2019.02.01.FRI

品質システム(PQS)

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第17回】

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執筆者:中川原 愼也

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第16回】

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理

問題意識


※関連セミナー開催(2019年4月)
GMPヒューマンエラー防止のための文書管理
 

1.責任転嫁とやるべき論
 製造所からの出荷可否判定は、製造記録及び試験検査成績書に問題のないことを確認して、決定される。出荷可否判定書とともに製造記録と試験検査成績書を束ねて保管される施設もあろう。では、保管についての責任は規定され、責任部署が明確にしているか確認が必要である。データインテグリティが叫ばれる中、紙面としての記録の保管方法も重要である。文書の保管場所は施錠をし、セキュリティー管理をすることが求められる。バックアップも必要である。もし、火災などが起きた時、記録が紛失することがあってはならない。バックアップをしないならば、耐火性の金庫で保管する方法もある。しかし、海岸近くの製造所であれば、津波対策も必要である。その保管方法について、誰が責任を持つかを決めることが必要である。過去の査察の経験の中で、製造記録と品質記録を束ねており、判定記録が製造だ、試験だともめてしまったケースもあった。結局は、提示されたが、QA業務では、GQPとしてのコーポレートとGMPとしてのサイト側との連絡におけるミスマッチもある。納品が迫っているからと焦る製造部門と変更や逸脱がクローズしていないとぐずぐずするQA部門が責任をなすりつけることもあろう。安定供給のためと迫る製造側と品質の確認ができないと突っ張る品質側とどちらが悪いのだろうか考えてもらいたい。どちらも責任があり、やるべきことをやらなければならない。製販としても品質情報をGQPとして処理するか、GVPとして処理するか、最初の窓口はどちらにするかなど些細なことでの責任転嫁は生じる。責任を明確にし、抜け落ちてしまう事象がないようにカバーすることが重要である。開発に関する内容はGMPの範疇ではないと主張する方も多いが、ICH Q10医薬品品質システムで求められているように、医薬品品質システムは開発から終売までのライフサイクルとして管理しなければならない。適合性調査では、開発時の工業化検討や技術移管文書は当然のごとく確認される。医薬品製造業者として、一貫したシステムの中で管理されなければならない。そのシステムを維持するために経営陣は責任を持たなければならないことが、ICH Q10に記載されている。
 
 

 GMPの記録類には多くのチェック項目がある。その一つ一つを承認者がすべてダブルチェックをするのは限界がある。出荷可否判定者が製造記録や試験検査成績書の全部を見る、まして、生データまで確認することは不可能であろう。そのために、チェックが有効に働くようチェックする範囲を責任者ごとに明確にして、責任を持たせることは重要である。最後に判定者が見るからと、なおざりなチェックを繰り返しても意味がない。生デーではだれが見るか、ダブルチェック者はだれがしたかの確認をするのもチェックである。必要以上に、ダブル、トリプルとチェックを重ねれば、各自の責任が不明確になり、チェックが有効に働かなくなる。現場のリーダー、工程責任者、製造部門責任者とチェックすべき項目を明確にし、チェックの見逃しを減らす体制を構築することが、ヒューマンエラー防止につながる。

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中川原 愼也

中川原 愼也

高田製薬株式会社生産本部品質統括部門品質統括部長
1984年神奈川県庁に入庁し、1997年国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院の前身)でGMP研修を受講後、薬務課及び小田原保健所等で医薬品等の製造販売業、製造業の許認可、審査、指導を主にGMP・GQPリーダー査察官として16年にわたり活躍した。その間、MRA(日・欧州共同体相互承認協定)の締結の際のEUの調査、2005年の製造販売承認制度の施行に携わり、PIC/S加盟にあたり、厚生労働省の委員等委嘱を受け、次の活動に参加した。
平成20、21年度 GMP/QMS調査・監視指導整合性検討会委員
平成21、22年度 厚生労働科学研究~GMP査察手法の国際整合性確保に関する研究
2012年に神奈川県庁を退職し、医薬品原薬輸入商社であるコーア商事株式会社で、品質保証部長として国内管理人としてのGQP取決め及び医薬品製造業としての GMP管理を統括した。2015年から株式会社ファーマプランニングにて、GxPコンサルタント業務に携わり、2017年高田製薬株式会社に入社、4月より同大宮工場製造管理者に就任。