2021.03.26.FRI

品質システム(PQS)

医薬品品質保証こぼれ話【第33回】

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執筆者:浅井 俊一

医薬品品質保証こぼれ話【第32回】

重大な品質事案発生の原因・影響・責任・対策

前回の記事原稿を事務局に送信してまもない3月3日の早朝、NHKがトップニュースとして日医工の過去10年におよぶ違法な医薬品製造の実態を詳しく報道しました。これを見て、開いた口が塞がらないというか、あっけにとられました。これまでに繰り返されてきた回収事案から推せば不思議ではないものの、それらの回収は改善に向けての対応の一環、“身辺整理”であり、もうそろそろ落ち着くであろうと好意的に見ていたところに不意を突かれた感じです。またしても北陸の地で、しかも今回は奈良と並び歴史的にも医薬品との関わりの深い富山において、国民の信頼信用を失墜する重大な事案が発生しました。

前の講においては、こういった医薬品の薬事や品質に関わる不祥事の責任の所在に言及し、製造業者の責任は当然として、現法に照らしたとき、製造販売業者(製販)の責任ももう少し明確に問われないとバランスが悪く、今後の動きを注視したいといったことを述べました。現行の医薬品製造に関する二業態制は日本固有のものであり、この体制にはメリットもある一方で、問題が生じた際、前講で触れたような理由から責任の所在が曖昧になるという側面も否めず、二業態制であるが故に、責任が両者に帰属する、或いは、事案によりいずれに帰属するかの判断を要する、といったことが根底にあります。このような状況の下で、上記のような重大な薬事品質事案を未然に回避するためには、今後、どのように対応・対策すればよいかということは、行政にとっても医薬品業界にとっても喫緊の課題です。

日医工は、政府の医療費抑制策の切り札であるジェネリック医薬品の使用推進の一翼を担う、後発医薬品大手三社の一社であり、なかでも急成長を遂げさらに事業拡大を目指す、いわば、飛ぶ鳥をも落とす勢いのある企業として医薬品業界を席捲してきました。この急成長の一方で行われていた10年にもおよぶ違法製造は、何が原因で起きたのか?また、それが、何故、今日まで見逃されてきたのか?このことを製販や行政、また、すべての医薬品製造に関わる企業の重大な問題として受け止め、これまでの対応を根本から見直すとともに、早急に実効性のある対策を講じることが求められます。GQP省令に基づく製造所の品質監査、行政査察、承認書とGMP記録類や標準作業手順書との齟齬の確認、こういった、改善のための諸々の対応・対策が奏功していない原因を明らかにするとともに、変更管理や教育訓練をはじめとする重要なGMP要件の基本の実践に関して実質的な対応ができているか、などの確認が特に大切です。こういったことを総合的にチェックし、医薬品品質保証の進め方を官民連携の下、根底から見直す時期に来ているのではないでしょうか?
 

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浅井 俊一

浅井 俊一

1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。