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執筆者:GMP Platform事務局

がんの機能解明から新薬開発を目指す人へ【第1回】

【第2回】遺伝子・細胞のためのウィルスベクターの製造

・はじめに
遺伝子・細胞治療(Gene and cell therapy:GCT)は、従来の治療法が有効でない、または適用できない多くの疾患を治療できるオーダーメイド医療の一種である。2017年に、キムリア(Tisagenlecleucel)およびイエスカルタ(Axicabtagene Ciloleucel)の2つのCAR-T細胞療法がFDAの承認を受け、市販されるようになった。これまで、さまざまな国でヒト疾患の治療を目的とした20を超えるGCT薬が薬事規制当局の承認を受けている。原材料または原薬としてプラスミドDNA、レンチウイルスベクター(lentiviral vector:LVV)、およびアデノ随伴ウイルスベクター(adeno-associate vector:AAV)が広く用いられるが、市場の需要を満たすには、大規模スケールに且つ、高純度に製造する必要がある。

 
1、プラスミドDNA
プラスミドは、遺伝子・細胞治療で広く用いられるベクターであり、感染症およびがんを治療するワクチンとして、さらに、LVVやAAVなどのウイルスベクターを製造するための原材料として用いることができる。
薬剤またはワクチンとしてのプラスミドDNAは高純度でなければならない。アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)によれば、プラスミドDNAはスーパーコイル含有量が80%を超えること、製造規格によっては95%を超えることが要求される。スーパーコイル含有量はプラスミドDNAの純度の指標である。残余RNA、宿主細胞由来のタンパク質およびDNAによる純度の要件、ならびに無菌性、低エンドトキシンなどによる安全性の要件のほか、患者に投与する場合は十分に高用量でなければならない。そのため、バイオ医薬品関連の用途では高収率、高純度なプラスミドDNAが不可欠となる。
GenScript ProBioは、原材料、原薬、製剤など、さまざまな用途としてのプラスミドの製造経験を蓄積している。また、第三世代レンチウイルスのready-to-useのヘルパープラスミドシステムを有している。プラスミドの品質基準は業界標準に一致またはそれを上回ることが可能である。
 
図1.プラスミド製造プラットフォームにおけるプロジェクト例
最大収量1700mg/バッチ、低不純物含有量
 
図2.GenScript ProBio LentiHelper lasmidシステム


2、LVV
LVVは、現段階では特にCAR-T細胞療法において需要があり、CAR遺伝子をT細胞に送達する媒体として重要な役割を担っている。したがって、臨床グレードのLVVを大規模スケールで製造する能力が産業開発の最も重要な課題となる。
現在のところ、ウイルスベクターに対する市場の需要は、主に接着培養系での製造に基づいている。HEK 293T細胞の接着培養は、通常はセルファクトリー(cell factory)の形をとる。これには、作業量が多い、スケールアップが難しい、バッチが大きく異なる、開放系での操作によるリスクがあるなど、付随するいくつかの問題がある。また、レンチウイルスの接着培養系での製造システムで用いられるウシ胎児血清(fetal bovine serum:FBS)による、外来性感染性物質のコンタミネーションリスクがある。これに対し、無血清培養および比較的単純な操作を用いる浮遊細胞系での製造工程は、スケールアップに好都合であり、ウイルスの収量および品質管理を向上させ、商業化により適した手法であり、ウイルス製造の将来のトレンドになると考えられる。初期段階の研究開発において接着細胞での製造工程を用いる場合でも、新薬承認申請(NDA)を行う際に浮遊培養系の製造工程に変更し、ウイルスに対する市場の大口需要を満たすことが可能である。ウイルスは細胞治療製品の原材料であるため、製造工程を変更してもその品質が基準を満たす限り、薬事規制当局によって承認され得る。また、製造されたウイルスの品質は比較試験により確認できる。
現在のところ、ほとんどの細胞治療製品が未だ臨床試験の段階にある。しかし今後3~5年の間に、多数の企業がNDAの段階に入り、ウイルスに対する需要は短期間で急速に高まる事が予想される。プラスミド・ウイルスを扱う医薬品受託開発製造(CDMO)の一つとして、GenScript ProBioは十分に開発された接着培養系および浮遊培養系(LVVおよびAVV用)の工程ならびに大量生産のための工場設備を保有している。
 
図3.リスク緩和-閉鎖系接着培養システムによるコンタミネーションの回避
リスク緩和-コンタミネーションの回避、再現性および安定性の向上-
全自動操作(左);製品の力価 > 5E+7 TU/ml(右)
 
