2017.06.05.MON

その他レギュレーション関連

GxPデータインテグリティガイドラインの概要

この記事を印刷する

執筆者:ダニエル プライス


※データインテグリティ関連セミナーは一覧をご確認ください
GMP Platformセミナー一覧
 
※原文(英語)はこちら

1 はじめに
近年、データインテグリティに関する問題は増加しつつあり、いくつかの規制当局や団体がデータインテグリティに関するガイドラインを発行している。2015年にMHRAとWHOはドラフトガイドライン1,2を発行、2016年にはFDAとPIC / Sも、やはりドラフトガイダンスを発行し、MHRAとWHOは改訂したガイダンスを発行した3,4。 PIC / SおよびWHOガイドラインは最も包括的であり、データインテグリティのリスクとコントロールの詳細な例を提供している。すべてのガイドラインで、リスクベースのアプローチによりデータインテグリティの管理を実施することができ、GxPデータのインテグリティを確保するために、紙ベースの記録にのみ依存することは困難であることが示されている。この記事では、データインテグリティの主要概念の概要を説明し、データインテグリティをサポートするために使用できるリスクベースの管理について述べる。
 
2 データインテグリティの概念
2.1 定義

データインテグリティのガイダンス文書は、データインテグリティに関連するいくつかの鍵となる定義を提供しており以下の表1に要約した。FDAガイダンスは生データやデータの定義を提供していない。しかし、FDAのGLPレギュレーションでは、生データの定義が提供されており表に示した。ガイダンスでは定義については「データ」という用語に焦点を当てており、WHOおよびFDAの定義に示されているように、これはGxP規制の対象となるすべての記録も指している。ガイダンスには、医薬品業界でよく使われる用語ではあるが、GxP記録の定義はない。一般に、GxP記録の用語にはデータと生データが含まれ、以下GMP環境で見られるさまざまなタイプの文書を包含したGMP特有の他の定義を示した。
 
■GMP生データ:GMP規制の対象となる活動の実施中に得られたオリジナルの測定値または観察値。 GMP生データは、GMPデータのサブセットであり、製品の製造およびテストに関連するデータを含む。
■GMPデータ:GMP生データまたはGMP生データを処理した実証結果でGMP規制の対象となる。GMPデータはGMP記録のサブセットである。
■GMPメタデータ:データの解釈とインテグリティをサポートするために必要なGMPデータに関連するコンテキスト情報。GMPメタデータには、一般的に、データに関係する情報の内容、場所、人、時、理由、および/または方法が含まれる。データベースにおいては、メタデータはデータを他のデータ、または情報に関連付けるための情報も含むことがある。GMPメタデータは、GMP記録のサブセットであり、関連するGMPデータとは独立して処理される場合には、GMPデータと見なすこともある。
■GMP記録:GMP規制の対象となる活動に関連する情報で、活動及び/または製品の品質、コンプライアンス、安全性および有効性をサポートするためにこれまでの証拠として保持されることがGMP規則によって要求される。 GMP記録の用語は、用いられる状況に応じてGMP手順が含まれる場合と含まれない場合がある。
■GMP文書(ドキュメンテーション):GMP規則の対象であり、GMP規則によって保持されることが要求される活動に関する情報。GMP文書には、GMP記録、GMP手順、およびGMP規則に基づいて必要とされるその他の情報が含まれている。
 

2.2 データライフサイクル
データライフサイクルはガイダンスに記載されており、データが最初の作成から最終的な廃棄に移行する各段階を指す。典型的な段階は以下に示したが、他には、異なるフォーマットへの移行(例えば、紙フォーマットから電子フォーマットおよびその逆)、異なる所有者への移行、あるシステムから別のシステムへの移行、および異なる構造への変換 (例えば、データベースなどの操作構造からxmlなどの長期アーカイブ構造へ)。
 
■通常のデータライフサイクル段階:
- 最初の生成、収集と記録
- 伝達
- データ処理(変換および移行を含む)
- 報告と使用
- 保持、アーカイブ/検索
- 処分

データライフサイクル全体を通じて、データの内容と意味は一貫していなければならず、動的な性質とメタデータとの関係を維持する必要がある。データの動的性質は、フィルタリングや処理などの相互作用の能力である。たとえば、CSVデータファイルの動的性質には、ソート、フィルタリング、および再分析が含まれる。しかしながらPDF形式の同じデータでは、これらの動的機能は保持されない。

2.3 データインテグリティの属性 (ALCOA)
データインテグリティの定義は表1に示したが、すべてのガイダンスでデータインテグリティを特定するためにALCOA属性を参照している。   ALCOAは、1990年代初めにFDAの検査官によってデータインテグリティに必要な特性を説明するため作成された。以来、追加のデータインテグリティ属性が追加され、今日では「ALCOA +」という用語がよく使用される。ALCOA +属性の解釈に関してはガイドラインの間で若干のバリエーションがあり、以下の表2にガイドラインに基づいてそれぞれのALCOA +属性の一般的な説明を示した。


 
2.4 データインテグリティガバナンス
データインテグリティガバナンス(またはデータガバナンス)は、ライフサイクルを通じてデータインテグリティを保証するためのルールと手順である。データガバナンスの基本的なルールと組織構造は、上位の方針や標準書に規定されており、データインテグリティを保証するための詳細な手順は、工程のSOPおよび/または特定のSOPに組み込まれている。高レベルでは、ルールは独立した文書(例えば、データインテグリティポリシー)として文書化されてもよいし、品質マニュアルや文書/記録管理基準のような別の文書に組み込まれてもよい。データ保全ポリシーの重要な要素は次のとおりである:​
 
・データ/記録の定義とデータインテグリティの概念(ALCOA)
・データインテグリティ(例えば、データインテグリティ責任者、経営者、データの所属、職務の分離)に関する組織の役割と責任
・データインテグリティに関する教育訓練要件
・データインテグリティを管理するためのリスクベースのアプローチの概要(データの重要性とデータインテグリティのリスク、評価)
・データインテグリティの問題を連絡/処理するためのルール
・データインテグリティを監視するためのルール(監査、自己点検、定期レビュー、メトリックス、監査証跡レビュー、管理レビューなど)
・行動の期待と結果(オープン・カルチャー)

1 / 2ページ

ダニエル プライス

ダニエル プライス

QSight Ltd 社長
1998年より日本にてエーザイ株式会社で品質保証業務を担当。その後、ニュージーランドで機械/システムのバリデーションのシニアコンサルタントを経て、2008年日本でサノフィ株式会社入社。情報システム部門のQAマネージャーとして活躍。その間、GxPコンピュータ化システムのバリデーション、ソフトウェアバリデーション、ITシステムのバリデーション等の分野でバリデーションリーダー、ITシステムテストリーダー、監査人等として数々の実績あり。
コンサルティングの専門は、FDAのPart 11及びコンピュータシステムバリデーションの規制、日本PMDAのER/ES指針とコンピュータシステムのガイドライン、GAMP5、PIC/ Sのコンピュータシステムバリデーションガイドライン、EU GMP Annex 11、GCP/GVP/GPSPのシステムバリデーション、GxPシステムのデータ・インテグリティ、等。
2016年より現職。日本語堪能。