2020.11.13.FRI

再生医療

再生医療等製品の品質保証についての雑感【第19回】

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執筆者:水谷 学

再生医療等製品の品質保証についての雑感【第18回】

第19回:無菌操作環境の維持管理 (2)


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はじめに
 本稿では、引き続き、再生医療等製品製造の無菌操作環境にて生じるリスクの考え方において、清浄化と無菌化の手順構築について、雑感を述べさせていただきます。一般的な医薬品製造での清浄化あるいは無菌化は、無菌操作環境を工程ごとに構築し、除染等を含む初期化を実施するので、洗浄バリデーション設計の一環として、あまり意識せず手順を構築します。他方、予め設計を行った製造施設で、複数の工程をまたいで無菌操作環境を運用する再生医療等製品製造では、用事後清掃(工程内)の各操作で「何を行ったのか」の位置づけが必要となると考えますが、その時、言葉(用語)の定義の理解は重要です。
 本稿では、第17回でお話ししたチェンジオーバーについて、厚生労働省事務連絡「再生医療等製品の無菌製造法に関する指針」(以下、指針という。)の作業所の衛生管理(第7章)に準拠して、運用の考え方を考慮しました。


● 用語(言葉)の意味をきちんと理解し区別しよう
 再生医療等製品の製造工程にて、原料等あるいは工程資材を施設内に導入するためには、多重包装の最外装除去や外装表面の微粒子や微生物除去により、無菌操作への影響を除去する操作を段階的に行います。その中で、グレードBからグレードAへの持ち込み物(導入時)の汚れ除去操作や、安全キャビネット内の清掃(チェンジオーバー時)による汚れなどの除去について、安易に「清拭」と説明する場面を見かけます。しかしながら、それは必ずしも正しい表現方法ではないです。例えば、70%エタノールを用いて清拭を行えば、イメージとして、清浄化(清掃)と無菌化(消毒)が行われたように感じますが、指針では、清浄化と無菌化は、それぞれ別の目的と手順を伴った操作です。そもそも、清拭の操作では無菌化を達成することはできません。
 指針における衛生管理では、清浄化と消毒は明確に区別されています。清浄化は、次工程に影響しないように、汚れあるいは微粒子を除去することで、消毒は微生物(ウイルスを含む)の無菌化(無毒化)です。清浄化では、微粒子を取り除くことで、副次的に微生物の除去が実施できる可能性がありますが、無菌化を説明することはできません。他方、無菌化は、微生物の殺滅は実施できますが、汚れや微粒子は除去されません。この時に用いる薬剤(清浄剤・消毒剤)についても、それぞれの目的で、必要な操作で使用されます。例えば70%エタノールの場合、清浄剤としては、汚れを柔らかくしたり溶かしたりすることで除去することを目的に、噴霧したり不織布に浸して拭き取りに使用しますが、消毒剤として使用する場合は、対象の面を濡らして一定の接触時間を維持できるように使用します。清拭は、一度取り除いた汚染物質を再付着させないことを意図した、清浄化を目的とした拭き取りの操作であり、必ずしも消毒の操作要件を満たしません。(一般的に、清拭に70%エタノールを使用するのは水と比較して乾燥が早いため。)短い接触時間でも菌を殺滅できる可能性は否定しませんが、消毒の操作とは言えないと考えます。したがって、清拭は無菌化の操作ではありません。
 

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水谷 学

水谷 学

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。