2019.03.22.FRI

CSV

ラボにおけるERESとCSV【第50回】

この記事を印刷する

執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第49回】

ラボにおけるERESとCSV

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(20)

7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
 
CC社 2017/9/14 483
施設:原薬工場


Observation 6
QCのリリーステストに使用されるコンピュータ化システムの管理が不十分であり、データの変更・削除を防止できない。特に;
HPLCの制御に使用しているコンピュータのシステム管理が不十分であり、原薬のQCリリーステストに係わるクロマトグラフィー生データの変更・削除を防止できない。

★解説:
HPLCのオリジナル・レコードはダイナミック・レコード形式の電子記録であり、電子生データとして真正性を保証して維持する必要がある。本指摘はこの真正性が保証できていないという指摘である。電子記録の真正性保証の要件は、セキュリティ、監査証跡、バックアップである。連載第2回と連載第3回を参照されたい。また、連載第31回の図3「真正性に関するWL指摘例」も参照されたい。連載第36回のK社Observation1に対する解説も参照されたい。

DD社 2017/9/15 483
施設:原薬工場


Observation 1 
a) 原薬の工程内検査ラボにおけるスタンドアローン分析機器が適切に管理されて
  いない。
  精製工程などの重要工程の完了はこれらの機器により判定されている。
i)  HPLCなどの監査証跡は試験的に2ヶ月ほどレビューされていたが、2017/9/15
  時点では監査証跡をレビューするようSOPに規定されていない。
ii) データをレビューし承認するQCのスーパバイザーにHPLCのシステム管理者
  権限が与えられている。また、電子生データを承認する人が電子生データを
  削除することができた。
iii)  UVなどいくつかの機器が、監査証跡機能や個人別アカウント機能を持ってい
  なかった
iv)  2017/6/19までUVの電子生データを維持しておらず、プリントアウトを生
  データとしていた。このUVは工程内規格の検査に使用されていた。

★解説:
連載第45回に記載したV社の解説において、工程内規格試験    (IPT)と工程内管理(IPC)について私見を述べた。本指摘はQCの管理下にある工程内規格試験に対するものと考えられる。従って、製品の品質試験を行うQCラボと同じ管理レベルが要求されている。

i)  ルーチンのデータレビューにおいて監査証跡をレビューしていないと指摘を
  受ける。データインテグリティの確認方法を記載したデータレビューSOPを
  規定し、確実にデータレビューが実施されるようにしなければならない。
  データレビューSOPには、監査証跡と電子記録により下記観点でデータイン
  テグリティを確認するよう規定する。
◇ 権限なくデータやパラメータが変更・削除されていないか
◇ 不都合な事象を隠蔽していないか
◇ 正当な理由なく繰り返し測定していないか
 (良いとこ取りの繰り返し測定はないか)
◇ 試し打ち(テストインジェクション)は妥当か
◇ 正当な理由なく手動解析/再解析をしていないか
◇ 手動解析/再解析の開始条件は既定を満たしているか
◇ 手動解析/再解析の内容は妥当か
◇ シングル・インジェクションは妥当か
これらをチェックリスト化しておき、データレビューに使用し
レビュー記録とするとよい。
ii)  データの照査・承認をする人がシステム管理者権限を持っていると指摘を
  受ける。
iii)   電子記録の真正性保証の要件は、セキュリティ、監査証跡、バックアップ
  である。これらの要件を満たしていないと指摘を受ける。
iv)  UVはダイナミック・レコードであるとFDAはみなしている。したがって、
  電子生データを維持していないと指摘を受ける。なお、電子生データを維持
  しつつプリントアウトに手書き署名というハイブリッド運用は認められる。

1 / 3ページ

望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。