2020.01.17.FRI

CSV

ラボにおけるERESとCSV【第60回】

この記事を印刷する

執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第59回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(30)


■関連セミナー
FDA指摘400件に学ぶラボと製造のデータインテグリティ実務対応
~ガイダンスを読むだけではわからない現場レベルの対応とは~

 

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■ NN社 2018/3/2 483 
施設:製剤工場


Observation 1
Observation 3 
最新の分析法バリデーションの提示を要求したところ、1991年と1997年に実施された分析法バリデーションが提示された。そのバリデーションはこのサイトで実施されたものではないとのことであった。バリデーションのプロトコルを提示するよう要求したがプロトコルは示されず、昔のことであるので判らなくなっていると説明された。

★解説:
バリデーション記録を維持すべき期間を認識しておく必要がある。
  •    分析法バリデーション、洗浄バリデーション
   ◆ そのバリデーションに基づいた最終ロットの有効期限まで維持が必要
   ◆ 理由:苦情処理を行う場合、そのロットに係わったバリデーションが
     適切であったか確認する
  •    機器/システムのバリデーション
   ◆ その機器/システムが関与した最終ロットの有効期限まで維持が必要
   ◆ 理由:苦情処理を行う場合、そのロットに係わった製造システムや品
     質管理システムが適切であったかどうかをバリデーション記録で確認する

本Observationは「分析法バリデーションのプロトコルが提示されなかったので、どのように分析法をバリデーションしたのが確認できず現在の分析方法が妥当であるか証明できない」との指摘であろうと思われる。

では、コンピュータ化システムバリデーション(CSV)の場合にはどのような記録を維持すればよいのであろうか?
GMP省令第2条第5項に規定されたバリデーションを要約すると以下のようになる。
 バリデーションとは;
 製造所の
  •    構造設備
  •    製造手順等(手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法)
が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることをいう
つまり、バリデーションとは
  •    何が期待されており
  •    その期待が満たされていることを
  •    どのように検証したか
を文書化しそれを記録として維持することである。

CSVの用語で言うなら以下の記録が必須である。
 ①    ユーザー要求仕様(URS:User Requirement Specification)
 ②    テストスクリプト(テストステップを記載したテスト手順書)
 ③    テスト記録(テストステップ毎のテスト実施記録)
これら①②③を一覧表にまとめたトレーサビリティマトリクス(TM:Traceability Matrix)があると、URSの各項目がバリデートされていることを簡潔に説明できるので、TMも記録として維持することを強くお薦めする。TMの書式例と説明は連載第6回を参照されたい。

なお、CSVにおける「開発計画書」に関する質問がよくあるので以下に説明しておく。

厚労省「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」(2010/10/21)に「開発計画書」が以下のように規定されている。
  •    システム開発ごとに作成
  •    原則として記載する事項
   ◆ 開発目的
   ◆ 開発条件
   ◆ 開発体制
     ー 組織
     ー 責任者
     ー 開発責任者  検証責任者
   ◆ 開発スケジュール

一方、「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」案文へのパブリックコメントに対して当局は以下の様に回答している。
 パブリックコメント
  •    開発計画書とバリデーション計画書は1つの文書にまとめてよいか
  •    バリデーション計画書の中に開発計画書の要件が記載されていれば
    開発計画書を作成しなくてもよいか
当局回答(No.54、148)
  •    1つの文書にまとめてよい
  •    科学的に妥当であれば、本ガイドライン以外の方法も容認している
    http://www.it-asso.com/gxp/regulations/pubcom-kekka_101021.pdf

諸外国においてはGAMP4やGAMP5を参考にしてCSVを実施しているが、GAMPには開発計画書は記載されていない。すなわち、諸外国においてはバリデーション文書として開発計画書を作成していないが、査察で指摘されることはない。CSVは形式にとらわれることなく、合理的に実施するのが重要である。

 

1 / 2ページ

望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。