2020.03.19.THU

品質システム(PQS)

医薬品品質保証こぼれ話【第14回】

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執筆者:浅井 俊一

医薬品品質保証こぼれ話【第13回】

供給者管理とトレーサビリティの確保

医薬品の製造に使用される原材料の品質確保に関しては、GMPの国際調和、すなわち、PIC/S-GMPへの整合化に関連し、「供給者管理」がGMPの要件となり、原料(医薬品添加剤)や容器などの製造所(供給者)の管理監督が重視される状況にあることはご承知のとおりです。供給者管理は、現行GMPのPIC/Sへの整合化に際し、“6つのギャップ”の1つとして議論され、平成25年8月30日付けの施行通知「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の取扱いについて」(薬食監麻発0830第1号)において、GMPの実施義務事項として示されました。また、これが、ご承知のように、近々、ほかの“5つのギャップ”とともに、正式に、GMP要件として改正GMP省令に取り込まれる見込みであることも周知です。

一方、原薬(医薬品の有効成分)については、その製造所の管理監督が、2005年の法改正により、GQP(「医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令」平成16年9月22日、厚生労働省令第136号)の要件となり、以来、海外を含む原薬製造所への品質監査をはじめとする関連の業務が、医薬品製造販売業者(以下、「製販」)により適宜、実施されていることはご承知のとおりです。ちなみに、2005年の法改正により、GQPの下に、医薬品(製剤)製造の全工程委託が可能になったことにより、委託製造、特に、大手企業の中小の製薬企業への製造委託が急増し、この委託先製造所の管理監督も、医薬品企業(製販)にとってこれまで以上に重要となっています。

原薬・原材料の供給元や医薬品の製造委託先の管理監督の重要性は、以前より認識され、例えば、軟膏剤のチューブや顆粒剤のラミネートフィルムなど、製剤が直に触れる、いわゆる、直接の容器・包材は、医薬品品質への影響が大きいことから、その重要性に鑑み、当該製造所を視察し、必要に応じて改善を申し入れるといったことは、従前より行われてきました。また、汎用される原薬や重要な添加剤などに関しても、同様な対応をとられてきた企業は少なくないと思われます。こういった、重要な事項に対して優先的に、かつ、現場確認を重視して対応するという考え方は、PIC/S-GMPの要であるリスクマネジメントに通じるところがあるのではないでしょうか?

では、どうして今、「供給者管理」が改めて、法規制の下で要件化が必要なほど重視されてきているのでしょうか?一つには、上記のように、医薬品の品質保証に関する規制(GMP)の国際標準への調和が挙げられますが、同時に、実際的な面においても、原材料調達や委託製造に際する、サプライチェーンやアウトソーシングのグローバル化に伴うリスクの回避という観点から、その必要性が増してきていることも事実です。とりわけ、中国をはじめとするアジア各国の経済発展に相まって、これらの国から安価に輸入される原薬や原材料が急増したことにより、これまで、日本や欧米のものには見られなかった異物や不純物の混入を含む、多種多様の品質問題が発生していることから、その防止策として、実地にその製造所を監査し、管理監督することが求められ、すでにそういったアクションをとられている企業は少なくないと推察されます。

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浅井 俊一

浅井 俊一

奈良県出身。1974年ロート製薬入社。
品質管理、薬事、品質保証の各業務に、それぞれ7年,15年,16年間従事。
2012年退職後、2018年まで中国の原薬工場および日本の受託企業において、改善指導や人材育成を含む品質保証全般の業務に携わる。
中国での活動に、「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、CFDA主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
主な取り組みテーマは、「製薬工場のヒューマンエラー対策」、「中国等海外原薬の品質と安定供給の確保」、「GMP記録の信頼性確保」など。
また、人材育成に関連して、組織コミュニケーションの活性化、作業者のモチベーションの確保などにも取り組む。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー 薬剤師。