2021.04.09.FRI

レギュレーション

ドマさんの徒然なるままに【第27話】

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執筆者:古田 ドマ

ドマさんの徒然なるままに【第26話】


第27話:GMPの質・前編

序章
小林化工(株)および日医工(株)の事態、いや内容的には事件と言ってもいい。ジェネリック医薬品に対する信頼を失墜させただけではない。先発品とジェネリック医薬品の違いも知らない世間一般の方も大勢いる。そういう方からすれば、製薬会社って儲かると思ってたら、ズルして儲けてるのかー。一昔前の「薬九層倍(くすりくそうばい)」*1は今でも変わらないんだなー、と思うに違いない。その意味では、ジェネリック・先発品を問わず、製造業・製造販売業を超えた製薬企業全体の信用・信頼をも失墜させてしまった問題だと言っても過言ではない。

これら会社の引き起こした事態や結果としての行政処分等については、各種の業界紙でも報道されていることから、ここで取り上げるつもりはない。また、GMPおよびGQPの観点からの問題点については、本GMP Platformのアーティクルとして他の先生方が述べているので、そちらを参照されたい。本話では、こういった事態が発生する“根底にあるもの”*2、正確には、根底にある「医薬品品質の捉え方のズレ・ブレ」について、前編と後編の二部作として本音トークしたい。

ちなみに、本話は『勝手にGMP論』シリーズ*3の第6弾(カミングアウト版を除く)であり、本話においては、品質に関わるGood Practices全体、具体的にはGMP省令・GQP省令・GCTP省令・GDPガイドラインの総称として「GMP」と記しているので、その点をご容赦願いたい。

第1章:私怒ってます!
筆者、薬屋の小倅(こせがれ)として生まれ、半世紀以上の人生を医薬品関係に従事して生きてきた。そんな背景や経緯を持つ者として、冒頭の会社の恣意的とも言える事態は理解不能である、と同時に猛烈に頭に来る。そんな憤りの中で本話を書いている。そのため、率直な感情込みとして、かなりキツイ言葉や表現を意図的に使っている。また、自分で言うのも何であるが、少なからず毒のある内容である。嫌悪感を抱いた方にあっては、その時点でお読み頂くのを止めてくださって結構である。ただ、最後までキチンと読んで頂ければ、内容的には同感なされることが多いんじゃないかと思ったりしている。

第2章:GMPの質
さて、(各国における法的位置付けや経緯は別として)本来はひとつのGMPのはずが、各社の解釈、まして現実の運用においては、えらい差が生じているように思える。敢えて言わせて貰えば、GMPの“質”に差を感じるのである。医薬品(および再生医療等製品)の品質の保証として求められるGMPが、いつの間にか、それ自体の“質”に差異が生じ、結果として筆者に疑問を投げかけてくるのである。

日本語は難しい。『質』という漢字、「しつ」と読む場合と「たち」と読む場合とがある。ネットで調べてみた。整理すると、「しつ」は品質とほぼ同義で英語の「quality」に相当するようだ。一方で、「たち」は性質に近い意味で用いられ、英語で言えば「character」に近いようだ。微妙なニュアンスの違いを“読み”の中で使い分けしている。外国人を悩ませるであろう、この細やかさ。両者いずれの場合も第三者に納得して貰えるほどに高ければ問題などないはずなんだが・・・。そうなっていない現実があるのが、残念でならない。

序章で述べた「医薬品品質の捉え方のズレ・ブレ」、本来はないはずの、またあってはならないGMPの“質”の悪さから生じているように思える。規制当局としては、「しつ」を上げてその意識と運用の向上を目指す。ところが、「たち」の悪い会社が意に反して存在する。率直に言って、この手の「たち」の悪い会社ほど、自分の「たち」の悪さなど意識したことなどなく、自分は「しつ」が良いと思い込んでるんじゃないかと想像する。結果的には、「たち」が悪けりゃ、必然的にその「しつ」は下がるけどね。

第3章:いい加減にしろ!
何事にも限度というものがある。「逸脱や回収をゼロにしろ!」なんて言うつもりはない。期待はするが、どんなリスクであってもゼロにすることの難しさは承知している。問題は、「あなたは、品質リスクをどう捉え、どう対応しようと思い、何を行っているのか?」という答えを聞きたいだけである。

「品質リスクマネジメントに関するSOPに則り、FMEAを行っています。」なんて杓子定規の答えを聞きたい訳じゃない。読者の皆さん、そもそも順番が逆なことに気づかなきゃダメですよ! もし回答するのであれば、まずは「これこれを行っています。」といった具体的行動を言え。そして、その証拠としての記録の提示しろ。次に「それは、このような理由に基づいています。」と補足しろ。そして最後に「考え方や方法は本工場のSOP内に、このように規定しております。」と続くんじゃないの?

