2021.03.12.FRI

品質システム(PQS)

医薬品品質保証こぼれ話【第32回】

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執筆者:浅井 俊一

医薬品品質保証こぼれ話【第31回】

品質・有効性・安全性への責任

かつて、医薬品の製造許可に際する業態が“医薬品製造業”のみであった時代は、品質上の問題により薬事法やGMP省令に違反した場合、当然のことながら、医薬品製造業者がしかるべき罰則を受けました。その後、2005年に薬事法の大改正が行われましたが、中でも、医薬品製造に係る業態として、新たに“医薬品製造販売業”が追加され、許可対象となる業態が「医薬品製造業」、「医薬品製造販売業」の二業態となったことは、医薬品業界に大きなインパクトを与えました。この二つ業態が薬事法の管理下に置かれ、医薬品の品目の承認権は“医薬品製造販売承認”と称して、“医薬品製造販売業者”(以下、「製販」)が保有することが規定されました。これによって、医薬品の「品質・有効性・安全性に関する最終責任」が製販に帰属することとなり、GQP省令*1に基づき、製販が品質契約の下、定期的に製造所の品質監査を行うことなどが要件化されました。

現在、薬事法から薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に名称を変えていますが、法の下で「医薬品の品質・有効性・安全性に対する最終責任」が製販に帰属することに変わりはありません。ちなみに、この改正に際し、医薬品製造販売業者が順守すべき法令として、GQP省令に加え、GVP省令*2が制定され、この両者に基づき、医薬品の品質と安全性の確保の要件が規定されました。
*1:医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令
*2:医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準

上記のように、2005年の法改正以降は、医薬品の品質等に関する最終責任を製販が負うことになったわけですが、重大な回収事例などの際の実際の運用はどのようになっているでしょう。先般の福井県で発生したクラス1回収に係る品質事案に関しては、医薬品製造業者(K製造所)に対し116日間の営業停止命令が下されましたが、この製造所に医薬品を製造委託していた製販の責任はどのように問われているのでしょうか?今のところ、報道資料から詳しいことを確認することができません。ただ、法律上、製販が品質等の最終責任を負うと規定されているとは言え、実際のところは、遠隔地にあって直接の製造に関与せず、時折、監査等を行う立場にある者(製販)が、その製品(製造物)の責任を実質的に負うことができるのかと問われると、難しい面があることは否めません。製造物に対する責任は、PL法(製造物責任法)が規定するように、本来、製造者自身でないと取ることはできないように思えます。
 

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浅井 俊一

浅井 俊一

1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。