2018.05.27.SUN

その他医療機器関連

医療機器関連業界のいま【第1回】

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執筆者:吉川 典子

医療機器関連業界のいま

【第1回】スタートアップと医療健康福祉ビジネス

●要旨
 医療健康福祉ビジネスの現在地と未来について、スタートアップを切り口に考えます。人口構成の急激な変化を背景に、社会の課題が噴出している今、資金調達をはじめ、視座を新たにすることが重要です。経営学に登場するキャズム理論とヘルスケアを考えると、より多くの人々への視線が必要であり、社会的包摂の眼差しも大事です。スタートアップの背景にも、この眼差しがあり、これからの社会に重要な示唆を与えます。

●はじめに スタートアップの動き
 ミレニアムベンチャーのブームは去り、今のベンチャーのあり方は、かつてのものと異なります。ベンチャーという言葉よりも、まだ大きくなっていない「スタートアップ」という呼び方の方がしっくりくるのかもしれません。起業することは、0から何かを始めることを意味します。
 私自身の支援の業務の中でも、スタートアップへの内容も増えました。課題への解決など、前例のないテーマが多くあります。しかし、ビジネスにしていくには、ある程度参考も必要と感じます。一方で、大きな企業が新たな事業を始める、何かに備えるために、スタートアップとの連携を探ることが増え、この仕組みもビジネスに向ける大事なものです。課題への向き合い方のしなやかさは、スタートアップの強みであり、特に、医療、健康、福祉分野は、とても大切なフィールドです。
 連載『医療機器関連業界への招待』の機会をいただきましたが、本稿では、現在地、少し未来についても触れ、これからのビジネスを考えていくことにします。

1 資金調達
 事業には、自己資金だけではなく、資金を調達することが少なくありません。かつて、医療機器の開発については、公的な補助・助成制度がなければ無理という考えもありましたし、補助・助成制度が適用されてからの使い道としての医療関連製品の開発もありました。しかし、今は開発環境が大きく変わっています。まず、資金調達以外の支援の仕組みが充実しました。資金調達にも多様性があります。
 公的な資金調達に限らず、民間企業からの投資もあれば、クラウドファンディング、投げ銭のようなものも可能になりました。資金調達の後のリターンについても、一定の理解が増えてきたと思います。事業の売却を織り込んで、次のステージに進めることも、抵抗感が薄れたようです。
 資金調達には、まず何をしたいのか、何をしているのかを知ってもらう必要があります。そのためには、何かのプロポーザル、提案書を必要とします。そして投資の対象がどのような範囲なのかもよく理解しなければなりません。提案書は、科学的な論文とは異なるものですし、科学技術文書とも性格が違います。それだけではありません、資金調達に向けて、ピッチの機会も多数用意されるようになり、まず自分たちのことを知ってもらう、そして、フィードバックをもらう活動が可能になりました。単なるプレゼンテーションではなく、相手に共感を持ってもらうことを目指します。

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<図1 資金調達>

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吉川 典子

吉川 典子

特定非営利活動法人医工連携推進機構 客員研究員 医工連携コーディネータ協議会会員
大阪大学大学院薬学研究科博士前期課程にて生物学的人工肝臓をテーマに研究を行った後、製薬会社に入社し、開発企画実務を経験。兵庫県庁薬務課を皮切りに、保健衛生行政に携わる。政策研究などの経験も多い。医療機器センター調査部(PMDAの前身)にて、審査行政に関与。先端医療振興財団にて、振興業務に従事。神戸大学大学院医学研究科にて、プロジェクト支援を行った。また、各地の振興組織、大学研究機関での支援を長年行っており、医療従事者の目線を活かしたコラボ、参入促進や新規性の高い医療技術への支援に強みがある。
デザインに強い関心があり、京都造形芸術大学に在学中。