2021.04.23.FRI

品質システム(PQS)

医薬品品質保証こぼれ話【第35回】

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執筆者:浅井 俊一

医薬品品質保証こぼれ話【第34回】

医薬品製造における科学と規制

4月中旬に入り、日医工、小林化工の新たな自主回収が報道されていますが、こういった回収に至る事例を含め、医薬品の品質トラブルへの対策の基本がGMP基準の的確な実践にあることは、言うまでもありません。このGMP基準はアメリカFDAが性悪説に立ち、作業者が変わっても同じ品質の医薬品を製造するために作業手順を標準化し、また、教育訓練や変更管理などを規制の枠の中で要件化しものであることはご承知のとおりです。アメリカが人種や文化などが異なる多民族国家であることが、こういった基準を必要とした要因の一つと考えられていますが、この基準が日本に導入され、漢方・生薬製剤など植物や動物を起源とする生薬を原料とする医薬品や、発酵や培養により製造される生物製剤などにも、基本的に、化学物質たる医薬品(以下、「化学医薬品」)と同様に適用されています。生薬は産地や収穫時期により有効成分や指標成分に変動が見られるほか、製剤としてエキス化する際に取得できるエキスの量や物性、色調、香りなどに微妙な違いが生じることから、漢方医薬品や生薬製剤は本来、その品質を一定に保つことが化学医薬品に比べて難しいことは容易に推測されます。

また、こういった、原薬品質を一定に確保することが難しい医薬品の製造方法に関する、薬事登録や製造方法の変更に際する法的手続き(変更管理)など関しても、化学医薬品と同じ手順が求められているのが現状です。本来、天然物であるため品質にばらつきが見られる生薬を原料とする医薬品と、品質の均一性を比較的容易に確保できる化学医薬品の、薬事登録に際する製法の記載やその変更手続きを同じ考えの下で運用することは、科学的な観点から考えると少し無理があるようにも感じられます。製造販売承認申請(以下、「承認申請」)に際し検証・設定された製造方法を順守して生産を続ける中で、気候の変動などが原因で生薬の品質特性に変化が生じることが原因となり、薬事登録時の製造方法では規定どおりの医薬品品質を得ることができなることも想定されます。こういった場合、最終製品を承認規格に適合させるためには工程のやり直しなどが必要となることがあり、それを実施した結果、製造販売承認書(以下、「承認書」)に記載の方法と異なる製造方法を実施したと見なされ、違法製造と判断されることがあります。

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浅井 俊一

浅井 俊一

1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。