2015.10.22.THU

微生物・滅菌

医薬品,医療機器滅菌の新しいトレンド“放射線滅菌”【第4回】

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執筆者:山口 透

医薬品,医療機器滅菌の新しいトレンド“放射線滅菌”【第3回】

第4回 放射線滅菌の特徴とメリット、デメリット

 現在、放射線滅菌は線源としてガンマ線、及び電子線が利用されています。どちらも電離放射線といって、照射された物質を励起、イオン化する作用があります。その作用によって殺菌効果が生じているのですが、同時に製品の材質へ影響を与える場合があります。ただ、現在の技術では全く問題が発生せず、全ての製品に利用できる完全滅菌法は存在しないので、それぞれの滅菌法の特徴を把握した上で、より確実で安全な滅菌法を選定する必要があります。本稿では、放射線滅菌を利用した場合のメリット、デメリットを解説し、また、デメリットに対し、技術的にどのように対応すれば良いかについても説明します。

 最初に放射線について少し説明します。放射線は表11のような種類がありますが、滅菌に利用されているのはエックス線、ガンマ線、電子線です。
 
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 このような放射線は電離放射線と言って、表1に示す通り、光と同じような電磁波と粒子が高速に飛んでいる粒子線に分かれます。電子線は高速の電子を電気的に発生させた粒子線で、ガンマ線はコバルト60などの放射性同位元素から発生する電磁波です。そして、どちらも放射線の持つエネルギーによって物質に励起→イオン化(電離)を発生させます。物質への透過力は電磁波であるガンマ線の方が優れていますが、直接電子を作用させる電子線の方は処理時間が早く、また大量に処理ができることから滅菌または工業利用が進んでいます。
 放射線に殺菌作用があることは、1895年にRoentgenがエックス線を発見した後、多くの科学者が研究を開始し確認してきました。2) 放射線滅菌は放射線を対象製品に照射することで製品を無菌化する方法で、現在、放射線は無菌医療用品の滅菌処理に広く利用されています。国内では、電子線は無菌医療機器、特に注射器などの汎用滅菌ディスポーザブル医療機器に広く利用されていますが、医薬品ではまだまだ承認前例が少ない状態です。放射線滅菌の産業界への試みは、米国エチコン社において腸線縫合糸の滅菌処理に電子線が使用され、その後、ガンマ線による注射針、注射筒の滅菌が開始されました。そして、世界各国では、多くのガンマ線照射施設、電子線照射施設が設置され多種多様な製品の滅菌が行われています。また、食品などの照射にも利用されています。

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山口 透

山口 透

コンサルタント(滅菌、微生物管理、放射線改質)
元日本電子照射サービス(株) つくばセンター 技術担当部長
1955年生、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社にて医薬品、医療機器、医薬部外品、化粧品の開発(微生物関連、試験開発及びEOG滅菌バリデーション)、品質保証、薬事業務に従事し、2001年より日本電子照射サービス株式会社にて、電子線による改質、滅菌技術の研究開発、及び医薬品、医療機器等の電子線滅菌導入に係る滅菌条件設定、微生物、理化学受託試験を担当、2015年退職後、コンサルタント業(滅菌、微生物管理、放射線改質)開始、現在に至る。
元ISO TC198 WG8国内検討委員、 元ISO TC85 WG3 国内検討委員、元各JIS化検討委員、日本防菌防黴学会、高分子学会会員。