2019.04.26.FRI

その他レギュレーション関連

ベトナムにおけるM&Aの法規制【第1回】

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執筆者:石川 賢吾

【第1回】ベトナムにおけるM&Aの手法とDDの留意点


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~M&Aの実務上の留意点も含めて~

 

はじめに
 ベトナムへの進出を考えるにあたっては、自社の子会社として現地法人を設立する以外にも、現地ベトナム企業に対して出資を行い、または株式(持分)の譲渡を受けてその経営権を取得するといったM&Aによる進出が検討されることも少なくありません。
 本連載では、ベトナムへの進出において実務上利用されているM&Aの手法を確認したうえで、その実行にあたってベトナム法上必要となる手続の概要、M&Aに伴う株式(持分)譲渡契約や株主(社員)間契約の締結に際して実務上留意すべき点について解説いたします。
 

1 ベトナムにおけるM&Aの手法
 まず、ベトナムにおけるM&Aの手法としては、①株式(持分)取得、②資産譲渡、③合併・会社分割といった方法が考えられます。この点、③合併・会社分割については、ベトナム企業法に根拠規定があるものの、実例に乏しく、実務上はあまり利用されていません。
上記①及び②の各手法の特徴は以下のとおりです。
 ① 株式(持分)取得
  ・ 現地ベトナム企業(対象会社)の株式を取得することから、対象会社が保有
    している個別の取引契約や資産の承継手続を個々に行う必要がなく、手続が
    比較的簡便である。
  ・ 対象会社の潜在債務を引き継ぐおそれがある。
 ② 資産譲渡
  ・ 対象会社が保有する個別の取引契約や資産の承継手続を個々に行う必要があ
    り、手続が煩雑となる。
  ・ 必要な資産を選別したうえで承継を受けることにより、不必要な資産や潜在
    債務の遮断が可能である。
 上記のとおり株式(持分)取得と資産譲渡にはそれぞれ長所短所がありますが、実務上は、手続が比較的簡便であること、潜在債務等のリスクについては対象会社に対するデューディリジェンス(DD)を実施して対応することをふまえて、①株式(持分)取得の手法が選択されることが一般的です。

 なお、対象会社が行っている事業の一部のみを取得したいといった場合には、株式(持分)取得に先立って、対象会社側において新会社を設立のうえ、一部事業を当該新会社に資産譲渡し、日本側は当該新会社の株式(持分)を取得するといった手法(上記①と②の組合せ)をとることもあります。
 この場合、単に対象会社から一部事業の資産譲渡(上記②)を受けるよりも、
 ・ 資産譲渡に伴う個別の資産の譲渡といった煩雑な手続を対象会社側に負担さ
   せる点、
 ・ 新会社の株式(持分)取得時点(すなわち株式(持分)取得に伴う対価の支
   払い時点)において、必要な資産、取引契約等の新会社への譲渡が完了して
   いることの確認が比較的容易である点、
 において、買主である日本側に有利といえます。なお、この場合、対象会社側に
 おいて資産譲渡の手続を完了させることが前提となるため、買主側が関与する手
 続としては、上記①の株式(持分)取得ということになります。
 
 以上のとおり、ベトナムにおけるM&Aの手法としては、上記①株式(持分)取得が実務上一般的であるといえます。
 株式(持分)取得の具体的な方法としては、対象会社の株主から株式(持分)譲渡を受ける方法と、対象会社による新株(持分)発行を受ける方法があります。新株(持分)発行のためには対象会社における株主総会決議等の機関決定が必要となるため、株式(持分)譲渡のみと比較して若干手続が重たくなりますが、設備投資等のために対象会社において資金需要があるといった場合には、株式(持分)譲渡と新株(持分)発行が併用されることもあります。
 

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石川 賢吾

石川 賢吾

弁護士(東京丸の内法律事務所)。2007年一橋大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2015年米国ジョージタウン大学ロースクール卒業。同年ニューヨーク州司法試験合格。2015年~2016年ZICO Law法律事務所ホーチミンオフィスに勤務し、日系企業のベトナム進出案件に従事。2016年9月より東京丸の内法律事務所に復帰。