2019.08.23.FRI

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ラボにおけるERESとCSV【第55回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第53回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(25)


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7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
II社 2017/11/17 483
施設:原薬工場


★解説:
本483に対し2018/7/17付けでウォーニングレターが発出され、データインテグリティの是正が求められた。

ウォーニングレターの要旨:
ラボにおけるテストの完全な記録を維持できておらず、原薬が規定の規格と標準に適合していることを保証できない。
貴社は以下のことを保証出来ていない。
•    原薬をテストした完全な記録がバッチ記録に含まれている
•    原薬のテストデータが品質部門によりレビューされている


Observation 1
QCラボの電子クロマトグラムを調査したところ、自動分析と手動分析が報告されておらず、規定に従った調査がなされていなかった。さらに、正式分析の前に試し分析がなされており、これも正式な記録に含まれていなかった。

★解説:
ここでは以下のことが指摘されている。
①   報告されていない自動分析がある。
  これは、良い結果がでるまで繰り返し測定をしており、良い結果しかバッチ記録
  に記載されていない。つまり不都合な結果を隠蔽しており、良いとこ取りをして
  いると指摘している。
②   手動分析をしているが、そのことを記録しておらずまた手動分析の結果をレ
  ビューしていない。
  手動分析つまり再解析を測定者の独断で実施しており、測定者が独断で実施した
  手動分析(再解析)を誰もレビューしていない。つまり、良い結果となるように
  測定者が都合のよい手動分析(再解析)をした可能性があると指摘している。
  データインテグリティを保証するための手動分析(再解析)の要件は以下のとお
  りである。
  •    手動分析(再解析)の開始基準を規定する
  •    手動分析(再解析)を実施したときはその理由を記録する
  •    初回の分析データの削除厳禁
  •    データレビューにおいて手動分析(再解析)の正当性を電子記録により確認
③   試し分析のデータがバッチ記録に記載されていない
  これは、HPLCの試験前調整分析いわゆるプレコンディショニングの試し打ちに
  関する指摘であると思われる。プレコンディショニングはHPLCに必要なもので
  あるが、良いとこ取りの隠れ蓑として実施されることがあり得る。従って、正当
  な理由のあるプレコンディショニングを実施したことを証明できる必要がある。
  しかし、プレコンディショニングの記録もなくプレコンディショニングの内容を
  正当化する記録もないとの指摘であると考えられる。HPLCプレコンディショニ
  ングにおける試し打ちを隠れ蓑にして、「合格するまでテスト」(Testing into
   Compliance)、すなわち良いとこ取りをしているのではないかと疑われてい
  る。良いとこ取りをしていることが判明すると、信頼のない試験結果に基づき出
  荷判定を継続してきたとみなされてしまう。良いとこ取りをしているとの疑いを
  かけられないよう、MHRA(英国医薬品庁)およびFDAは業界に対し以下の指針
  を示している。
  •    試し打ちの手順を規定すること
  •    試し打ちデータはすべて保存し報告すること
  •    試し打ちに製品サンプルは使用しないこと
  HPLCプレコンディショニングにおける試し打ちに対するMHRAとFDAの指針を
  連載第15回第22回において解説したので参照されたい。
 

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。