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2020.08.28.FRI

その他製造関連

新型コロナウイルスに対するGMP対応              ~FDAのガイダンス(案)等を参照して~

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執筆者:小山 靖人

 

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1.はじめに

 新型コロナウイルスの感染者が国内でも増加しつつある現在、製薬企業でも様々な対応が取られていると思われますが、医薬品の品質保証にかかわるGMPの観点から製造所における新型コロナウイルス対応を考えてみたいと思います。
 新型コロナウイルスに感染した従業員が製造作業に携わり、結果として医薬品を汚染することは、医薬品の品質確保の点であってはならないことであり、まさに喫緊の課題であるといえます。風邪にかかって微熱があるが出勤してきた、という従業員を製造作業から外すことは製造所では常日頃実施されていることと思います。しかしながら、新型コロナウイルスの場合にはその感染力が強力であることから、万が一、感染者が製造ラインで作業したということになれば、他の作業者への感染や医薬品へのウイルス汚染のリスクから、少なくとも当該のラインは数日間の操業停止を余儀なくされる恐れがあり、特段の注意が必要となります。そういう事態になれば、医薬品の市場への供給が一時停止することにもなりかねず、製薬企業の社会的責任も果たせません。リスク分析の用語を使用すれば、製造所の従業員の新型コロナウイルス感染は、発生確率は必ずしも大きくないかもしれませんが、いったん発生した場合の重大性(インパクト)は極めて大であると言えるでしょう。
 ちなみに、本年4月の緊急事態宣言発令前の3月のことですが、ある製薬企業が製造を委託している受託企業各社に新型コロナウイルス対応を照会したそうです。それらの回答から、各社手探りで対応を進められている状況がよく把握できたとのことでしたが、富山県のある企業さんなのですが、「当県は未だ感染者が発生しておらず、従って新型コロナウイルスの対応は何も実施していない。」というのがあったと聞き、リスク管理、特にリスクの予見性という点で非常に疑問を感じたことがありました。新型コロナウイルス感染の収束を予想できない現在、製造所にとって新型コロナウイルス対応は不可避の課題であるという認識が必要であると思います。
 なお、製造所によっては、EHS(Environment, health, and safety)の立場から、新型コロナウイルス対応を進めておられるところもあると思います。しかしながら、EHSは労働安全衛生の見地から従業員(と環境)を保全することが目的ですので、それとは異なり、医薬品の品質保証の見地からGMPにもとづく対応が求められねばなりません。
 このような状況下で、米国のFDAは最近になってGMPにもとづく新型コロナウイルス対応のガイダンス(案)を発出しています。このガイダンスとわが国の法令やガイドラインも参照しながら、新型コロナウイルスに対するGMP対応を考えてみたいと思います。

2. GMP省令と国内のガイドラインから

 まず、GMP省令における衛生管理の項目を見てみましょう。
・従業員の衛生管理を行うとともに、その記録を作成し、これを保管すること。(第10条第7号)
とあります。
 この項目を補完するGMP施行通知では、衛生管理の内容として従業員の更衣等、健康状態の把握、手洗い方法、およびその他の衛生管理に必要な事項、が挙げられています(第3章第3の8(4)イ)。さらに、GMP事例集では、健康状態を「感染症、裂傷等」と規定したうえで、
・(前略)当該疾患又は裂傷が製品の品質に悪影響を及ぼすおそれがある場合には、その状態が回復するか、又は作業に従事しても製品の安全性又は品質を損なわないと診断されるまで、作業に従事させないこと(GMP8-9)。
とされています。
次に原薬GMPのガイドライン(ICH Q7)です。第3.24条には上記のGMP事例集が参考にしたと思われるほぼ同じ内容の衛生管理の規定があります。
最後に、PIC/SのGMPガイドラインを見てみましょう。
・感染性疾患に罹患した者又は身体の露出表面に開放病巣を有する者が医薬品製造に従事しないことを可能な限り確実にする方策を講じること(第2.17条)。
実は筆者はこれまで、PIC/S GMPのこの条項をあまり気に留めておりませんでした。しかし、新型コロナウイルス禍の今、改めてこの条項を読むと明確に「感染性疾患」が対象とされており、製造所における新型コロナウイルス対応の必要性をいたく感じるところです。
 以上の法令とガイドラインの内容を新型コロナウイルスの感染を念頭に置いてまとめると、製造所では「感染者によって医薬品が汚染され、安全性又は品質を損なわないようにするため、感染者が医薬品の製造に従事することがないように方策を講じること。」ということになります。

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小山 靖人

小山 靖人

小山ファーマコンサルティング代表
NPO-QAセンター顧問

1979年藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬株式会社)入社、責任者として無菌製剤の製剤化研究、並びにGMP及び治験薬GMP全般に関する品質保証業務に従事。2003年日本イーライリリー株式会社に入社、開発QAマネージャーを担当。2007年塩野義製薬株式会社に入社し、金ケ崎工場の品質部門長を経て、本社部門の品質保証部にてGQPに関する製造所管理業務に従事。2019年、小山ファーマコンサルティングを起業。
この間、厚生労働科学研究「医薬品・医薬部外品製剤GMP指針」を座長として取りまとめ、厚生労働省より発出 (2003~2006年、主任研究官 檜山行雄先生)。厚生労働省の「PIC/Sガイドライン比較分析ワーキングチーム」に参加(2010~2011年)、また厚生労働行政推進調査事業「GDP国際整合化研究班」に参画し(2016年~現在)、GDPガイドライン発出に関与。日本薬剤学会「製剤の達人」受賞(2011年)、薬剤師、日本PDA製薬学会代議員。