2017.07.17.MON

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ラボにおけるERESとCSV【第31回】

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執筆者:望月 清

ラボにおけるERESとCSV【第30回】

ラボにおけるERESとCSV

第31回 FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(1)

はじめに
海外規制当局であるMHRA、WHO、FDA、および我が国も加盟するPIC/Sから発出されたデータインテグリティ・ガイダンスを連載12回から28回にわたり解説した。しかし、ガイダンスは規則ではないので、ガイダンスを理解しただだけではどの程度まで対応すべきか判らない。Form FDA 483に記載された査察現場における生の指摘(Observation:観察所見)を見ると、対応すべきレベルを把握できる。483に記載された生の指摘、すなわち当局の期待を連載紹介するので、GMPにおけるデータインテグリティ実務対応の参考とされたい。
 

1.データインテグリティとは
データインテグリティとは、データが「完全」で、「一貫性」があり、「正確」であることである。つまり「データが信頼できる」ことである。データインテグリティの目的は、患者の安全性を確保することである。データインテグリティ問題を引き起こす要因とその根本原因は以下の様に考えられる。
 
■問題の要因
データインテグリティ問題を引き起こす要因として以下のものがあげられる。
  悪意/故意  :データ改ざん、不都合隠蔽、面倒くさい、、、
  不注意/無知 :うっかり、ミス、知らなかった、、、
 
■根本原因
データインテグリティ問題の根本原因として、以下のようなものに起因する「プレッシャーや誘惑」が考えられる。
  ▷ きついスケジュール
  ▷ 生産ノルマ
  ▷ 人手不足
  ▷ 不安定な試験法や機器
データインテグリティの技術的対応を行ったとしても、このような根本原因を取り除かないかぎりデータインテグリティ問題は解消しない。例えば、悪意を持った人がGMP業務を行っていると問題は再発する。そのような人はGMP業務から排除すべきであるとFDAのガイダンスに記載されている(連載第22回を参照)。


2.きびしいGMP査察
患者の安全を守るため、GMP査察においてデータインテグリティは以下の観点から大変厳しく調査される。
  ◦データ改ざんはないか
  ◦繰り返しテストによる良いとこ取りはないか
GMPにおけるデータインテグリティ調査は以下の様に実施される。
  ◦性悪説ベース
  ◦疑わしきは指摘
  ◦組織ぐるみの隠蔽操作はないか
  ◦原因が不注意であっても、結果は悪意/故意と同じなので容赦しない
 

3.FDAの査察
FDA査察における観察所見(Observation)はForm FDA 483(通称:483)に記載され、査察最終日に査察官から企業へ提出される。483を受け取った企業は観察所見に対する回答を15営業日以内にFDAへ提出しなければならない。483に対する回答が不十分であると、FDAは警告書(Warning Letter:WL)を発行する。WLを受け取った企業は、15営業日以内にWLへの回答を提出しなければならない。WLに対する回答が不十分である場合、米国への輸入制限、リコールなどの行政措置がとられる(図1参照)。WLはFDAのサイトに全数公開されており、483は請求ベースで開示される。483には「査察官」による観察所見がすべて記載される。WLには回答が不十分であり規制不適合として「FDA」が判断した内容だけが記載される。査察現場における生の指摘を知るには483に記載された観察所見を理解するのがよい。以下、WLにおけるデータインテグリティ指摘を紹介し、次に国内企業に発せられた483における観察所見を紹介しその解説を付記する。最後に海外企業に対する観察所見を紹介する。

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図1 FDA 483とウォーニングレター(WL)

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望月 清

望月 清

合同会社エクスプロ・アソシエイツ代表。
1973年山武ハネウエル株式会社(現アズビル)入社。分散型制御システム(DCS)を米国ハネウエル社と分担開発。2002年よりPart 11およびコンピュータ化システムバリデーションのコンサルテーションを大手製薬会社にご提供。2009年より微生物迅速測定装置の啓蒙普及に従事。2014年5月より現職。