2017.11.02.THU

品質システム(PQS)

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第3回】

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執筆者:中川原 愼也

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第2回】

GMPヒューマンエラー防止のための文書管理

GMP記録書(1)

1. 記憶にするな!記録しろ!
 記憶とは、実にあいまいなものである。人間の脳では、コンピュータのようにそのままデータが保存されるわけではなく、その時の感情等にも影響を受ける。また、他人からの意見などにも同調してしまう。思い出すときにも、違う記憶と混同され、場合により書き換えられてしまうのである。自分の経験の話をすると、平成17年の製造販売業制度が施行になり、その見做しが終了する年の適合性調査で、ほぼ毎日、調査が続いた。当然、調査時のメモを取っているが、調査報告書を記載しようとしたとき、そのメモを見ても、どの工場の状況か混乱してしまい、苦労したことがあった。それを教訓に、事務所にいけない日が続くときは、調査が終わるたびに、家で報告書の作成をした。(今時の査察では、許されないことだとは思うが…)
 記録は作業をしながら、その作業が手順書や指図書のとおり、行われたかを確認しながら記録することが基本である。しかし、医薬品の製造現場は、異物対策等により、筆記具の持ち込み制限等があり、記載できない場合もある。また、作業をしながらでは、きちんと記録を書くには余裕がないことも考えられる。自ずと、チェック等で済ませられるような記録となりがちだが、記録にばかり、神経が注がれて、作業そのものがおろそかになっては、本末転倒である。その時に確認しなければならないものを記録することが原則である。作業時間もその一つである。製造記録等には、作業の開始時刻や終了時刻を記載することが多い。「その時に確認した時計はどれですか。」と査察時に質問したこともよくあった。時刻は後から確認できない。時々、時刻を修正した記録を見ることがあったが、それが記載した時の誤記での修正なら問題ないが、後からその作業時間との辻褄合わせである場合は、問題となる。それは、データねつ造と同じことになる。例えば、次のような記録を見たときにどのような判断をするだろうか。査察官のつもりで考えてほしい。
 
製造記録
                                 2017/08/21 
 混合工程       05誤記修正2017/08/21中川原
開始時刻 10:10               終了時刻 10:15
      作業時間 20分

 この修正は作業開始時に行ったのか、終了時の時刻を記載した時に修正したのか、後から、作業時間を見て、気が付いて修正したのか、混合時間は本当に20分であったのかと疑問点が出てくるであろう。混合機には、タイマーがあり、校正も適正に行われているかもしれない。では、時刻の記録は必要だろうか。20分の確認のためのダブルチェックとして記載しているかもしれない。しかし、このような修正を認めるなら、ダブルチェックの意味をなしていないことになる。ダブルチェックとしての意味なら、タイマーが校正済である確認のほうが有益かもしれない。工数管理のために記載しているなら、開始や終了のどちらかの時刻を記録する方法もある。品質管理の上で重要な点はどちらなのかを考えて記録の様式を決めるべきである。

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中川原 愼也

中川原 愼也

高田製薬株式会社生産本部品質統括部門品質統括部長
1984年神奈川県庁に入庁し、1997年国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院の前身)でGMP研修を受講後、薬務課及び小田原保健所等で医薬品等の製造販売業、製造業の許認可、審査、指導を主にGMP・GQPリーダー査察官として16年にわたり活躍した。その間、MRA(日・欧州共同体相互承認協定)の締結の際のEUの調査、2005年の製造販売承認制度の施行に携わり、PIC/S加盟にあたり、厚生労働省の委員等委嘱を受け、次の活動に参加した。
平成20、21年度 GMP/QMS調査・監視指導整合性検討会委員
平成21、22年度 厚生労働科学研究~GMP査察手法の国際整合性確保に関する研究
2012年に神奈川県庁を退職し、医薬品原薬輸入商社であるコーア商事株式会社で、品質保証部長として国内管理人としてのGQP取決め及び医薬品製造業としての GMP管理を統括した。2015年から株式会社ファーマプランニングにて、GxPコンサルタント業務に携わり、2017年高田製薬株式会社に入社、4月より同大宮工場製造管理者に就任。