2017.06.05.MON

品質システム(PQS)

製薬工場におけるヒューマンエラー対策の考え方【第3回】

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執筆者:浅井 俊一

製薬工場におけるヒューマンエラー対策の考え方【第2回】

製薬工場におけるヒューマンエラー対策の考え方

【第3回】コミュニケーション

「コミュニケーション」という言葉は非常に幅広いイメージをもつ言葉で、これから想起される事柄は人により様々だと思いますが、最近、ビジネスの場のみならず、医療、福祉、教育などあらゆる分野でコミュニケーションの重要性がとりあげられ、議論される機会が多くなってきているように感じます。急速なIT技術の進展によりインターネットやSNSが普及し、人が対面で交流し会話する機会が以前より少なくなってきていることも、その一因と思われます。
ビジネスの場における報告などへのeメールや掲示板の活用、教育の場におけるeラーニングなどの適用、さらに、日常生活でのネットショッピングの利用などが、これらIT技術の代表的な応用事例としてあげられます。
 
本来、コミュニケーションは人が快適に社会生活を送るための基礎となる大切なもので、あらゆることが人の良好なコミュニケーションの上に成立していると言っても過言ではありません。
ビジネスの場におけるコミュニケーションひとつをとっても、営業職のように人との交流が仕事のウエイトの多くを占めるものだけでなく、企画、開発などを含め、あらゆる業務分野においてコミュニケーションは業務推進の基礎になる大切なものと言えるでしょう。
 
製薬工場の現場の業務も例にもれず、今回のテーマであるヒューマンエラー対策を考える場合もコミュニケーションが重要なキーワードになると考えます。ヒューマンエラーの原因は様々な要因が複雑に関係しあっている場合が多く、業務内容や職場の特性などを踏まえ、慎重に調査・究明し改善につなげる必要がありますが、ヒューマンエラー発生の重要な要因の一つに「組織力」があります。この「組織力」の弱さが、様々なヒューマンエラーの発生に少なからず影響すると考えます。
 
「組織力」とは、組織の活性化のレベルのことであり、このレベルが高いほど、業務の推進力、目標の達成率など、いわゆる組織としての「パフォーマンス」が向上すると考えられ、製薬工場におけるヒューマンエラーの低減にもつながると考えられます。組織の活性化は、「組織の質」に依存し、組織の質は、「個人の質」、「人間関係の質」、「マネジメントの質」により決まります。
これら三つの質を向上させるためには、組織の個々のメンバーがコミュニケーション能力を高めることが重要となります。
 
日常、従業員の間の良好なコミュニケーションの下、組織が活性化されている状態であれば、組織力も強固で、目標に向かうメンバーのベクトルも一致し、重要な情報の共有が的確に行われ、業務が円滑に進み、結果として、業務のパフォーマンスも上がり、同時にヒューマンエラーの少ない職場が実現されるでしょう。

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浅井 俊一

浅井 俊一

1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。