2019.12.06.FRI

品質システム(PQS)

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第27回】

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執筆者:中川原 愼也

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第26回】

再発防止


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GMPヒューマンエラー防止のための文書管理
 

1.掘り起こし
 きれいなグランドを想像してほしい。しかし、雨や風が強い日の翌日には、小石などがでてきて、グランドの石拾いをしなくてはならない状況である。グランドの整備には、予算もなく経費をかけていないが、大きな事故もないので、大会運営者は、大会の前後で、役員による石拾いやトンボをかけるなどをし、整備している。医薬品製造所ならば、毎日の整備が始業前の点検であり、大会前の整備が定期の点検であると思う。しかし、グランドの下には瓦礫があることが判明し、小石などが出てくるのもこれが原因だとしたら、どう対応すべきであろうか。瓦礫を撤去するためには、全面的にグランドを掘り起こし撤去しなければならない。グランドが使用できない期間が生じ、その対応も必要である。その都度の整備も役員の負担であり、不満も出ている。GMPはハードとソフトのバランスである。グランドを掘り起こし、根本の原因を除くのがベストな改善策ではある。しかし、始業前点検や定期点検の徹底を決して否定するものではない。しかし、点検等の作業が負担になる点は否めない。どちらを選択するかは、経営陣の責任である。
 グランドを掘り起こして整備するなら、最近は観客も増えたので、観客席を設けようなど夢が膨らむこともある。製造所ならば、生産性を上げるために、スケールアップやラインの増設の話まで、展開することであろう。GMPとしては、変更管理として、スケールアップやラインの増設により品質面に影響する点がないか、薬事的な手続きなど影響する範囲を考えることになるが、この点は、その製薬企業の将来構想であり、収益など経営面で必要なことを考えることになる。GMPが厳しくなったから必ず設備を変えなくてはならないとは限らない。しかし、その維持管理には、人手がかかることになる。どこまで、人手をかけるか、最新の設備で、人手を減らすのかは、経営陣が考えなくてはならない。その上で、企業ならば採算性も検討されるだろう。グランドを掘り起こすのか、プラスして観客席まで設けるか、通常の点検で済ますのかを考えたことを記録にすることが、GMPとして、品質システムとして求められている。
 グランドの整備の問題の例えは、設備の変更の話ではない。GMP文書等の管理において、文書も増えデータインテグリティの対策が必要とされる中、紙ベースでは、保管場所の問題もあり、バックアップもされていないため、文書管理システムを導入しようか検討されるところも多い。21 CFR Part 11対応のシステムを入れることになろうが、現存の手順書や記録の体制を全面的に見直すか、しかし、全面的に見直す為には、その見直しに労力や時間がかかり、簡単にシステムに移行できない。現状の体制では、システムに移行するには無理があるなど、課題も多い。過去のすべての文書をシステムに移行するのは無理である。文書のトレースなど文書体系を見直さないとシステムに合わないことも生じるであろう。文書管理システムに取り組み方も、それぞれの状況に応じて行うしかなく、これが正解はない。影響する範囲を考え、リスク分析をし、リスクを低減できるよう対策を立てる中で、しっかりとスケジュール管理をしながら、遅滞なく行うことが重要である。そのためには、将来像としてどのような管理とするか目標を明確にすることも必要であろう。ただし、すべてが完ぺきなものを最初から作ることは無理であろう。運用しながら修正し、よりよいものにすることが求められる。

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中川原 愼也

中川原 愼也

高田製薬株式会社生産本部品質統括部門品質統括部長
1984年神奈川県庁に入庁し、1997年国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院の前身)でGMP研修を受講後、薬務課及び小田原保健所等で医薬品等の製造販売業、製造業の許認可、審査、指導を主にGMP・GQPリーダー査察官として16年にわたり活躍した。その間、MRA(日・欧州共同体相互承認協定)の締結の際のEUの調査、2005年の製造販売承認制度の施行に携わり、PIC/S加盟にあたり、厚生労働省の委員等委嘱を受け、次の活動に参加した。
平成20、21年度 GMP/QMS調査・監視指導整合性検討会委員
平成21、22年度 厚生労働科学研究~GMP査察手法の国際整合性確保に関する研究
2012年に神奈川県庁を退職し、医薬品原薬輸入商社であるコーア商事株式会社で、品質保証部長として国内管理人としてのGQP取決め及び医薬品製造業としての GMP管理を統括した。2015年から株式会社ファーマプランニングにて、GxPコンサルタント業務に携わり、2017年高田製薬株式会社に入社、4月より同大宮工場製造管理者に就任。