図4.ProBio浮遊系システムの成績
ProBio浮遊系システムはコストを大幅に削減し、最終的な製品収量を向上させると同時に、不純物を下限未満にとどめる。


3、AAV
2012年に、最初のrAAV遺伝子治療製品alipogene tiparvovec(Glybera)がリポ蛋白リパーゼ欠損症の治療薬として欧州医薬品庁に承認された。5年後、米国では、最初のrAAV遺伝子治療製品voretigene neparvovecrzyl(Luxturna)が、両アレル性網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(REP65)変異を伴う網膜ジストロフィーに対する治療薬として承認された。rAAV遺伝子治療の臨床的成功は励みとなるものの、大規模スケールでのAAVベクター製造においては、特に、高力価・高純度AAVベクターの製造、およびベクターが身体の免疫を回避する方法が未だ課題となっている。また、ウイルスベクターの製造工程は複雑でコストがかかり、品質管理は未だ標準化されていない。したがって、拡大を続ける臨床ニーズを満たすのに十分なウイルスベクターの製造には、未だ大きな障害が残っている。
GenScript ProBioでは、ウイルス産生浮遊細胞での工程を用いることで、ウイルスの大量生産を実現し、医薬品開発企業の工業生産のボトルネックを解消している。

4、GenScript ProBioについて
GenScript ProBioは、前臨床から臨床、そして商業的供給まで、多くの遺伝子・細胞治療の成功を支える事を目的としたGenScriptのCDMO事業セグメントである。プラスミドおよびウイルスベクターを多様な市場ニーズに合わせ提供している。
 


5、遺伝子・細胞治療の将来性
以上のようなオーダーメイド医療の流れは不可逆的に発展の歩みを止めることなく進化し続けいる。海外では日本国内よりも急速な速さで技術革新が進み、Precision Medicineやゲノム医療への社会実装が実現されつつある。DNAの構造を解き明かした歴史を持つイギリスによる国家プロジェクトに関しては、先駆的な10万人規模の研究を行い、既に全ゲノム検査の医療実装を開始し、同様のプロジェクトがアジアを含め世界中で開始されており、各国はイギリスの経験及び実績に基づいて、プロジェクトを推進している。
2020年度、遂に、日本でも10万人規模という、ヒト全ゲノムデータが患者さんの臨床データと共に蓄積される大規模プロジェクトが複数年にわたり開始された。日本人の基本となるビッグデータを蓄積し、そのデータの利活用により、日本人に特異的ながんの遺伝子変異や新しい原因遺伝子が発見され、新たながんの予防法・治療法が開発される準備が整いつつある。遺伝子・細胞治療の社会実装を確立・拡大していくには様々な課題を解決していく取組みが必須である。レギュラトリーサイエンスの推進、DDS技術の開発、他家技術の開発、そして、GMP品質の国内材料供給基盤の構築などが列挙される。しかし、近い将来、遺伝子や細胞を精密に設計し、開発・製造された治療薬により、がん疾患を根治・制御可能になる世界が実現され、その時代では、主要な治療モダリティの1つになっている事を期待している。
 
 コーディネータープロフィール
 
   小出 哲司
   理科研株式会社 戦略営業部 部長
 
2002年に理研ベンチャー、
株式会社インプランタイノベーションズ取締役を歴任。
2007年より理科研株式会社に入社。2013年より戦略営業部の部長に就任。新規事業開発及び、企業戦略を立案実行。2017年4月より取締役執行役員に就任し現職。顧客の企業価値を高めるための事業推進ドライバーの創出を一貫して推進している。
 
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理科研は医療、医薬、農業、食品等の先進科学に関わる製品や技術を研究者に提供する専門商社です。ライフサイエンスをはじめとする様々な研究をトータルでサポートし、多様なニーズに応えています。
 『先端科学の情報発信源』を目指し、ライフサイエンスの発展に寄与する会社です。
  <お問い合わせ連絡先>
理科研株式会社 東京支社 戦略営業部  小出
TEL:03-3815-8951 FAX:03-3818-3186
E-MALE:koide-t@rikaken.co.jp
URL:https://www.rikaken.co.jp/
 

 
   今井 英行
   ジェンスクリプトジャパン株式会社 取締役営業部長
 
1998年にサーモフィッシャー(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)のディストリクトセールスマネージャー、2015年にIntegrated DNA Technologies 株式会社 営業本部長を歴任。
2019年よりジェンスクリプトジャパン株式会社に入社。取締役営業部長に就任し現職。グローバルで展開している研究サービス事業やバイオ医薬品開発サービス事業の国内での新規事業開発及び、新規チャネル開発に従事。日本のバイオ医薬品研究および開発の発展に貢献できるCRO、CDMOを目指した取り組みを続けている。
 
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~バイオテクノロジーを通じて、人々の健康と環境の改善に貢献する~

アメリカのニュージャージー州に本社を置く、従業員3900人規模のバイオCRO企業(医薬品開発受託機関)。現代の分子生物学研究に必要不可欠な「遺伝子」「ペプチド」の人工合成や「タンパク質」「抗体」の作製を行い、現代創薬を推進するためのサポートを担っている。

<お問い合わせ連絡先>
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TEL:03-6811-6572
E-MALE:japanmarket@genscript.com
URL:https://www.genscript.jp/
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