2017.04.13.THU

品質システム(PQS)

製薬工場におけるヒューマンエラー対策の考え方【第1回】はじめに

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執筆者:浅井 俊一

製薬工場におけるヒューマンエラー対策の考え方

【第1回】はじめに

【執筆者によるセミナー開催決定!】
コミュニケーション活性化を基礎とした
製薬工場のヒューマンエラー対策の考え方と進め方

 

●要旨
 医薬品の製造現場におけるヒューマンエラーの発生は、製品回収や営業停止などを招き、大きな経済損失につながるだけでなく、その企業の品質保証体制に関する信頼失墜という致命的な問題に発展する場合もあります。人間は本来、不完全でミスを起こすものであります。一方、医薬品は人間が直接、人体に適用し人命に直接関与するもの(生命関連物質)であり、その有効性、安全性確保のための品質を保証することは極めて重要となります。
 ヒューマンエラーの低減化対策は製薬工場の最重要課題であり、この課題に対しこれまでの経験・知見を基礎に、人間本来の持つ特性を含め様々な観点から考察し、ヒューマンエラーの具体的な低減対策を考えていきたいと思います。

●はじめに
 ヒューマンエラーと聞いて皆さんは何を想起されますか? 
 そうですね、ヒューマンエラーという言葉を聞いて先ず思い出されるのは、航空機など交通の事故と患者の取り違えなどの医療過誤、この2つだと思います。前者の最近の事例としては、昨年12月に沖縄うるま沖で発生したオスプレイの墜落事故、もう少し時間を遡ると同じく昨年1月に軽井沢で起きたスキーバスの転落事故があります。
 また、医療過誤としては、昨年7月に同じ公立の医療センターで発生した2件の投薬ミスや、一昨年12月に発生した、乳がん患者を取り違え手術に及んだ某がんセンターでの患者取り違え事件があります。
 これらは、いずれも人命にかかわるため、一旦、発生すればマスコミ報道され、巷間、その原因に関し様々な意見、情報が飛び交います。そして、識者がテレビなどで、原因に関する考察などをコメントする際、この「ヒューマンエラー」という言葉が使用されます。
 
 時事報道を主体としたテレビのワイドショーなどでは、「失敗学」の専門家などを交え、持てる知識、知恵を出し尽くし時間を掛けて再発防止策についても議論が尽くされます。しかし、こういった、いわゆる「ヒューマンエラー」は忘れたころに再発し、報道も同じことを繰り返しているのが現状です。
 このように、人命に関わり、本来、特に慎重な対応が必要なことが周知であるにもかかわらず、再発防止が容易でないのが「ヒューマンエラー」です。

 一方、今回の課題である「製薬工場におけるヒューマンエラー対策」は、上記のような人命に直結する事故や事件とは少し趣を異にしますが、その最終の目的とするところは同じで、やはり人の生命の安全や健康の確保につながります。

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浅井 俊一

浅井 俊一

1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。