2019.07.26.FRI

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ラボにおけるERESとCSV【第54回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第53回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(24)


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7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
HH社 2017/11/10 483(前号より続き)
施設:製剤・原薬工場


Observation 2
ラボにおけるコンピュータや電子記録に対する管理が不十分である。
HPLC、GC、UV、FTIRはネットワーク化されたCDS(クロマトデータシステム)のソフトウェア、あるいはスタンドアローンCDSのソフトウェアにより管理されている。

①   総ての電子記録を品質部門が統計的にレビューするようなデータインテグリ
  ティの仕組みがなく、QCラボで生成されたクロマトグラフィ生データが完
  全であり、一貫性があり、正確であることを保証できていない。さらに、
  製品リリーステストに関するQC分析試験のデータシートをレビューする際、
  電子生データをレビューするようQCが規定していない。UVとHPLCの電子
  生データを調査したところ、テストというサンプル名のもとになされた試
  し分析や、規格外となった結果を分析者が報告していない事例が確認された。

★解説:
•    HPLC、GC、UV、FTIRのオリジナルデータはダイナミックであるので、電
  子記録を維持しなければならない。またデータレビューはプリントアウトで
  はなく、監査証跡を含む電子記録により行わなければならない。
•    テストというサンプル名による隠れ分析が発覚し指摘されている。
•    OOS処理せずに良いとこ取りの繰り返し分析をしているのが発覚し指摘され
  ている。

②   コンピュータシステムの管理者権限がQC職員にアサインされている。これら
  のQC職員の上司はQCマネージャであり、QC職員は生成された電子記録に直
  接利害を持つ。この管理者権限は、CDSやその他の測定ソフトウェアにおい
  て、アカウントの生成・削除、データバックアップ、生データアクセスの権
  限を持つ。

★解説:
システム管理者権限を持っていると、データや監査証跡の削除、時刻の変更、権限設定の変更などを行うことができ、不都合なデータの隠蔽や改ざんが出来てしまう。従って、電子記録の生成・レビュー・承認に係わるQC職員にシステム管理者権限を与えてはいけない。

しかし、組織が小さい場合には電子記録の生成・レビュー・承認に係わるQC職員にシステム管理者権限を与えざるを得ない場合がある。そのような場合の対応方法がMHRA(英国医薬品庁)から以下の様に提案されている。また、PIC/Sの査察官むけデータインテグリティガイダンス(Draft-3 §9.3)にも同様の記載がある。
     GMP業務とシステム管理業務の両方を行う個人に、異なる権限の2つのア
   カウントを付与し、アカウントを使い分けることにより対応する
     たとえば
▼   測定時は測定者権限アカウント、システム管理を行う場合はシステム
  管理者権限アカウントでログインする
▼   システム管理者権限アカウントには測定権限を与えない
▼   測定者権限アカウントにはシステム管理権限を与えない
▼   システム管理者権限アカウントにより行われたすべての変更は可視化
  しておき、品質システムにおいて承認する(システム管理者権限アカ
  ウントの監査証跡を参照し、不適切な操作がなされていないことをQA
  等が確認し承認する)
    詳細は連載第13回を参照されたい。

③   適格性評価待ちの新しい電子天秤がラボに置かれていた。この天秤の日時変
  更機能はパスワード保護されておらず、QC職員が操作できる状態であった。

★解説:
電子天秤の日時をQC職員が変更できると、自らのテストデータを改ざんできるので指摘を受ける。ただし、指摘された電子天秤は適格性評価待ちとのことであり、まだ実使用されていないので指摘対象外のはずである。おそらく、「適格性評価未実施のため使用禁止」のような表示がなく、実使用される危険性があったので指摘にいたったと想像する。

④   HPLCおよびGCのクロマトグラムを手動積分してよい条件が既定されていない。

★解説:
FDAのデータインテグリティガイダンス(正式版)に以下の記載がある。

14  クロマトグラフィを再処理(手動解析/再解析)した場合、その最終結果だけ
  を保存することでよいか?
•    分析法は正確であること
•    再処理が頻繁に必要となるような分析法であってはならない
•    クロマトグラフィを再処理する場合、手順書を遵守して再処理を行うこと
•    クロマトグラフィを再処理した結果は保存しレビューすること
(§211.160、§211.165(c)、§211.194(a)(4)、§212.60(a)を参照)

クロマトグラムの手動解析/再解析手順書には、手動解析/再解析を開始してよい条件を既定しておく必要がある。また、データレビューにおいて、手動解析/再解析の正当性を電子記録により評価し記録しておく必要がある。

FDAは安定した分析法による自動分析を期待している。手動解析/再解析があると、都合のよいデータを得ようとしているのではないかと疑う。従って、手動解析/再解析の結果はクロマト画面を拡大するなどして手動解析/再解析の正当性を精査する必要がある。
 

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。