2020.01.24.FRI

品質システム(PQS)

医薬品品質保証こぼれ話【第12回】

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執筆者:浅井 俊一

医薬品品質保証こぼれ話【第11回】

医薬品品質保証こぼれ話

承認事項逸脱のリスクと回避の考え方

医薬品製造販売承認書(以下、「承認書」)と製造記録の齟齬の問題が発生し、無通告査察が行われるようになり2年前後の時間が経過したと思いますが、その後も承認書記載と異なる製造方法で製造されていた事案が確認され、大規模な回収が行われるといった事例が見られます。承認書と記録の齟齬、すなわち、承認事項逸脱(以下、「逸脱」)の対象となる事項は製造記録や試験記録だけではなく、例えば、承認書に記載のない添加剤の使用や、承認書に記載のない保管場所での原材料や製品の保管など、様々なケースが考えられます。ただ、製造方法や試験方法の逸脱は、経済損失や企業の信用失墜という側面だけではなく、医薬品の品質に直接影響するという点において、ほかのケースと異なり極めて重大です。本稿では、この観点に立ち、特に製造記録の承認書逸脱について考察を行い、その回避策に触れたいと考えます。

承認書に規定される重要な事項としては、①製剤の成分分量、②製造方法と試験方法、③有効成分含量の規格、④原薬の製造所と製造方法、そのほか、⑤用法用量、⑥効能効果などがあります。このうち、製造と品質管理すなわち、製剤の品質保証に直接関係する事項は、①、②、③および④であり、今回はこれらの事項を対象に話を進めます。

先ず、製造方法の承認事項逸脱はなぜ起きるのか?という点について考えてみたいと思います。
医薬品を製造する場合、一番重要なことは、有効成分含量が、承認書に規定されている規格に適合することですが、そのためには正しい製造方法により製造される必要があります。この正しい製造方法とは、基本的に、承認書に記載されている手順と整合する形で作成された標準作業手順書(SOP)、に規定されている手順と条件を指しますが、時に、SOPの規定どおりに行うと上手く調製(製造)できない場合が生じます。例えば、錠剤を製造する場合、打錠前の顆粒の調製に際し、いつもと少し異なる粘度や含水率ものができ、そのまま打錠工程に進むと打錠が適正に行えないといったことが起きます。

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浅井 俊一

浅井 俊一

奈良県出身。1974年ロート製薬入社。
品質管理、薬事、品質保証の各業務に、それぞれ7年,15年,16年間従事。
2012年退職後、2018年まで中国の原薬工場および日本の受託企業において、改善指導や人材育成を含む品質保証全般の業務に携わる。
中国での活動に、「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、CFDA主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
主な取り組みテーマは、「製薬工場のヒューマンエラー対策」、「中国等海外原薬の品質と安定供給の確保」、「GMP記録の信頼性確保」など。
また、人材育成に関連して、組織コミュニケーションの活性化、作業者のモチベーションの確保などにも取り組む。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー 薬剤師。