2019.04.26.FRI

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ラボにおけるERESとCSV【第51回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第50回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(21)

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
■FF社 2017/9/28 483
施設:原薬工場


Observation 1
a) 下記装置の電子記録が維持されていない。また、監査証跡機能がない。
•    旋光計 (polarimeter)
•    カールフィッシャー滴定装置
•    エアジェットシーバ(エアジェットふるい)
  電子記録を維持できるのに、プリントアウトを生データとしている。
  エアジェットシーバの機器使用ログに、2017/6/11の使用が記録されて
  いない。

b) DCS(分散型制御システム)に下記機能がない。
•    監査証跡機能
•    ID/パスワードによるアクセス管理機能
  DCSの監査証跡を2017年4月からレビューしているが、手順書に規定され
  ていない。

c) スプレッドシート計算結果が電子的に維持されていない。

d) 重要なGMP操作の記録シートやワークシートの発行を品質部門が管理して
  いない。装置の洗浄ワークシートなど、各部門に必要なワークシートはその
  部門において発行することが許されている。未記入(白紙の)ワークシート
  は規定されており、部門管理者が必要に応じコピーし発行しているが、発行
  管理されていない。

★解説:
a-1 下記の機器は電子記録を維持できるのに、プリントアウトを生データとして
  いると指摘している。
  ・旋光計 ・カールフィッシャー滴定装置 ・エアジェットふるい
  査察官はこれらの機器のオリジナルデータはダイナミックデータであると判
  断したと考えられる。そのため、電子記録が生データであり、機器が生成し
  たオリジナルデータを保存する必要があると指摘した。
  これらの機器においてオリジナル電子記録による再解析や波形の精査が不要
  であり、スタティックデータと考えるのなら、電子記録の維持は不要かもし
  れない。この場合、その考えを規定しておき査察官とディスカッションする
  とよい。ただし、もし監査証跡機能があるのであれば、スタティックデータ
  の場合でもオリジナル電子記録を維持するのが得策であろう。PIC/Sデータ
  インテグリティガイダンス(Draft-3)の下記説明が参考になる。スタティッ
  クレコードであっても、電子記録で維持した方が楽であることを示唆している
  と考えられる。
 
第8.10.2節
スタティックレコードがオリジナルレコードの完全性を維持していることを
正当化できるのであれば、電子的に生成された生データを紙もしくはpdf形式
で維持してよい。しかし、この場合メタデータを含む総てのデータを記録せね
ばならない。医薬品品質に直接もしくは間接的に影響を与えるすべての作業デ
ータを記録する。例えば、分析の記録であれば以下のデータを記録する。
◆ 生データ
◆ メタデータ
◆ 関連する監査証跡
◆ 結果ファイル
◆ 各分析に特有なソフトウェアやシステムの設定
◆ 生データの再構成に必要となるメタデータと監査証跡を含む総てのデータ
処理また、プリントアウトが正確なものであったことを検証する手順書も必要
とされる。電子的に生成されたスタティックな生データを紙もしくはpdf形式で
維持するのは、GMP/GDPに適合した記録とするにはやっかいな管理方法となろう。

a-2 下記の機器に監査証跡機能がないと指摘している。
  ・旋光計 ・カールフィッシャー滴定装置 ・エアジェットふるい
  監査証跡がないと、データ生成・変更・削除の履歴がわからず、データのいいと
  こ取りをしていないことを証明するのは容易ではない。従って、機器をアップグ
  レードし監査証跡機能を取り込み、データのいいとこ取りをしていないことを容
  易に証明できるようにしておくことをお薦めする。FDA査察において監査証跡機
  能の不備を指摘されると、機器更新を余儀なくされる。FDA査察を予定している
  企業は、監査証跡付きの機器に早めにアップグレードしておくのが得策である。

  監査証跡機能を具備した機器が存在しない場合の対応として以下の方法がある。
◆ 手順による対応
機器使用ログに日付のみならず時刻も記入などして、様々な記録により良いと
こ取りをしていないことを説明できるようにしておく。例えば、分析機器だけ
ではなく調製に使用した機器の使用ログにも時刻を記入する。ただし、良いと
こ取りをしていないことをこの方法で説明するのは容易ではない。
◆ システムによる対応
イベントログのビューアソフトをインストールし、オリジナルレコードの書き
込みと削除を監視する。監査証跡とはいえないが、良いとこ取りの繰り返し測
定をしていないことを証明できる。

a-3 機器を使用したはずなのに、機器使用ログにその記録がないと指摘している。
  機器使用ログの信憑性が疑われると、良いとこ取りの繰り返し測定をしていない
  ことの根拠として機器使用ログを参照できなくなる。
  データレビューのために機器を使用した場合を含め、機器使用のログは正確に
  もれなく記録する必要がある。

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。