2020.10.23.FRI

品質システム(PQS)

医薬品GMP理解の第一歩【第6回】

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執筆者:小山 靖人

医薬品GMP理解の第一歩【第5回】

【著者セミナー】
医薬品GDP入門~GDPガイドラインのポイントと具体的な実践方法~
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●日時:2021年1月22日(金)

1.はじめに

今回のテーマは逸脱管理です。製造所で発生する逸脱に対しては日常的な対応が必要なことと製品品質への直接的な影響を常に考慮する必要があります。このため、逸脱管理は前回ご説明した変更管理と並んで、製造所の品質システムを構築し維持する上で核心となる品質システム要素である、ということが言えます。
逸脱発生をゼロにすることはできません。しかし、逸脱は、適切に対応することにより、製造プロセスと試験検査プロセスを改善して再発を防止し、品質確保を達成する積極的な機会であると捉えることが大切です。製造所にとって、逸脱対応は実際のところ多大なタスクを必要とするのですが、再発を防止することによって対応コストも低減させることができます。
製造所のQA(品質保証)部門や製造、試験を担当される現場の方々、あるいは製造販売業者として製造所を管理されているQA部門の方々は日々逸脱に悩んでおられることと思いますが、この機会に改めて、逸脱管理のポイントについて考えていただければと思います。

2.逸脱とは何か?

逸脱の定義を公的なGMP文書から見てゆきましょう。GMP省令では、「製造手順等からの逸脱(以下単に「逸脱」という。)」という文言があり(第15条)、ここにいう製造手順等とは省令第2条に「製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法(以下「製造手順等」という。)」と規定されています。従って、GMP省令に基づきますと、逸脱とは「製造手順等からの乖離」と考えることができます。また、ICH Q7(原薬のGMPガイドライン)では、逸脱とは「承認された指示又は設定された基準からの乖離」とされています。
これらをまとめると、逸脱とは、「標準書等に定められた手順又は基準からの乖離」(①)ということができます。なお、ここで標準書等とは製品標準書や標準作業手順書(SOP)等、製造所内のGMP文書管理システムに登録された文書による規定とお考え下さい。
さらにもう一歩踏み込みたいと思います。GMPに係る作業のすべてを、いわばペンの上げ下ろしまで完璧に文書化できないことは言うまでもありません。従って、文書化はされていないけれども、通常行っている作業と異なる作業については、それが引き起こす品質影響等の可能性を必ずしも否定できないものであれば、逸脱として管理する必要があります。ですから、逸脱の定義としては、上記の①に加え、「標準書等に定められた手順又は基準には詳細に規定されていないが、通常実施される作業からの乖離」(②)も含める必要があります。その理由は、②の場合であっても適切な逸脱管理を行うことが品質確保にとって必要であるからです。
筆者はこれまで数多くの製造所に対してGMP監査を行ってきましたが、逸脱管理を①に限定し、②を顧みないケースに多々遭遇してきました。②にも適切に対応すれば、製造所の品質改善に役立つのになあ、という思いをしばしば持ちました。さらに②を無視しているために、何か隠しているのではないかと疑ったこともありました。ぜひ、逸脱に関する②の考え方についても考慮していただきたいものです。

 

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小山 靖人

小山 靖人

小山ファーマコンサルティング代表
NPO-QAセンター顧問

1979年藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬株式会社)入社、責任者として無菌製剤の製剤化研究、並びにGMP及び治験薬GMP全般に関する品質保証業務に従事。2003年日本イーライリリー株式会社に入社、開発QAマネージャーを担当。2007年塩野義製薬株式会社に入社し、金ケ崎工場の品質部門長を経て、本社部門の品質保証部にてGQPに関する製造所管理業務に従事。2019年、小山ファーマコンサルティングを起業。
この間、厚生労働科学研究「医薬品・医薬部外品製剤GMP指針」を座長として取りまとめ、厚生労働省より発出 (2003~2006年、主任研究官 檜山行雄先生)。厚生労働省の「PIC/Sガイドライン比較分析ワーキングチーム」に参加(2010~2011年)、また厚生労働行政推進調査事業「GDP国際整合化研究班」に参画し(2016年~現在)、GDPガイドライン発出に関与。日本薬剤学会「製剤の達人」受賞(2011年)、薬剤師、日本PDA製薬学会代議員。