2021.04.30.FRI

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再生医療系若手技術者のための製造文書作成術【第1回】

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執筆者:鮫島 葉月

文書を作る、その前にやるべきこと

 本稿は、これから再生医療に関わる若手技術者の方に向けた、製造文書を書くための具体的・実践的なTipsになっています。製造文書の業務においては、体系構築や管理法、GMPそのものについてのロジックなど大変よく解説されていますし、もちろん役に立つことも多いです。しかしながら、これらは「文書を書くことそのもの」を示唆するものではなく、実際に書いてみる以外、文書はなかなかスムーズに書けるようにはなりません。
そこで、製造文書を作成する方向けに「書く」上での注意点やポイントを複数回に分けてまとめてみたのが本稿です。初心者の方は勿論ですが、今現在作成に携わっておられる若手の方なら、最後のポイントをチェックしてみるだけでも役に立つように心がけました。

【最初に~SOP(作業標準書)をベースにして】
 2021年現在、再生医療に関わる人員は全体としてまだまだ少ないのが現状です。技術系や研究系の方も多いため「製造の文書を作成する」ことにかかる体系的な教育は、なかなか行われていないのが現状でしょう。しかし、再生医療に携わりながら、まったく文書を書かない、というわけにはなかなかいきません。何故なら細胞の安定した培養は、文書がないと成り立たないからです。
 いきなりGMPの上位文書を書け、と言われることはないでしょうが、作業プロトコールをSOP化する――というのは、おそらく再生医療にかかる業務では、至極一般的なパターンで、最初に作る機会が巡ってくるのは、やはりSOPが多いと思います。
 もし、このコラムをご覧になっている方に、懇切丁寧にSOPの書き方を若手に教えてくれる先輩がいれば、それはもう「僥倖」と言っていいと思います。レアです。その先輩や上司には、心から感謝なさってください。私の出る幕などありません、先輩の言うことを聞きましょう。そして、どんなに赤ペンで修正を入れられたとしても、くじけないで下さい! 泣く必要はありません、赤ペンの半分は優しさでできています(あとの半分は、過去に自分が入れられた赤ペンの記憶です)。
 さて、では「すでにひな形があるから、それを使って今固めている作業をSOP化してみて」というケースはいかがでしょう。これは多そうです。しかし、ワクの中をどう埋めていけばいいやら、他のできあがったSOPを見てみるものの、そのSOPの読みづらさと理解しがたさにむしろへこたれる、ということがまま起こります。あるいは、類似のSOPをコピペしてしのぐ、という対応もありえます。数字のところを書き換えて、あとはコピペです。その後どうなるかというと、そのSOPを読んだ別のメンバーが、読みづらさと理解しがたさにへこたれるのです。これは悲劇です。にも関わらず、時としてひな形すらないまま「作ってよ」と言われることもあるのが、SOPです。
 製造文書の中でも、筆者は山のような文書を作成してきていますが、SOPが作れない、という悲鳴をたくさん聞いてきました。そこでここから数回は、SOPをベースに、文書作成のポイントを列挙しようと思います。

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鮫島 葉月

鮫島 葉月

一般社団法人免疫細胞療法実施研究会事務局、株式会社日本
バイオセラピー研究所 事業推進部部長
慶応義塾大学大学院医学研究科(修士)修了後、2008年株式会社セルシードに入社。再生医療に係る臨床用細胞加工物の開発および品質保証を担当し、当時の細胞培養加工施設の運用整備(GMP準拠)に携わる。2012年(株)日本バイオセラピー研究所に入社、再生医療関連法に同社を適応させ、特定細胞加工物の製造許可を取得。新規の製造施設設計と運用構築、文書策定等を行い、年間3000バッチ以上の特定細胞加工物を製造する細胞加工施設の施設管理責任者を担っている。
一般社団法人免疫細胞療法実施研究会においては、研究会事務局として、再生医療等を行おうとする医療機関向けに申請サポートデスクを運営。すでに200以上の計画策定を支援している。
また当該法人にはICTA特定認定再生医療等委員会を設置し、委員会事務局として再生医療等の審査対応を行っている。