2020.11.20.FRI

その他医療機器関連

医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第11回】

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執筆者:勝田 真一

医療機器の生物学的安全性 よもやま話【第10回】

抽出液を用いたコロニー形成阻害試験の操作

 細胞の準備が整ったところで、実際の細胞毒性試験を行います。
 今まで申し上げてきたように、細胞毒性試験法にはいくつかの種類がありますので、今回は国内の試験法で最もメジャーな、抽出液を用いたコロニー形成阻害試験の操作をご紹介いたします。

 まず、医療機器をそのまま細胞にさらす(曝露する)ことができないことが多く、また、実使用より多少苛酷な条件を設定しようとすると、媒体を用いて抽出するという方法が便利です。医療機器は化学物質や医薬品とは異なり、ほとんどのものが培養液に溶解することはありません。また、ひとつのデバイスが生体に対してどのくらいの比率の曝露(溶解できるもので言う濃度)となるのかも推定するしかない場合が多いので、多少は苛酷な条件にしておいた方が無難です。
 このような理由で抽出することが多いのですが、抽出という工程は、上述のとおり、実使用時の生体曝露を模擬するか、多少厳しい条件を設定できればベストです。ただ、以下のような条件によって、抽出されてくる物質の種類や量が大きく変化することに注意する必要があります。

①抽出媒体の種類
②抽出割合
③抽出温度
④抽出時間

 媒体として、ヒトの体液は血液やリンパ、漿液や細胞間液などがありますが、基本的には水分がほとんどを占め、水に溶解するミネラル分や有機物が含まれます。また、血液やリンパには脂肪が多少分散しています。臓器表面を覆う漿液や細胞間液には、ふつう脂肪分はほとんど見られません。体温は36~37℃くらいが平熱で、発熱しても42℃程度が限度でしょうし、冬の外気に触れる皮膚温でも0℃を下回ることはあまりないでしょう(凍傷になります)。
医療機器と接触する面積や体液に曝露される面積は医療機器によってさまざまですし、医療機器に接触する時間もさまざまです。
 このようなヒトとの曝露に関する事情がある一方で、それぞれの試験に用いることができる条件があり、加えて抽出操作が可能になる抽出割合の限界があります。
そこで、上記の①~④の条件をある程度標準化して生物学的安全性試験を設計するという取り組みがなされ、細胞毒性試験で抽出する場合は、一般的に、①5または10%の血清を含む培養液を用いて、②医療機器1 gまたは表裏の表面積60 cm2につき10 mLの割合で加え、③37℃で、④24時間抽出するということになっています。37℃で抽出するというのは、媒体に血清が含まれていることから、それ以上の温度での抽出は、血清成分を変質させてしまう恐れがあるからです。

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勝田 真一

勝田 真一

一般財団法人日本食品分析センター 理事
1986年財団に入所し、医療機器、医薬品、食品、化粧品及び生活関連物資等の生物学的安全性評価に従事。1997年佐々木研究所研究生として毒性病理学及び発癌病理学研究に携わる。1999年東京農工大学農学部獣医学科産学共同研究員として生殖内分泌学研究。日本毒性病理学会評議員、ISO/TC194国内委員会、ISO/TC194 WG10 Technical ExpertやJIS関連の委員などを歴任。財団では薬事安全性部門を主管し、GMPやGLP対応を主導。情報システム部門担当を歴任。大阪彩都研究所長を経て現在北海道千歳研究所長。