2019.08.02.FRI

品質システム(PQS)

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第23回】

この記事を印刷する

執筆者:中川原 愼也

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第22回】

教育訓練

1.実効性の評価
 教育訓練において、実効性評価が求められている。GMP事例集(2013年版)GMP19-4(教育訓練)に次のような記載がある。
「実効性の評価」とは、製造業者等として、教育訓練の内容が的確に実務に反映されていることを、例えば模擬製造等により評価することをいう。
実効性評価とは、PDCAサイクルのcheck(評価)であり、教育システムとしての評価である。教育訓練が実際の作業において有効であるかであり、教育の方法、内容、時間、頻度、教育を受けた者の理解度の評価方法及びその指導者自身への評価であり、教育訓練のシステムとしての評価である。


 では、この教育訓練を受けた者が10人おり、そのうち1人が作業のミスをし、逸脱(ヒューマンエラー)を起こしたとき、この教育の実効性はなかったといえるであろうか。実効性評価の判定基準を設けることは困難である。それは、すべての受講者に対して、100%の教育訓練は存在しないからである。人間は一人一人異なっており、機械ではない。装置は点検校正やバリデーションにより、その効果を判定できるが、人間は、個々の性格や得意、不得意があり、同じ人であっても、その時の体調等により作業も一律とはならない。学校等での勉強に得意、不得意があるように、一つの教育訓練方法で万能なものは存在するはずがない。だからこそ、人材としての才能を見極め、適材適所の人事が必要なことは、GMPにおいても変わらない。その技能(スキル)を見極め、評価することがマネジメントである。
教育訓練において、重要なことは、各プロセスにおいて、必要な技能(スキル)を明確にして、そのプロセスのプロフェッショナルを養成することにある。その養成のための指導者は、そのプロセスを十分に理解し、各作業者に合わせた教育指導できる能力を有していなければならない。つまり、その指導者に対する評価を行うことが実効性の評価となる。教育訓練指導者に対する認定制度は必須とすべきである。しかし、すべてのプロセスに必ず必要ではない。それは、その製造所における重要な工程であり、特別な技能がいるプロセスである。供給者管理における監査員や自己点検における点検者は、認定制度とすべきである。しかし、その監査のポイントは、監査員が一律な見方をするのではなく、得意な技術を持っていることが重要である。コンピュータに詳しい者、微生物に詳しい者、水の管理に詳しい者、空調管理に詳しい者、品質システムに詳しい者など、多種多様であっていい。それは、品質の維持、管理の方法も多種多様であるからである。自分自身がこれまで行ってきた管理方法と他の製造所の管理方法の違いを知ることも教育訓練の一つとなる。実際、私自身も、多くの製造所に査察し、いろいろと議論しながら、各製造所のGMP管理を学んできた。だからこそ、監査員は、経験が重要であり、多面的な見方ができる能力が必要である。
 1つのヒューマンエラーがあったからと、教育訓練の実効性がなかったと評価すべきでない。ただし、そのエラーを起こした作業者に対しての評価はどのような結果であったかは確認すべきである。その教育訓練により、スキルの習得ができていないと判断されたのに、作業についたのなら、その作業にあたらせたことが問題である。スキルを習得したと判断したのなら、その判断方法が悪かったのかもしれない。その時の教育訓練の記録について、分析することが必要である。安易に教育訓練の不足と結論すべきではない。

1 / 2ページ

中川原 愼也

中川原 愼也

高田製薬株式会社生産本部品質統括部門品質統括部長
1984年神奈川県庁に入庁し、1997年国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院の前身)でGMP研修を受講後、薬務課及び小田原保健所等で医薬品等の製造販売業、製造業の許認可、審査、指導を主にGMP・GQPリーダー査察官として16年にわたり活躍した。その間、MRA(日・欧州共同体相互承認協定)の締結の際のEUの調査、2005年の製造販売承認制度の施行に携わり、PIC/S加盟にあたり、厚生労働省の委員等委嘱を受け、次の活動に参加した。
平成20、21年度 GMP/QMS調査・監視指導整合性検討会委員
平成21、22年度 厚生労働科学研究~GMP査察手法の国際整合性確保に関する研究
2012年に神奈川県庁を退職し、医薬品原薬輸入商社であるコーア商事株式会社で、品質保証部長として国内管理人としてのGQP取決め及び医薬品製造業としての GMP管理を統括した。2015年から株式会社ファーマプランニングにて、GxPコンサルタント業務に携わり、2017年高田製薬株式会社に入社、4月より同大宮工場製造管理者に就任。