2018.11.30.FRI

品質システム(PQS)

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第15回】

この記事を印刷する

執筆者:中川原 愼也

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第14回】

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理

目標管理

【連載記事セミナー】
■2018年12月21日(金)
GMPヒューマンエラー防止のための文書管理


1.品質方針と使命
 GMP省令が改正され、上級経営陣の責任についての条文が新設されるようだ。上級経営陣の責任は、ICH Q10医薬品品質システムガイドラインで求められていたが、法令化されることにより、今まで、指導の範疇であったものが、GMP省令違反となることを認識しなければならない。上級者経営陣の責任として、品質方針を示さなければならない。品質方針として、患者のための安心、安全、高品質を謳う企業は多いが、甚だ疑問に感じる。私は、これは、製薬企業の使命だと思う。また、薬機法やGMP省令等の遵守など、コンプライアンスを方針とする企業も多い。コンプライアンスの遵守は当然のことであり、製薬企業なら、薬機法やGMP省令を遵守することをわざわざ方針とする必要はない。
 多くの企業が従業員に目標を立て、その業務を遂行できているか報告をさせているだろう。医薬品品質システムガイドラインでも、経営陣が示した品質方針に沿って、品質目標を立て、その目標を達成するために、計画を立案しなければならない。逸脱0を品質目標として、その実効のためにSOPの遵守などを計画としていることもあろう。しかし、それでいいのか考えてほしい。本来、GMP省令第10条で、手順書や指図書に基づき製品を製造することが規定されている。手順書や指図に従わない製造は、コンプライアンスとして法令違反なのである。
 製薬企業は、そもそも医薬品供給者として、どのような使命を担っているのか、そして、従事者一人一人にその使命を果たすために、何をすべきかを品質方針として示すことが必要である。その為に、製造部門、品質部門、製造所のみならず、企業として、人事や営業、開発など、すべての部署がその方針に沿って、活動すべき目標を立て、実行することが医薬品品質システムガイドラインで求められている。それは開発から終売するすべての過程を通じ、品質システムを構築せねばならないということである。
 コンプライアンスとして、データの信頼性など当局の規制だけでなく、世の中が求める品質システムの構築は、より厳しくなっている。製薬企業がまずすべきことは、より安心、安全で高品質な医薬品の提供であり、本来業務である医薬品の品質管理を含めた生産供給の業務に支障がきたすような目標管理や報連相などの業務の負担を増やすべきではない。GMPは、手順や記録の作成など多く文書管理を求めているが、それは、医薬品の製造管理や品質管理の業務が適切に運用され、品質システムが構築されていることを証明する手段であって、本来業務を疎かにしては、本末転倒である。目標は、本来のルーチン業務の進捗管理のための手段として考えるべきで、新たな業務として負荷をかければ、多忙さからのヒューマンエラーを招くことになる。経営陣やマネージャーはその点を十分認識して、改正GMP省令の対策を行うことが肝心である。
 そもそも、目標とは計画を適切に実施することにより成し遂げられなければならない。目標が成し遂げられない無理なもの、夢物語となるなら、従事者のやる気もでない。「逸脱0」を目標としたとき、CAPAの有効性確認の実施などにより、再発防止の徹底が計画でき、実現可能かどうかリスク分析をすることが必要である。そのために、リスクマネジメントや品質照査としての年次レビューを行い、マネジメントにつなげ、次年度の品質方針を決定することとなる。「逸脱0」の目標の達成のために、逸脱の発生の報告を怠り、隠ぺいすることになったり、基準を歪めたりすることがあってはならない。新規製造品目に関する変更管理で、当初のリスク分析が甘く、予想外のリスクが発覚したなら、次の品目にリスク分析を徹底できるよう目標や計画を見直すことをマネジメントレビューで経営陣が指摘し、方針に反映しなければならない。

1 / 2ページ

中川原 愼也

中川原 愼也

高田製薬株式会社生産本部品質統括部門品質統括部長
1984年神奈川県庁に入庁し、1997年国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院の前身)でGMP研修を受講後、薬務課及び小田原保健所等で医薬品等の製造販売業、製造業の許認可、審査、指導を主にGMP・GQPリーダー査察官として16年にわたり活躍した。その間、MRA(日・欧州共同体相互承認協定)の締結の際のEUの調査、2005年の製造販売承認制度の施行に携わり、PIC/S加盟にあたり、厚生労働省の委員等委嘱を受け、次の活動に参加した。
平成20、21年度 GMP/QMS調査・監視指導整合性検討会委員
平成21、22年度 厚生労働科学研究~GMP査察手法の国際整合性確保に関する研究
2012年に神奈川県庁を退職し、医薬品原薬輸入商社であるコーア商事株式会社で、品質保証部長として国内管理人としてのGQP取決め及び医薬品製造業としての GMP管理を統括した。2015年から株式会社ファーマプランニングにて、GxPコンサルタント業務に携わり、2017年高田製薬株式会社に入社、4月より同大宮工場製造管理者に就任。