2020.02.14.FRI

レギュレーション

ドマさんの徒然なるままに【第13話】

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執筆者:古田 ドマ

ドマさんの徒然なるままに【第12話】


第13話:QA三秒ショッキング2/ソレダメ!

♪♪♪  ~ ♬ ♬ ♩ ♩ ♩ ♫ ♫ (某ご長寿料理番組のミュージックのつもり)
はーい、QA三秒ショッキングのお時間です。今回はバレンタインデーにピッタリの室間差圧*1をフィーチャーしました*2が、ちょっと問題なおバカさんが登場しますよ。
「お話、スターティン!」

● 室間差圧と間差の関係とは?・その1
監査時、クリーンルームのマノメーター(圧力計)前で、
 「このマノメーターは定期的に校正していますか?」
 「はい、1年に1回実施しています。」
 「校正表示は?」
 「はい、これです。」
 「今まで校正が外れたといったことはありますか?」
 「竣工稼動して7年になりますが、現在まで特に問題ありません。」
 「校正は大丈夫そうですね。」
 「入室前に確認してから入室するという手順ですかね? 製造記録にはそのチェッ
  クを記録していますか?」
 「いえ、校正時以外に見ることはありません。」
 《筆者注》さすがにここまでヒドイことはないですが、必ずしもキチンとチェックし
      てから入室することを手順化し、記録しているとは限らない製造所があっ
      たりする。逸脱時のアラーム頼りにすることは、本来の維持管理の目的か
      らの逸脱とも言え、アラームが鳴った後では手遅れでは?



●  室間差圧と間差の関係とは?・・その2    
監査時、クリーンルームのドア前で、
 「製造室がより高い室圧としてクリーンエアーがこちら側に流れる設計となって
  います。このダンパーでもチェックできます。」
たまたま作業員がドアを開けて出て行ったので、しばらくダンパーを見ている。
 「ダンパー閉じたままで動いていないようですけど・・・。」
 「あれっ、おかしいな。」
 「それって問題じゃありませんか。」
 「いや大丈夫ですよ。こんなこと日常茶飯事ですから。」
 「・・・」
 《筆者注》さすがに日常茶飯事ってことはないでしょうが、こんな情景に遭遇したこ
             とのある読者もいるのではないだろうか。たまたま遭遇してしまったオー
      ディターも驚きを隠せませんが、こんな事態になってしまった製造所の
      担当者、ご注意くださいませ。たまたまじゃ済まされないことは必至で
      すから。

●  室間差圧と間差の関係とは?・・その3    

監査時、クリーンルームのマノメーター前で、
 「ここは高活性物質を取り扱う部屋なので、通路が陽圧で室内が陰圧の封じ込めで
  すかね?」
 「はい、たぶんそうです。」
 「えっ、“たぶん”って、入室前・作業中・退室時などにチェックしないんです
  か?」
 「封じ込めということで、設計はそのようになっていますが、以降は設計時の状態
  が確保されているはずなので特に気にしていませんが、何か問題でも?」
 《筆者注》うっ、絶句!? これは極端な話として脚色しているが、「●●のはず」と
      いう思い込みの感覚でいる製造所は少なくない。「●●して確認していま
      す」と言い切れるだけのことを実施してほしい。


●  室間差圧と間差の関係とは?・・その4    

監査時、クリーンルームのマノメーター前で、
 「ここは高活性物質を取り扱う部屋なので、通路が陽圧で室内が陰圧の封じ込めです
  よね?」
 「はい、そう設計しております。」
 「と言うことは、通路もクラス100,000レベルのクリーンエアーとなっているわけで
  すかね?」
 「クリーンエアー? 封じ込めということは確かですが、清浄度まではケアしていま
  せん。」
 《筆者注》脚色してはいるが、米国内某受託製造業者で遭遇した実話である。
      非無菌の内服固形製剤用原薬であったりした場合、日本企業のように
      クラス100,000レベルの施設でないことも多々ある(GMP上、非無菌
      の原薬・製剤に対してクラス100,000でなければならないという決まり
      もない)。ハッキリ言って、海外の原薬製造所、クロスコンタミや被ば
      くからの封じ込めはキチンとやっているが、異物混入・浮遊微粒子や微
      生物限度などについてはかなり甘いと言わざるを得ない。



●  室間差圧と間差の関係とは?・・その5    
監査時、クリーンルームのマノメーター前で、
 「この製造室は抗生物質取り扱い用として前室を挟んでの封じ込めとなっているよ
  うですが、前室との差圧の関係はどうなっていますか?」
 「前室が最陽圧で、そのエアーが製造室側と通路側に流入するようになっていま
  す。」
 「と言うことは、前室からHEPAフィルターを通過したクリーンエアーが流れると
  いうことですかね? ちなみに、前室エアーの清浄度チェックは?」
 「前室の清浄度は設置時とフィルター交換時に測定しています。」
 「では、フィルターの交換頻度は?」
 「前室を最陽圧として封じ込めしており、そのチェックをキチンとやっていますの
  で大丈夫です。」
 《筆者注》前室を挟むだけ前項よりはマシと言えなくもないが、状況は前項と同様で
      あり、室間差圧と清浄度とが噛み合っていない例である。さらに、意図的
      がどうかはともかくとして、質問がはぐらかされるという例でもある。
      質問の意図から外れる or はぐらかされる回答は、オーディターからすれ
      ば隠ぺいとも受け取れるのでご注意のほど。



