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2020.11.20.FRI

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CSVからCSAへ データインテグリティも踏まえたFDAの新ガイダンス動向【第2回】

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執筆者:的場 文平

CSVからCSAへ データインテグリティも踏まえたFDAの新ガイダンス動向【第1回】


新ドラフトガイダンスの背景・目的
前回紹介したFDA CDRH職員Cisco Vicenty氏が民間会社のウェビナーで発表したプレゼンテーション資料「The FDA’s Case for Quality: Enabling Improvement in the Medical Device Industry」(https://www.slideshare.net/greenlightguru/fdas-case-for-quality-what-why-and-how-changing-the-regulatory-paradigm (参照2020-11-18)からダウンロード可能)をもとに、新ドラフトガイダンスの背景・目的等について、執筆者の理解したところを述べたい(ちなみにCisco Vicenty氏は米国を代表するコンピュータ会社での勤務経験を持つコンピュータ技術者である)。
当該資料中の“Streamline Non-Product Computer System Validations”(非製品コンピュータシステムのバリデーションの簡素化)と題したスライドには”、Why”(何故), “What”(何を), ”How”(どのようにして)の3項目がコンパクトにまとめられている。まずこのスライドタイトルで注目すべきは、”Non-Product Computer System”(医療機器製品そのものではないコンピュータシステム)という言葉である。
予定されるドラフトガイダンスのタイトルに含まれる”Manufacturing, Operations, and Quality System Software”(製造、作業、および品質システムソフトウェア)という言葉に対応する。これにより、同ガイダンスはCDRHから出されるものであるが、医薬品GMP分野で使用されるコンピュータシステムも適用範囲とすることが明確である。ところで”Streamline”という言葉はビジネス分野において「肥大化・長大化したものを合理的に簡素化・スリム化する」という意味合いをアピールしたい場合の決まり文句であり、このドラフトガイダンスの位置づけを良く象徴しているといえよう。

”Why”(何故)には、「不透明性、時代遅れの監査業務、および重い規制対応負荷に起因する医療機器業界における自動化システム、データ分析システム、および製造業技術の導入の遅れ。これが、学び、問題に対して対応し、製品品質を改良するための製造業者の能力を削いでいる」と書かれている。
すなわち、背景として「従来のバリデーションが重たくて業界進歩の妨げとなっているため」と言い換えることができる。
つぎに目的に関しては、“What”(何を)の項目に「非製品ソフトウェアのCSVを簡素化するための、価値観を原動力とし・患者に焦点をおいたアプローチを適用する際のパラダイムシフトを推進すること。批判的思考および、バリデーションと簡素化されたドキュメンテーションに対するリスクベースで迅速な取り組みへの集中」とあり、「従来とは考え方を転換するのだ」との決意が感じられる内容である。特に「簡素化されたドキュメンテーション」と明記されている点が注目に値する。

”How”(どのようにして)の項目には、
・簡素化されたアプローチと実践の適用
・改良されたコンピュータシステムバリデーションプロトコールの業界参加による
   実証実験 
・本カテゴリーの保証活動を軸として展開するガイダンスの開発
とあり、従来のCSVの方法の簡素化を業界とともに試行し、ガイダンスを作成することを示している。

つまり、この1枚のスライドから、執筆者が前回『従来からCSVの実務担当者が実感しているかもしれない』として挙げた「重荷だった」、「苦労した」、「1回ではうまく行かずやり直した」、「バリデーションが足を引っ張ってシステムの稼働開始時期が予定から遅れた」、「ドキュメントは完璧に仕上げたけれど、その後バグが少なからず出て対応に追われた」等の問題を、バリデーション活動とドキュメンテーションの簡素化によって解決しようとするFDAと業界の意図が十分に汲み取れると思う。

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的場 文平

的場 文平

2019年1月より小野薬品工業株式会社 CMC・生産本部 分析研究部所属。
医薬品GMP分野におけるITシステム、特にMES、LIMS、CDSの取り扱いを専門とし、最近4年間はデータインテグリティ確保に関して執筆・講演。じほう社刊佐々木次雄/編「FDAのGMP査察から学ぶ 第2版 読めばわかる査察官の視点・指摘の意図」の「第2章 医薬品に対するForm 483とWarning Letters」、「第6.10章 データ管理とデータの完全性」の執筆を分担。過去にアストラゼネカ株式会社(2006年)、富田製薬株式会社(2017年)、日本イーライリリー株式会社(2018年)に勤務。2007年1月~2017年3月の約10年間は独立行政法人医薬品医療機器総合機構 情報化統括推進室にて薬事申請承認許可業務管理システムの企画・運用・保守業務およびEMA EudraGMDPシステム端末の国内導入設置業務、ならびに医療情報活用推進室にて医療情報システム(MID-NET)のインフラ構築業務に従事。2002年~2005年には、日本アイ・ビー・エム株式会社およびIBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(当時)にて、製薬・医療機器製造企業向けのPart 11対応/ER・ES指針対応/CSVのコンサルティング業務に従事。2004年にはISPE GAMP JAPAN ForumのGAMP 4翻訳チームリーダーとしてGAMP 4日本語訳出版を推進。自称「FDA情報収集オタク」、「英文ガイダンス文書速攻翻訳家」、「替え歌作詞家」。