2020.09.11.FRI

レギュレーション

ドマさんの徒然なるままに【第20話】

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執筆者:古田 ドマ

ドマさんの徒然なるままに【第19話】


第20話 QA三秒ショッキング3/政治家に学んだだけなのに

♪♪♪  ~ ♬ ♬ ♩ ♩ ♩ ♫ ♫ (某ご長寿料理番組のミュージックのつもり)
はーい、QA三秒ショッキングのお時間です。今回は某国の政治家さんたちの発言や行動に学ぶべき点があるかどうかとして着目してみました。今回もちょっと問題なおバカさんは登場するでしょうか。どうもオーディターにも問題がありそうですが・・・。
もはや死語になってしまっていますが、「お話、スターティン!」
ちなみに、本話の内容は、すべてフィクションです*1

● 記録はとっておりません。
顧客監査の場で、
 「変更管理の記録はありますか?」
 「いえ、記録はとっておりません。」
 「えっ!? ・・・。では、予備実験や試作の記録は?」
 「いえ、それも残しておりません。」
 「それでは、製造所内での変更の是非についての議論を行うとSOPに規定してい
  る変更管理会議の議事録は?」
 「それもございません。」
 「では、何か記録として残しているものはございますか?」
 「あんたもしつこいね。記録も議事録も残していないって言ってるじゃないです
  か!」
 (天の声)ダメだ、こりゃ!?
 《筆者注》某国における新型コロナウイルスについての前・専門家会議の議事録はとっていなかったとのこと。こういうことを平然と言われてしまうと、GxPの記録保存に対する我々の努力って何なんだと感じてしまう。専門家は科学者の皆さん、記録を残すという認識は学生時代から醸成されているはず。また同席の官僚さん。後日に何を言われるか分からないので必ずメモっているはず(ある意味、そのための同席)。そう考えると、隠ぺい工作のようにも思えてしまう。それはそれで問題だし。何とも言いようがない。こういう言い訳、民間企業においては絶対に許されない行為となるので、気をつけましょう。

● 記憶にございません。
顧客監査の場で、
 「それでは、どういう話し合いがあったのか、記憶していますか?」
 「いえ、記憶にございません。」
 「詳細はともかくとして、どんな意見があったのかくらい覚えていませんか?」
 「一切、記憶にございません。」
 (天の声)まったく話にならんわ!?
 《筆者注》某国の国会答弁では毎年トップクラスで出て来る“慣用句”とも揶揄できる常套句である。意見陳述であれ何であれ、国会議員や国会に招聘される官僚と言えば、かなり頭の良い方々だと思うんですがねー。それが記憶にないって、どういうことなんでしょうか。ある知人にこんなことを言われたことがある。「記憶に残らないんじゃなく、“(自分に都合の悪いことは)記憶にも残さない”ような者でないと政治家やお偉いさんにはなれないんですよ。」と。目から鱗である。

● 廃棄しました。
顧客監査の場で、
 「せめて出席者の名簿か何かありますか?」
 「あったかもしれませんが、廃棄しました。」
 「変更管理会議出席者についてはSOPに規定されていませんか? また保管期間
  の規定については?」
 「その辺については、SOPを見直し中です。」
 「改訂を予定しているという理解でよろしいですか? いつまでに改訂する予定
  ですか?」
 「あくまで予定にすぎませんので、いつまでと明言しかねます。」
 (天の声)これまた、ダメだ!?
 《筆者注》まさに某国の国会答弁そのものである。監査時にこんなヤリトリがあったとすれば、確実にアウト。委受託であれば、関係は切れるだろーなー。

● まことに遺憾です。
顧客監査の場で、
 「そうですか、変更管理会議の出席者名簿もなく、SOPの改訂も計画してはいる
  が、具体的な改訂内容についても、その改訂日も未定ということですね。」
 「はい、その通りでございます。」
 「まことに遺憾です。」
 (天の声)要は、この場合は指摘ということだろ!
 《筆者注》「遺憾」なる言葉、政治家の口からよく出て来る。堅い言葉と言ってしまえばその通りではあるが、日常的にはほとんど使われないような・・・。そんなこともあってか、日常の中で使うと、堅いを通り越して、皮肉か滑稽に聞こえてしまうのは、筆者だけ?
 
● バックアップって?
顧客監査の場で、
 「では、話変えます。原本は紙ですか、それとも電子ですか?」
 「両方あります。」
 「原本はどの部署が保管管理していますか?」
 「QAです。」
 「紙原本はどのように保管していますか?」
 「QAが耐火キャビネットにて施錠管理し保管しています。」
 「電子の場合は?」
 「クラウドで管理しています。」
 「バックアップは?」
 「以前はリスク管理の一環として東西2つのクラウドサーバーで毎週末にバック
  アップしていましたが、某国政府の話によるとバックアップデータは行政文書
  には相当しないそうなので、GMDPデータもヤバイと思い、弊社としてバック
  アップは止めました。」
 「賢明な対応ですね。弊社も止めました。」
 (天の声)おい、おい!
 《筆者注》某閣僚の認識不足と言ってしまえばそれまでであるが、バックアップの意味も理解しておらず、すべてのデータ保存を否定するような発言は控えて欲しいものである。だからと言って、この発言のためにバックアップを放棄するような会社様はないと思いますが。