品質リスクマネジメントだけじゃない、すべてがこの手の「GMP省令等の条項」からの引用といった進め方なのである。SOPもフル名称をわかってる? “Standard Operating Procedure”、日本語で言えば「標準作業手順書」だぞ。だったら、まずは作業に「使える」、「使っている」ことが前提だぞ。単に今やっていること、やろうとしていることを、担当者全員かつその時々で解釈がブレないように“文字起こし”したもののはず。それが、いつしか「法規制に基づいて作成することが目的」に変わってしまっているじゃないか。あまりにもバカバカしくて話にならんのですわ。

第4章:盛りすぎー!
コンプライアンスと称した、見た目重視の体制強化だとか、やってもいないどころか出来もしない立派なSOPの山だとか。インスタ映えを狙っているんか? それとも某消費者金融CMの洒落で「そこにSOPはあるんか?」のつもりか? そうじゃないでしょ。先述のように、あくまで「やってる。やれる。」ことを文書化したものがSOPのはず。法規制の改正に伴っての改訂としてレベルアップを図るとでも言うならば理解する。しかし、はなから出来そうもないし、やらないことを、でっちあげるな。それはデータ改ざん、ねつ造と同じことよ。それをわかってるんか? えっ、わかってるって? だったら、それって確信犯よ。

第5章:教育訓練と言えば聞こえは良いけど、あんた自身は大丈夫?
SOPの話と相まってよく出て来るのは、教育訓練の話。それこそ逸脱でも発生すれば、「改善対応としてSOPを改訂して教育訓練を行います。」の繰り返し。“耳たこ”状態を超えて、それって原因究明に基づくベストなCAPAなんか? 一歩間違うと、見てくれ対応のCAPAにしか思えないんですけど。

教育訓練を否定するつもりなどない。教育訓練自体は必要だし、有効な手段のひとつでもある。でも中身を考えよう。まず教育訓練の講師は大丈夫? 本当にクオリファイされてる? 教える者がいい加減であれば、時間の無駄だぞ。場合によったら、逆効果かもしれないぞ。一度、講師が適切で適任かを考えてもいいんじゃないか。社内に適任者がいないのであれば、それはそれで問題だし。少なくとも、「SOPを改訂して教育訓練を行います。」と言いたいのであれば、せめて内容ごとに複数の講師は養成しとけよ!

そもそも、社内の教育訓練担当者や責任者の役割ってなんだよ。必ずしも自らが講師を務める必要はないが、システムとしての教育訓練の責任はお前だぞ。あんた自身がクオリファイされてないんだったら、まずは自身の役割を認識し、良い講師を選定 and/or 養成しなさいよ。上司に言われたから仕方なくだとか、分担としてお鉢が回って来ただとか、そんなの理由にはならないからね。ダメなものはダメ。資格なしというなら辞退しなさいよ。あんたに教わった者こそ被害者だわ。それもリスクを高める要因だからね。

じゃー、仕方ないので外部講師を招聘する? それとも外部セミナーを受講する? でも現実のレベルや内情がそんなならば、外部講師の選定や外部セミナーの選定さえもままならないんじゃないのかなー? 

と言うことで、今回はこの辺で。外部講師や外部セミナーにありがちなことも含めた続きは次話の後編でお話しさせて頂きます。

最後に、勝手なことばかりを、しかもあくどい表現を修正することなく、そのまま掲載してくださった(株) CM Plus/GMP Platformに感謝いたします。


では、また。See you next time on the WEB.


【徒然後記】
娘への誕生日ケーキ
いつからであったか記憶が曖昧であるが、ある時から、仕事帰りに家族の誕生日にケーキを買って帰るようになった。それは末っ子にあたる二女の誕生日のことである。その日も帰宅途上の駅でケーキを買い、最寄り駅に置いてある自転車の前カゴに入れて帰宅。自宅の駐車スペースの隙間にいつものように自転車を停める。片足スタンドタイプの自転車である。右足でスタンドをかけて固定したはず。しかし中途半端だったのか、自転車は傾き、そのまま転倒。ガシャン! ケーキは前カゴから飛び出す。
夕食後にささやかな誕生日パーティー。見るも無残な姿になったケーキが・・・。娘の気持ちを哀れに思いながらケーキを口にする。すると娘が一言。
「お父さん、美味しいね!」
娘よ、ありがとう。
娘の言葉が救いに感じたものの、楽しいお誕生日祝いのはずが、何となく申し訳ないような気分になった。一瞬の気の緩みによるミスであるが、少なくとも父親としての面子は潰れたような気がしてならなかった。
あの時はゴメンね。


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*1:「薬九層倍(くすりくそうばい)」とは、薬の売値は原価よりはるかに
   高く、儲もうけが大きいこと、原価の九倍もするという意から、暴利を
   むさぼることのたとえとして用いられる陰口的な言葉である。
   本文内にも記したが、薬屋の小倅として生まれたこともあり、幼少の頃
   から“耳たこ”になるほどこの言葉を聞かされてきた。お蔭で免疫ができ
   ましたが・・・。

*2:GMPやGQPで言う、科学的根拠に基づく「根本原因(Root Cause)」
   と区別し、意図的に“根底”という言葉を使っている。

*3:『勝手にGMP論』シリーズ、第1弾から第5弾までは、以下の通りである。
   第1弾:第5話「X+Yの悲劇
   第2弾:第6話「Psの悲劇
   第3弾:第9話「Sustainable GMP
   第4弾:第10話「世界に一つだけの GMP
   カミングアウト版:第14話「Into The Unknown
   第5弾:第18話「ミッション:ポッシブル
 

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古田 ドマ

古田 ドマ

GMDPエッセイスト

2018年に薬業関係の某有名誌のオンライン版にコラムニストとして忽然と登場。製薬業界の内部事情に詳しく、特に監査業務に造詣が深いことから、医薬品の品質保証業務に従事していたものと推測されるが、その正体は不明。毒舌的な内容が多いものの、ヒューマニズムを掻き立てる心温まる物語的な内容のものもあり、歯に衣着せぬ物言いは実務担当者にとっての心の声を反映した本音トークとも言える。

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