2021.01.15.FRI

品質システム(PQS)

小林化工のクラスI自主回収について、品質保証の観点から考察【第3回】

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執筆者:脇坂 盛雄

小林化工のクラスI自主回収について、品質保証の観点から考察【第2回】

“若手が1人作業、同僚「外してた』 水虫薬の睡眠薬混入“
https://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/ASP146D8NP14PTIL00M.html 
(参照 2021-1-7)
・ペアを組んでいた同僚作業員は工場内の別の作業にも携わっており、そのために現場を離れた時間があった。
・残った若手が1人で作業していた際、誤った原料を棚から取り出して混入させたとみられる。
・同僚作業員は次の工程に移るまでに戻り、作業中に一緒にチェックはしていないが、確認済みのサインをしていた。

・SOPは2人作業になっているのに、1人で行ったことから若手の行為もSOP違反になります。SOPに関する尊重が乏しいようです。ただ、先輩からそれで良いと教えられているとSOP違反だと思わずに行っていたかもしれません。
・別の作業も気になります。このロットの製造に関する別の作業ならまだしも、他の製品の作業ならコンタミリスクが上がります。
・やはり、記録の偽造がありました。ダブルチェックの確認すべき同僚作業員は見ていないのに記録では見ていたことになっていました。これは明らかなSOP違反で、犯罪行為です。この作業も偽造しているとの意識がなかったかもしれません。代々引き継がれていたのかもしれません。
 これから考えられることは、SOP遵守の考えが乏しい品質文化のようです。2人もSOP違反していますので、きっと製造所全体でSOP違反をしていたものと思われます。また、記録の偽造があったことになりますので、他でも記録の偽造が行われている可能性があります。
 “SOP違反は犯罪行為”と今一度認識を徹底することが必要ではないでしょうか?
 これらのことをQAも見逃していたのか、対応をしていなかった可能性も高いです。SOP違反は品質文化の問題でなく、厳しい生産スケジュールや人員不足が背景にある場合も多くあります。

“水虫薬混入の睡眠剤、同じ棚で保管…小林化工「形状異なり一般的な感覚では間違えない」”
https://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20210105-567-OYT1T50146.html 
(参照 2021-1-7)
・同じ棚の上下に並べて置かれていた。
・有効成分を入れていたのは「高さ1メートル弱の大きな紙製のドラム缶」、睡眠導入剤成分は「小さく平たい缶」と大きさや形が全く異なっていた。同社は「一般的な感覚では間違えないレベル」と説明

・近くに間違ってはいけないものを置くことはミスを招きます。
 京大病院で滅菌精製水とエタノールを間違えて、17歳の患者さんを死なせた事件がありました。間違えの発端は、滅菌精製水とエタノールが隣に置いてあったからです。数人の看護師がラベルを正しく見ていませんでした。
 人は間違いを犯します。京大病院の例でもわかるように、人はラベルを正しく見ていない、あるいは見ても脳はその間違いに気がつかないのです。だから「人は間違いを犯す」との前提で保管場所に注意が必要なのです。
 かつ「習慣性医薬品」なので、施錠管理&アクセス制限をしておけば、今回の事故は起きませんでした。
「一般的な感覚では間違えないレベル」との発言があったようです。
 ミスを起こしやすい状況で作業者に「ちゃんと注意して!」と言って作業をさせていたのかもしれません。ミスを起こしにくい環境、そしてミスがあっても発見できる仕組みがGMPです。そしてその上で、教育訓練でSOP遵守、チェックの重要性などを学びます。
 GMPの基本をマネジメント層が理解されておられたのでしょうか。それと現場の実態を把握されておられたのでしょうか。工場長や部長がどれだけ現場に入っておられたでしょうか。

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脇坂 盛雄

脇坂 盛雄

1979年エーザイ株式会社入社、9年間、品質管理と21年間、品質保証を担う。
専門領域はGQP品質保証、注射剤及び固形剤の異物対応、品質リスクの発見と低減対応 ・医薬品/食品の表示校閲、製品回収リスク回避対策 ・逸脱/苦情対応、変更管理(一変/軽微変更)対応。品質保証責任者(品責)、統括部長および理事を歴任し、2013年9月末に退職。
現在は企業のコンサル・顧問を行う傍ら講演会講師、書籍執筆などを精力的に行っている。