2019.11.08.FRI

品質システム(PQS)

Quality cultureに関する一考察

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執筆者:小山 靖人

ICH Q10の実践という提言


※執筆者によるセミナー開催
医薬品GMP理解の第一歩
 

1.はじめに

 昨今、品質保証の分野ではQuality cultureの醸成ということが一つの課題となっています。さる10月24日に日本PDA製薬学会QAQC委員会主催の「Quality cultureセミナー」(以下、セミナー)が開催され、出席しました。講演を拝聴しながら考えるところが多々あり、Quality cultureを巡る今後の皆様の議論のご参考となることを期待して、私見を述べさせていただきたいと思います。
セミナーでは委員諸氏のこれまでの真剣なご検討をうかがうことができ、全体として充実したものであったことを申し添えます。

2.Quality cultureとは何か?

 これまでいろいろな場でQuality cultureが論じられてきていますが、筆者にとって、そもそもQuality cultureとは何か?という議論が不十分であるように感じてきました。誰もがQuality cultureを語りながら、言葉だけが独り歩きし、それは何かと問うてみると十分に答えられない、という状況があるのではないでしょうか。
 Quality cultureといいますと、「大きな声で挨拶しよう」、「問題はすぐに報告しよう」、「品質はみんなの責任」から始まり、「リーダーシップとビジョン」、「組織運営の透明性」などと説明されるのですが、組織のQuality cultureビジョンを打ち立て、Quality cultureを醸成してゆこうにも、このような標語やコンセプトだけではQuality cultureのあるべき姿が明確ではなく、何をすればよいのかよくわからないのです。
 セミナーでは、Quality cultureにはいろいろな側面があり、受け取り方は様々なので、具体的なQuality cultureについては各々の企業や組織の実態に即して個々で考えてください、ということでしたが、筆者としては委員会の考えるQuality cultureを明確に提示していただきたかったという思いを禁じえませんでした。
 また、これまでのQuality cultureに関する議論は、Qualityというよりはむしろ、産業界全般における企業culture、企業の組織風土一般の改善に関するものも多く、それはそれで非常に大切なのですが、私たちは医薬品関連の企業に勤務しているのですから、さらに突っ込んで医薬品の品質に特化した議論が必要なのではないかと、常々考えてきました。今回のセミナーでも、特に医薬品あるいは品質に直接かかわらないプレゼンテーションが半数近くを占めており、少々物足りなく感じたところです。

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小山 靖人

小山 靖人

小山ファーマコンサルティング代表
シオノギファーマ株式会社品質保証部特任次長、NPO-QAセンター顧問

1979年藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬株式会社)入社、責任者として無菌製剤の製剤化研究、並びにGMP及び治験薬GMP全般に関する品質保証業務に従事。2003年日本イーライリリー株式会社に入社、開発QAマネージャーを担当。2007年塩野義製薬株式会社に入社し、金ケ崎工場の品質部門長を経て、本社部門の品質保証部にてGQPに関する製造所管理業務に従事。2019年シオノギファーマ株式会社に移動し品質保証部GQP部門勤務として現在に至るとともに、同年小山ファーマコンサルティングを起業。
この間、厚生労働科学研究「医薬品・医薬部外品製剤GMP指針」を座長として取りまとめ、厚生労働省より発出 (2003~2006年、主任研究官 檜山行雄先生)。厚生労働省の「PIC/Sガイドライン比較分析ワーキングチーム」に参加(2010~2011年)、また厚生労働行政推進調査事業「GDP国際整合化研究班」に参画し(2016年~現在)、GDPガイドライン発出に関与。日本薬剤学会「製剤の達人」受賞(2011年)、薬剤師、日本PDA製薬学会代議員。