●  室間差圧と間差の関係とは?・・その6    
監査時、クリーンルームのマノメーター前で、
 「この製造室では無菌製品を取り扱っているわけですね。と言うことは、この製造
  室と前室と通路の各室間差圧はどうなっていますか?」
 「製造室が最陽圧、前室が最陰圧、通路は常圧、結果的に通路は前室よりは陽圧と
  はなりますが。」
 「いわゆる、前室=ドラフト型の吸引ということですね。」
 「はい、その通りです。」
 「それでは、最陽圧となる製造室の空調は? HEPAフィルターによる管理で、
  ワンパスだとか喚起回数が何回なのかといったことです。」
 「おーい、誰かこの人の相手してくれる。何を言ってるのか分かんないんだよね。」
 《筆者注》さすがにこんなことはないと思いますが、現場をあまり分かっていない方
      が査察や監査で応対することもないわけではないので注意しましょう。
      ときに、現場での回答内容を会議室に戻ってから訂正することもあるかと
      思うが、その乖離の程度がヒドイ場合もある。そういう場合は印象を悪く
      するだけでなく、本当に環境管理しているのかどうかとして疑義を抱かせ、
      管理手順書と点検記録を根掘り葉掘りチェックされることに繋がる。



内容がないって? そう堅いこと言わずに。本コラム、GMPとしての問題点を一瞬にして読み取れることを意識して書いている。いかにも教科書や勉強といったものでなく、笑い話・コント的なものも、たまには*3、いいかなって? 少なくとも頭休めになりません? えっ、頭休めと言うよりは、脳ミソが崩れるって? うーん、医薬品開発には、症状を有するモデルも必要ですから。脳軟化症モデルなんて、どうかな? すいません、冗談です。


では、また。See you next time on the WEB.


【徒然後記】
室間差圧をフィーチャーした本話、たまたま新型コロナウイルスがまん延する中での掲載となってしまった(元原稿の執筆は昨年内です)。当たり前だが、新型コロナウイルスが発生することなど予期しようもなく、また感染者の隔離を意識したつもりもない。ただ、ウイルスからの隔離となれば、ご存知のように陰圧管理の封じ込めとなり、いみじくも室間差圧が思い浮かばされることになってしまった。製造所における封じ込め(containment)は物質としての製品リーク回避のためと言えるが、ウイルス感染者の隔離(isolation)は当事者にとっては辛い以外の何物でもない。一方で、無菌医薬品や再生医療等製品の場合の菌・ウイルス対策については製品への汚染回避として、今回の感染者隔離や封じ込めとは逆パターンのクリーンエアーによる陽圧管理になる。予期せぬ、たまたまの事態での掲載になってしまったが、いずれにせよ、こんな事態は早く終息してほしいと願う。

*1:室間差圧(陰陽圧)による構造設備のレイアウトについては、その取り扱い品
   目と作業内容のリスクアセスメントに基づき各種のパターンが存在し、絶対的
   なものはない。本話では一例として記していることにご留意いただきたい。

*2:(天の声)何のこっちゃ!意味が分からん。
   (筆者)お前、なんでここに出てくる。某社オンライン版限定のキャラじゃな
       かったのか?
   (天の声)ふん、そんなこと言った覚えはないが。
   (筆者)勝手に出てくるな。
   (天の声)大きなお世話じゃ。そもそも私は神じゃぞ。しかも1年間のブラン
        クを物ともせずに出てきてやったのじゃぞ。感謝しなさい。
   (天の声)そもそも「バレンタインデーにピッタリの室間差圧」とは、どうい
        う意味じゃ。
   (筆者)意味はありません。たまたま本話の掲載日が2月14日だということで
       の洒落です。
   (天の声)洒落にもなっておらんじゃろーが。進歩のない奴じゃ。
   (筆者)それこそ、いらんお世話じゃ。

*3:(天の声)「たまには」だと!? いつもじゃろーに。このバカたれが!
   (筆者)突然出てきて、しかも「バカたれ」はないでしょうに。黙っててくれ
       ます!?
   (天の声)神に向かって何という口のきき方。久々に天罰!!!
   (筆者)ギャーーー!

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古田 ドマ

古田 ドマ

GMDPエッセイスト

2018年に薬業関係の某有名誌のオンライン版にコラムニストとして忽然と登場。製薬業界の内部事情に詳しく、特に監査業務に造詣が深いことから、医薬品の品質保証業務に従事していたものと推測されるが、その正体は不明。毒舌的な内容が多いものの、ヒューマニズムを掻き立てる心温まる物語的な内容のものもあり、歯に衣着せぬ物言いは実務担当者にとっての心の声を反映した本音トークとも言える。

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