2020.06.19.FRI

品質システム(PQS)

医薬品GMP理解の第一歩【第5回】

この記事を印刷する

執筆者:小山 靖人

医薬品GMP理解の第一歩【第4回】

医薬品GMP理解の第一歩

【第4話】GMP省令における品質システム要素から、出荷管理とバリデーションのポイントについて

 

 【著者セミナー】
  医薬品GDP入門~GDPガイドラインのポイントと具体的な実践方法~
  ※Web受講可能セミナー
   ●日時:2020年6月26日(金)
 

1.はじめに

 もう10年以上以前のことになりますが、筆者は米国系の多国籍製薬企業の日本法人で品質保証門長を務めておりました。その折に米国本社がFDAから次のような指導を受けたと聞き、非常にインパクトを感じた経験がありまして、いまだに記憶に残っています。
・不適切な変更と逸脱の管理はFDAの品質システムの規制に対する重大な違反である。
・変更と逸脱の管理ができていない製造所は、その他の品質システムの管理もダメである。
 ということで、今回はGMP省令を基準とした品質システム要素のうち、変更管理の要点をご説明したいと思います。なお、逸脱管理については次回にご説明する予定です。

2.変更管理とは

 まず、製造所において変更が発生する要因を考えたいと思います。外的な要因としては、薬事法規の変更、企業の品質ポリシーの変更、効率化や品質確保のための新技術の導入、生産物量の変化、などがあります。他方、内的な要因として、設備の更新、工程の改善、原材料のサプライヤーの変更、トラブル対応すなわち逸脱管理における是正措置と予防措置、などが挙げられます。これらの要因により変更が発生した際に、その変更が製造所内の製品標準書やSOP等のいわゆるGMP文書で規定された事項からの変更にあたる場合、GMP上の変更管理が発生します。変更管理とは少々耳慣れない言葉かもしれませんが、英語ではChange controlと言います。
 GMP省令(第14条)では、「製造業者等は、製造手順等について、製品の品質に影響を及ぼすおそれのある変更を行う場合においては、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。」とあり、さらに「当該変更による製品の品質への影響を評価し、その評価の結果をもとに変更を行うことについて品質部門の承認を受けるとともに、その記録を作成し、これを保管すること。(以下略)」とされています。
 要するに製造所のGMP管理としては、GMP文書で規定された事項からの変更が発生した場合には、すべての変更を品質部門に報告し、その上で変更による製品の品質への影響が評価されます。その結果として当該の変更が品質部門によって承認された後、変更が実施されることになります。
 さらに重大な変更に関しては、製造所の品質部門の承認だけではなく、製造所より製造販売業者(製販)に事前連絡し、製販による評価と確認を経て、承認を得た上で変更を実施する必要があります(GQP省令第10条)。重大な変更とはどういうことかということですが、品質に影響を与えるおそれのある変更ということで、事項に述べる薬事上の変更管理が必要な変更もそれに該当します。

3.ある変更管理から ~ 倉庫改造の事例

 ここで変更管理に関する筆者の経験の一つをご紹介したいと思います。ある企業の製造所に監査でうかがった際のことです。2004年にGMP省令が改正され現在に至っていますが、この改正で変更管理が初めてGMPの要件として規定され、この監査はそれから数年後のことで、まだ変更管理が十分に理解されていなかった時代でした。
 プラントツアーで倉庫を拝見した折に、担当の課長さんに倉庫の一部レイアウトの改造についてお聞きしたところ、庫内温度のマッピングも実施したし、新設の温度センサーの校正もやりました、問題ありません、とのことでした。そこで、分かりました、それでは変更管理の報告書を見せていただけますかとお願いすると、これは変更管理にあたるのですか?報告書はありませんよ、と言われ、思わず絶句してしまいました。
 もちろん変更管理の対象となりますよね。倉庫の改造工事の場合には、あらかじめ工事中の保管原料・製品の保全、それらの品質への影響等のリスクを査定し、問題のないことを確認しておかねばなりません。また、改造後の管理運用手順(SOP)を改定し、作業者の教育訓練も実施する必要があります。そうお話しすると、そういうことはすべてやりました、とのお返事でしたが、すべていわば課長さんの頭の中にしまい込まれ、文書化されていなかったのです。
 ここに挙げたような品質リスクとその対応は、「変更計画書」に事前に記載され、第三者のチェックとして品質部門の承認を得ておく必要があります。また工事終了後、すべてやるべきことはやった、ということで課長さんが倉庫再使用のGOサインを出されています。しかし、ここでは「変更報告書」を作成し、やるべきことをやったのかどうか、再度品質部門が確認し、その承認を得ておかねばなりません。「変更報告書」が品質部門で承認されたことによって、初めて倉庫再使用がGOとなります。課長さんがGOというだけではダメなのです。こうした一連のプロセスが、変更管理のシステムなのです。少々単純化しましたが、ご理解の一助になるかと思い、ご紹介させていただきました。

1 / 2ページ

小山 靖人

小山 靖人

小山ファーマコンサルティング代表
NPO-QAセンター顧問

1979年藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬株式会社)入社、責任者として無菌製剤の製剤化研究、並びにGMP及び治験薬GMP全般に関する品質保証業務に従事。2003年日本イーライリリー株式会社に入社、開発QAマネージャーを担当。2007年塩野義製薬株式会社に入社し、金ケ崎工場の品質部門長を経て、本社部門の品質保証部にてGQPに関する製造所管理業務に従事。2019年、小山ファーマコンサルティングを起業。
この間、厚生労働科学研究「医薬品・医薬部外品製剤GMP指針」を座長として取りまとめ、厚生労働省より発出 (2003~2006年、主任研究官 檜山行雄先生)。厚生労働省の「PIC/Sガイドライン比較分析ワーキングチーム」に参加(2010~2011年)、また厚生労働行政推進調査事業「GDP国際整合化研究班」に参画し(2016年~現在)、GDPガイドライン発出に関与。日本薬剤学会「製剤の達人」受賞(2011年)、薬剤師、日本PDA製薬学会代議員。