● 復元不可!?
顧客監査の場で、
 「では、そのバックアップの保存システムは?」
 「シンクライアント方式です。」
 「えっ、シンクライアント?」
 「何か問題ありますか?」
 「シンクライアントのデータは復元不可ですよ!」
 「えっ、存じませんでした。お教えいただき、ありがとうございます。」
 (天の声)なに言ってんだ、こいつら。
 《筆者注》これまた認識不足と言ってしまえばそれまでであるが、政治家の方々、あまりにもコンピュータ関連の知識がない。いや、なさすぎる。答弁の際の資料は官僚さんが作成するはず。せめて、どういう意味なのかくらい教わって勉強してから答弁して欲しい。もしこんなことで否定されたら、大方の製薬会社様、Data Integrity以前にアウトなんじゃないですかねー。

● Non-Science based/Non-Risk based Approach
顧客監査の場で、
 「では、話変えて、リスクマネジメントはどうなっていますか?」
 「ICH Q9に沿って実施しております。」
 「技術的な内容、科学的な内容については、CMCといった各部門からの専門担当
  者が集って議論や対応を図るんでしょうか?」
 「そうです。メンバーが集まり、ワイワイガヤガヤ、コーヒーを飲みながら雑談
  しています。」
 「えっ、雑談ですか!? FMEA等、リスクの特定や分析、さらに低減方法などを
  議論するんじゃないんですか?」
 「そんなことしませんよ、そんなこと決めたって、実際には何もしないんですか
  ら、議論するだけ時間の無駄でしょ。」
 (天の声)Hasta la vista, Baby
 《筆者注》さすがにこんなことは在り得ないと思いますが、一度FMEA等を実施したものの、以降は変更が加わっても再評価したりせず、あるいは定期的に見直したりしていないといったことはありませんか? 変更管理は一例であって、他の要件や管理も同様ですよ。形骸化させてしまっては、リスクマネジメントそのものが台無しになるだけでなく、当該工場や会社に不信感、さらには疑念を抱かれますよ。

えっ、タイトルに「政治家に学んだ」とあったので役に立つと思って読んだら、全く違っていたって? あー、すいません。すべて反面教師としての題材でした。そのまま実行したらとんでもないことになるものしか出てきませんでした。正確には、「政治家に学べなかった」とすべきでございました。申し訳ありません。

では、また。See you next time on the WEB.


【徒然後記】
蝶の恩返し
我が家の庭には小さな柚子の木が植えてある。元々は、酸っぱい臭いと鋭いトゲによる野良猫除けとして植えたものであるが、植えた翌年から、アゲハ蝶(アゲハとクロアゲハ)の産卵と幼虫の餌場と化している。後日に調べたところ、柚子の若葉はアゲハとクロアゲハの大好物(ちなみに、キアゲハはニンジンの葉が好物)で、幼虫時代は自分が生まれた柚子の木の若葉しか食べないらしい。幼虫時代と言えば聞こえはいいが、その姿は芋虫(黒茶色の前期段階)であり、青虫(緑色の後期段階、モスラの幼虫のシェイプをイメージしてください)であることから、嫌がる者が多いと思う。
ただ、現実の世界では、鳥やカマキリ等の恰好の的として捕食されてしまうもの、サナギになったものの天候などの問題から羽化できずに死んでしまうものなど、自然の過酷さが襲いかかる。そんな中、卵の産みつけから数度の幼虫時代の変態を通じてサナギへ、そして羽化して大人の蝶となり、大空に飛び立つ様を見ている(ただし実際に目撃したのは一度しかない)と我が子の成長を見届けるかの如く愛しく思える。
最近、こんなことがあった。ある日、一匹の青虫が逆さまにぶら下がった状態でもがいていた。よく見ると、柚子のトゲに突き刺さっている。鳥についばまれたがすべり落ちたのか、知る由もないが、ちょっと哀れな状態である。しばらく様子を見ていたが、どうにもなりそうもない。このままでは確実に息絶えると思い、そっと指でつまんでトゲから外し、他の若葉の枝に移し替えた。
その翌朝のことである。成虫のアゲハが飛んできたかと思えば、玄関前に降りてジッとしていた。すると、きれいな羽をゆっくりと開いたり閉じたりを繰り返した。あなたが助けてくれたのは私の子供です。ありがとう。そう言いたげに見えた。私の勝手な思い込みであり、たぶん別のアゲハによるたまたまのことであろうが、母親である彼女として出来る限りの感謝であったと思いたい。ほっこりとした、何となくハッピーな一日を迎えることができた。それだけで十分な恩返しだよ、アゲハさん。

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*1:(天の声)誰が読んでも、そんなことは直ぐに分かるわい。このバカタレが!
   (筆者)バカタレ呼ばわりしないでくれる。しかも、今回は本文内にまで出
       てきて口を挟んでるし。邪魔しないでよ。
   (天の声)お前のつまらない話を盛り上げてあげてるんじゃ、感謝しなさい。
   (筆者)くっそー!

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古田 ドマ

古田 ドマ

GMDPエッセイスト

2018年に薬業関係の某有名誌のオンライン版にコラムニストとして忽然と登場。製薬業界の内部事情に詳しく、特に監査業務に造詣が深いことから、医薬品の品質保証業務に従事していたものと推測されるが、その正体は不明。毒舌的な内容が多いものの、ヒューマニズムを掻き立てる心温まる物語的な内容のものもあり、歯に衣着せぬ物言いは実務担当者にとっての心の声を反映した本音トークとも言える。

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