2018.04.13.FRI

品質システム(PQS)

GMP記録の信頼性確保と対応の考え方【第1回】

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執筆者:浅井 俊一

GMP記録の信頼性確保と対応の考え方

【第1回】「データインテグリティー」って何?

1.1 はじめに
1970年代に日本にGMPが導入され、GMP文書と記録の作成が医薬品製造業の許可要件として義務付けられたときは、GMPの意味も今ほど分からない状況下、医薬品の製造や品質管理に携わる者は一連のGMP文書の作成を行い、それぞれの文書名を記載したファイルを居室の棚に並べ、書類が完成するごとに、何か不思議な達成感、安心を感じていたのではないでしょうか?
そういう時代を経て、GMPは国際的ハーモナイゼーションなど時代の要請により進化し、本質は変わらないまでも、具体的な規制、要求事項は増加の一途を辿り、現在の要対応事項は先年の比ではありません。こういう状況の中、最近、また、新たな事項が脚光を浴びています。GMPの記録類の信頼性の問題です。

GMP記録、すなわち、製造記録や試験記録の重要性は、医薬品の製造管理や品質管理に携わる者であれば誰もがよく理解し、その信頼性についても、日常、意識しないまでも、当然、重要で、それが前提であるとの認識はあったはずです。しかし、このところ、GMPの文書と記録の信頼性、特に、製造や試験検査に関する記録の信頼性が問題になってきており、関係方面ではこれに関する論説やセミナー案内をよく見かけるようになりました。キーワードは「データインテグリティー(Data Integrity)」です。GMPに携わる多くの者がこれまであまり耳にしたことのない、この厳めしい横文字が今、GMPの最大のトピックとして衆目を集めています。日本語では、直訳し「データの完全性」と訳されますが、意図するところは、今回の課題である「GMP記録の信頼性」の確保と理解します。

「GMP文書記録の作成と保存」はGMP省令に規定されている重要事項であることはすでに周知で、これの信頼性が医薬品品質を保証する根拠になっていることは、関係者であれば誰もが認識しているのではないでしょうか?しかし、今、このことが、言葉を変えて、改めて注目されるには何か理由があるはずです。
理由は3つ考えられます。
一つは、大手ワクチンメーカーの製造記録にまつわる不祥事により製薬企業が作成する記録の信ぴょう性に疑問が持たれるようになったこと。これにより、すべての製薬企業に対し、製造販売承認書と製造記録及び試験記録の齟齬(不整合)確認が行われ、痛くもない腹を探られ不快な気持ちになっている方も少なくないでしょう。二つ目はFDAのGMP査察後に発せられる警告書(Warning Letter)に見られる、インド等原薬メーカーの試験記録などに関する重大な指摘。これもまた、実際には試験が実施されていない状況下で試験データや記録がねつ造された可能性があるなど、企業や関係組織の職員が信用できないという話。そして、三つ目がPIC/SやFDAから「データインテグリティー」関連のガイドラインが示されたこと。これらが重なり、改めて、かつ急速に、「GMP記録の信頼性確保」という課題に注目が集まり、日本でも規制として明確にすることの必要性が議論されるに至ったという流れかと思います。

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浅井 俊一

浅井 俊一

奈良県出身。1974年、ロート製薬入社。
退職後も継続して医薬品の品質保証をテーマとして活動。
製薬工場のヒューマンエラー低減策、中国等海外原薬の品質確保、医薬品異物混入防止対策、GMP記録の信頼性確保、行政査察対応などのほか、製薬工場のコミュニケーションの活性化、モチベーションの維持向上など人財育成にも注力。
中国での活動として、原薬工場の改善指導のほか、「新薬事法下の品質保証体制」(2009年/上海)、「日本に輸出するための原薬工場の要件」(2017年/杭州)などの講演や、CFDA主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。元日本OTC医薬品協会品質委員会委員長、元日薬連品質委員会常任委員。QAビジネスコンサルティング代表。薬剤師。趣味はチェロ演奏。