2021.05.14.FRI

品質システム(PQS)

医薬品の技術移転のポイント【第2回】

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執筆者:脇坂 盛雄

技術移転のタイプ①

 技術移転と言っても、どこからどこへ移転するかも様々なタイプがあります。そのタイプによっても注意事項が異なります。下記の5つについて説明します。
1)設計部門から生産部門への技術移転
2)製造場所の変更(生産部門主体)
3)導入品の技術評価
4)承継に伴う製造サイト変更
5)連続生産などの改善に伴うラインの評価


1)設計部門から生産部門への技術移転
A) 自社研究開発⇒自社(子会社含む)生産部門
 従来はこの技術移転でした。この場合は早い段階から技術交流も行います。これをスムーズに行うために様々な工夫をしてきました。
(1)設計部門の人が生産部門に一緒に異動
 これはとてもよいアイデアのように思われますが、設計部門の人は設計に留まっていたいとの思いが強くあります。生産部門に異動になると意欲を失いがちになります。設計部門に戻れる保証もありません。開発型製薬企業にとって新製品の創出は第一優先です。そのため研究開発には新人の補充があり、活性化させています。しかし、研究開発部門も無尽蔵に人を増やすことができません。そのためにところてん方式に押し出される人材が出てきます。その時、研究開発の知識と経験を活用して生産部門でも「頑張ろう!」と思う人は、生産部門の人も喜んで受け入れ、活躍の場が広がります。しかしすっかりやる気をなくしてしまう人もいます。優秀なので与えられた仕事はそつなくこなしますが、それ以上がありません。その態度は生産部門の人に伝わります。生産部門は生産部門として誇りを持っています。そのためどうしても浮いてしまい、その後数年でまた他の部門に移って行く人が多くいました。結果として、 設計部門からの異動はうまくいきませんでした。

(2)生産部門の人が設計部門にある期間移り、一緒に製造方法を検討
 これはそれなりにうまくいきましたが、なかなか生産部門から人を出せません。人事が余裕として見てくれるとよいのですが、生産部門の一人として行っているために、人手不足になるという厳しいところがあり、長続きしませんでした。新製品が一品であるならよいのですが、数品に及び、それだけの余裕が生産部門にありませんでした。

(3)設計部門と生産部門で早い段階から情報交換
 結局、この方式に落ち着きました。以下の段階で設計部門と生産部門での会議を行っていました。
 イ)    申請用安定試験に入る前の予備試験結果が出た段階
 ロ)    申請用安定性試験結果が出た段階
 ハ)    申請する前に今後PVなど行う段階
 設計の製剤と試験担当者と生産部門の製造、QA,QC並びに本社のQAも参加していました。ここで様々な問題点を確認しました。
 例えば、規格違いを色素で色分けしますが、タール系色素を使わない方針を掲げていましたので、どうしても色素の分散性において悪い結果が出ていました。苦情がかなり出ることが予測されたので、添付文書にその旨記載することにしました。結果として色むらなどの苦情はほとんど来ませんでした。
 生物学的製剤の注射剤でたんぱく由来の不溶性異物が安定性試験で確認されました。そこで添付文書にその旨記載することにしました。それにより、その種の苦情は来ませんでした。

 今は自社の製造部門を別会社にしている会社も増えてきました。その場合、同じ会社と同じ時であったようにコミュニケーションがスムーズにできるかどうかが問われています。
 製造を別会社にした大手の製薬企業の品責がぼやかれていました。製造会社に検討を依頼したら、『費用はいくらです』と返って来て諦めた」との事でした。費用が発生することは当然ですが、別会社化になるとメリットだけでなく様々なデメリットもあることを知りました。また、一緒の会社の時は、製造の人をよく知っていました。どのことは誰が一番知っているかを知っていたので、その人に直接尋ねることもしていましたが、会社が別になるとそういった情報も疎くなりがちです。
 

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脇坂 盛雄

脇坂 盛雄

1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。