2013.11.05.TUE

治験薬

治験用医薬品原薬の製造【第2回】-GMPの適用範囲-

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執筆者:中尾 明夫

治験用医薬品原薬の製造【第1回】-新薬の開発過程-

1. GMPの適用範囲
 
 一般に製剤は、高品質の原料を用い比較的単純な工程を経て製造される。原料の品質が最も高く、製造過程で汚染される危険性はあっても品質が向上することはないため、原料の受け入れから製品の出荷に至るまで、コンタミを防ぐように厳密に管理された環境で製造する必要がある。製剤の場合は、製剤に含まれる全ての処方物質が出発原料であり、出発原料の定義をあらためてする必要はない。出発原料の受け入れ以降全ての製造工程がGMPの適用範囲である。
 
 これに対して、原薬の場合は、原料の品質も様々であり、化学構造の変化を伴ういくつかの合成工程を経て製造され、ある工程の生成物は次工程の出発物質になるという特徴を持っている。純粋に合成の見地からすると原薬とはたまたま薬理作用を持った中間体と見ることができ、殆どの中間体は必要に応じて最終原薬と同レベルの品質にまで精製することができる。また、途中何らかの汚染があっても比較的容易に除去精製できるのが普通である。
 
 製造工程が最終に近づくにつれ原薬の品質特性に対する影響度は増大し、最も重大な影響を与えるのは最終精製工程である事には間違いないが、残念ながらその重要度には定量的物差しはないので、どの工程からGMPを適用すべきかを一義的に決めることはできない。最終原薬の品質がその直前の最終中間体の品質に影響され、最終中間体の品質はその前の中間体の品質に影響される、これを繰り返していくと最終的には出発原料に至る。結局、ある中間体の品質が次の工程の中間体の品質に全く影響しないことを証明しない限り、出発原料以降の全ての工程が原薬の品質に影響を与える可能性があることを否定できない。しかし、出発原料としてどの中間体まで遡るべきか、最終的には各企業の責任で決定すべきであるが、出発原料を明確に定義することが重要である。
 
 出発原料の条件
 *原薬の構造の一部として組み込まれること
 *工業製品として市販されていること
 *製法、純度プロフィールが公的に既知であること
 *標準品が存在すること
 
 GMPでは、工程管理と品質管理が、原薬の品質を保証する上で車の両輪とでもいうべき相補的な機能を果たしている。通常出発原料には、工程管理に関する情報は無いわけで、受け入れ試験のみで最終製品の品質を保証する必要がある。従って、出発原料としては、不純物(位置異性体、幾何異性体、立体異性体等)に関する情報が既知で、これらの不純物が以降の工程でどのように変化し最終原薬の品質に影響するかが調査済みであり、受け入れ試験のみでそれらの不純物が充分にコントロールできる程度の比較的簡単な構造を持っていることが必須である。ここに定義した出発原料から最終原薬までの全製造サイクルがGMPの適用範囲に入ると考えるのが妥当であろう。

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中尾 明夫

中尾 明夫

株式会社シーエムプラス 取締役副社長。
GMP Platform責任者。
1976年田辺製薬(株)入社。有機合成化学研究、プロセス化学(工業化)研究に従事後、品質保証部長、取締役生産本部長、常務取締役経営企画部長を歴任、合併後、田辺三菱製薬(株)常務執行役員製薬本部長。
FDA査察対応やPDA活動を通じ、「GMPはサイエンス」と確信。GMP教育の洗練化を目指す(株)シーエムプラスの企業理念に共感し、2011年(株)シーエムプラスに入社、2012年5月より現職。