2019.05.31.FRI

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ラボにおけるERESとCSV【第52回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第51回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(22)

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
GG社 2017/11/2 483
施設:製剤工場


Observation 1
 •  OOS(Out of Specification:規格外)が発生したが、ピペット操作によるラボ
  エラーが原因であると分析者との会話により判断した。1ヶ月後にサンプル調製
  しなおし、規格内のテスト結果を得た。
◆ はじめの調製液を再テストせずに、OOSを棄却したのは妥当ではない
 •  OOSが発生したが、HPLCの注入エラーが原因で「あろう」と判断した。1ヶ月
  後にサンプル調製しなおし、規格内のテスト結果を得た。
◆ はじめの調製液を再テストせずに、注入エラーが原因であるとしてOOSを
棄却したのは妥当ではない。
 •  OOSが発生したが、標準液の調製不良が原因で「あろう」と判断した。標準液
  の調製をやりなおしたうえで、サンプル調製をやりなおし、規格内のテスト結
  果を得た。
◆ 調製しなおした標準液によりはじめの調製液を再テストしなかったのは、OOS原因調査として不適切である。

★解説:
OOSが発生した場合の処理が不適切であると、不都合事象の隠蔽や良いとこ取り操作を疑われデータインテグリティ指摘を受けてしまう。FDAは「Guidance for Industry, Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production」においてOOS処理のガイダンスを示している。このガイダンスにはその根拠法令(連邦食品・医薬品・化粧品法、cGMP)も記載されている。またFDAのOOSガイダンスを補足すべくMHRA(英国医薬品庁)が発出したOOS/OOTガイダンス「Out of Specification & Out of Trend Investigations」は、フローチャートにより、具体的な処理ステップを表示しており判りやすい。これらのガイダンスを参照し、適切なOOS処理手順を策定するとよい。FDAガイダンスの概要を図25に示す。また、ファームテクジャパン2018年2月号においてこのFDAガイダンスを紹介したので参照されたい。

Observation 2
分析者が異常を認識したので、テストシーケンスを中断し再測定していた。手順書に従ったOOS処理やラボエラー処理がなされていない。

★解説:
1)分析者が異常を認識したのでテストシーケンスを中断している。中断したとい
 うことは、異常を認識したテストのデータを保存していないということである。
 つまり、不都合を隠蔽して良いとこ取りをしたと判断され指摘されたと考えら
 れる。
 同様の指摘を以下に紹介する。
◆   2016/7/22 日本
  結果を保存することなく、分析をおこなったり結果をプレビューすること
  ができる
◆   2017/4/28 インド
  分析者は
✔ プレビューウィンドウからHPLCとGCの試し自動分析を実施している
✔ 試し自動分析を保存していない

2)OOS処理やラボエラー処理を適切に実施しないと、良いとこ取りをしていると
 指摘されかねない。従ってこれらの適切な処理方法をSOPに規定しておく必要が
 ある。SOPの策定にあたっては下記ガイダンスを参照するとよい。
✔ FDA「Guidance for Industry, Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Production」
https://www.fda.gov/downloads/drugs/guidances/ucm070287.pdf
✔  MHRA「Out of Specification & Out of Trend Investigations」
https://mhrainspectorate.blog.gov.uk/2018/03/02/out-of-specification-guidance/

Observation 3
1.    HPLC、UV-VISによるテストにおいて;
A)    QCラボにおいて生成されたクロマト生データが完璧で首尾一貫してお
  り正確であることを保証するよう、全ての電子記録をレビューするデー
  タインテグリティ対応規定がない。
①    製品リリースに係わるQCの分析データシートをレビューする際、
  QCは電子生データをレビューしていない。
②    生データを抜き取りレビューしているとのことであったが、
  レビュー工程は手順化されていない。
B)    コンピュータ化システムのシステム管理者権限を、データに係わるQC
  職員に与えている
•    システム管理者はアカウントの付与・削除、データバックアップ、
  生データアクセスができる。
C)    HPLCおよびGCの手動解析を行って良い条件や要件が規定されていない

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。